現役Jリーガーが2足のわらじ?“デュアルキャリア”がもたらすメリット

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現役Jリーガーが2足のわらじ?“デュアルキャリア”がもたらすメリット

プロアスリートが引退後、指導者や解説者などとしてセカンドキャリアをスタートさせられるのはごく一部。引退後の生活に不安を抱えている者は少なくない。10月24日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)では、株式会社Maenomeryの星野崇史代表取締役社長と山本弘明取締役をゲストに招き、アスリートたちの新たな活動方法“デュアルキャリア”を特集した。

この日のテーマとなったデュアルキャリアとは何なのか? 星野は「現役引退後のアスリートの可能性を広げるために、現役中からビジネスマナーやスキルを養っていくことがテーマ」と語り、プロアスリートとは別にもう1つのキャリアを同時に進めていくことを推進している。かつては現役を退くと、プロアスリートという華々しい肩書とポテンシャルを武器に、同じ競技のコーチに就任したり企業に就職したりするのが一般的だった。しかし、昨今は即戦力が求められ、ポテンシャルだけでの採用は難しくなったという。

星野は「これからは同時並行で、働くマインドやスキルを身につけていかなければならないと感じている」とデュアルキャリアの意義を説明。また、アルバイトとは違い、現役中から2つのキャリアを積んでいくことで、競技生活を終えた後も、もう一方のビジネスを継続することができるため引退後の不安が少なくなり「プロアスリートとしての寿命を延ばすことにもつなげられる」とメリットを紹介した。

そこで番組では、デュアルキャリアを実践しているY.S.C.C.横浜(J3)の池ヶ谷颯斗選手を取材。朝から3時間の練習を終えた池ヶ谷は、一旦帰宅し、着替えや昼食を済ませてもう一つの仕事に向かう。午後、待ち合わせ場所にスーツ姿で現れた池ヶ谷はMaenomeryのオフィスへ。ここで営業マンとして働いている。

Maenomeryの主な事業は、アスリートに特化した人材紹介。アスリートたちは、まずはパソコンの使い方やビジネスマナーなどの基本スキルを習得。その後、同社や提携企業で月々の賃金を得ながらビジネスマンとしてのキャリアをスタートさせる。

池ヶ谷は企業に連絡し、採用担当者に商談を取り付ける営業を担当。この日はテレアポに挑戦するのだが、ことごとく担当者不在などで門前払いされながらも電話をかけ続け、なんとか1社が話を聞いてくれることに。商談に向かったのはバリュエンスホールディングス株式会社。そして会議室に通されると「サッカーより緊張する」と言う池ヶ谷の前に現れたのはまさかの嵜本晋輔社長。

以前番組にも出演した元Jリーガーという経歴の持ち主に対して、池ヶ谷は“アスリートデュアルキャリア事業”についてプレゼンを開始。嵜本が「なぜ、今この段階から準備しないといけないと思ったのですか?」と質問すると、池ヶ谷は自らの体験を基に、サッカー選手としてクビを宣告された際、社会人としての未熟さを痛感し、引退後の危機感や準備の大切さに気付いたことを説明。そんな池ヶ谷に対して嵜本は「やらなければと思っていても“アスリート”というプライドの部分が邪魔をしている人は多い。新たなモデルケースとしてはすごく良いと思いますし、現役のアスリートに見せてあげることで救われる人が出てくると思うので、ぜひ頑張ってほしい」とエールを送った。

なんとかプレゼンを終えた池ヶ谷は、悔しさを滲ませながら「もっと社会人としてのスキルを身につけたい。ただ、本業がプロサッカー選手である以上、試合に出ていませんでは話にならない。試合でチームに貢献した上で、この仕事も両立していかなければいけない」と自身を鼓舞していた。

取材VTRを見た番組アナリストの中澤佑二は「サッカー選手はサッカーをやっていなければいけないという昔からの暗黙のルールがありますよね。実際は、賢い人は選手をやりながら少しずつ引退後のイメージをしているけれど、それでも漠然としていて、並行して真剣に取り組むのはなかなか難しい」と実情を語り、Maenomeryのような会社があることで、選手はより真剣に引退後のことを考える時間が取れるのではないかと話した。

また、星野はデュアルキャリアについて「サポーターから賛否があると思います。選手も本当はプレイで注目されたいという思いがある中で撮影に協力してくれました」と語り、番組MCの勝村政信も「欧州に比べてJリーグは給料が良いわけではないので、次のことを考えなければならない。選手はどんどん増えていくし、非常に厳しいことですよね」とコメント。

2年前に40歳でプロ生活を終えた中澤は「今はJ2、J3とチーム数が増えて、プロサッカー選手の肩書だけなら持てる状態になってきている。ですが、そこからどうやって登っていくかは非常に難しい世界になっている」とJリーガーのキャリア形成について語りつつ、「サッカー解説者はもちろん、クラブに残れる人も少ない。僕も芸能界2年目ですが、サッカーの仕事はほぼほぼ無い。若手芸人さんみたいなことばかりやっています」と、元日本代表の中心選手でさえも思い通りにはいかないと笑っていた。

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