Jリーグクラブと農業の新たな可能性!福島ユナイテッドFC農業部がスゴイ

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福島ユナイテッドFC 竹鼻快GM
福島ユナイテッドFC 竹鼻快GM

J3福島ユナイテッドFCの竹鼻快GMが、9月12日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。選手やスタッフが一丸となって農作物を育て販売している福島ユナイテッドFC農業部を例に「サッカー×農業」が持つ新たな可能性に迫った。

午前の練習を終えた福島ユナイテッドFCの選手たち。車で向かったのは自宅ではなく、会津・喜多方地方にあるアスパラガスの畑。その姿をよく見ると、着ているTシャツの胸には「福島ユナイテッドFC農業部」の文字が刻まれ、手にハサミを持ち、スパイクを長靴に履き替え、現役サッカー選手とは思えない手つきでアスパラガスを収穫していく。なんと、練習後に収穫・箱詰めを終えるまでが一日のノルマ。しかし、なぜJリーガーが畑仕事をしているのか? その仕掛け人がこの日のゲスト、竹鼻GMだ

福島県は、農業などの第1次産業が盛んな地域なのだが、2011年の東日本大震災で、地震や津波だけでなく、原発事故による農作物の風評被害にも苦しんだ。竹鼻GMは、地元クラブとして何かできることはないのかを考え、2014年に農業部を設立。選手・スタッフをあげて農作物を栽培し、収穫した農作物や地域の特産品をアウェー戦で販売している。わずか2本のリンゴの木からスタートしたこの事業、今では12本に増え、福島の特産品である桃や洋梨、ぶどう、お米やアスパラガスなどを栽培するまでになった。今年6月にはオンラインショップを開設し好評を博している。

そして、選手たちも生半可な気持ちで取り組んでいるわけではない。5年目のFWの樋口寛規に至っては自ら初代・農業部長に志願し、「やるからには広げていきたいですし、今年から農業インスタグラムも始めました。“おいしかった”というコメントを貰うと素直に嬉しい」とアピール。「シーズンが始まれば練習は午前中だけが多く、午後の空いた時間でいい意味での気分転換になるし、楽しみながら前向きにやれています」と語り、気になる試合への影響もポジティブに受け止めている様子。

そんな中、この話に「僕のライバル」と言って興味津々だったのが番組アナリストの北澤豪。実は、全国各地に畑を持つ筋金入りの園芸家で「桃とかリンゴとか、枝ものなんて作れないよ」と選手たちに羨望のまなざしを向け、「農業は本人がその気じゃなければやれない。選手たちがあれだけの農業スキルがあるということは、かなり強い意志がある」と分析した。

その言葉を裏付けるように、彼らとともに活動する農家の方も「思った以上と言っては失礼なくらい、しっかりと農業をやってくれている」と語り、昨今は野菜を産地直送で届けられるように販路を拡大してくれる業者があり非常に便利になってきたが、「選手たちが実際に農作業をしたものを販売するので、言葉の重さや臨場感が全然違う、一歩先を行く要素になると思う」と手ごたえを感じている様子。

さらに普段は赤いユニフォームの福島ユナイテッドFCが、7月と8月は桃デザインのピンクのユニフォームで公式戦を戦い、スポンサーも赤ユニとは別に募集。2年前には“桃ユニ”が海を越えてタイで試合をしたこともある。実は、原発事故の影響で、それまでタイで高級品として人気のあった福島の桃が輸出できなくなっていた。しかし一昨年、輸出再開のタイミングで、タイのチームと福島の桃をPRするための試合「Fukushima PEACH Match」を開催。実はこの企画、地域貢献だけでなく選手にも国際試合の経験の積めるまたとないチャンスとなった。さらに今年の秋は、稲穂をデザインした“米ユニ”を作成。前代未聞のPR活動を展開している。

さらに貴重な経験と言えば、日ごろの農作業も大きな役割を果たしている。竹鼻GMは「新卒の選手が多いので、地域の農家の方々とのコミュニケーションを取り、ほかの仕事がどういうものなのかを知る面でも社会人としての経験を積める。選手教育としても農業を積極的に取り入れています」と話した。

地域に貢献しながら選手の人間形成にもつながる良い事尽くしの農業事業。とはいえ、プロクラブとして経営面でプラスになることも求められるが、去年の売り上げは約700万円で、ファンクラブの売り上げを超えるまでに成長。コロナ禍の影響でチケット収入が激減し、これまでのビジネスモデルが通用しなくなる中ではあるが、竹鼻GMは「試合結果に左右されない新たな収益源ができたのは強みだと思う。Jリーグも56クラブあり、明確な特徴を持っていなければ難しいが、うちは選手も農産物も育てるクラブ」と力強く語るなど、クラブカラーの打ち出しにも繋げている。

さらに番組は経済アナリストの森永卓郎にも取材。「クラブチームが作った農産物ということ自体がブランドになる。“経営が苦しくなったから寄付してください”というよりも、“自分たちが作った農産物を買ってね”という方がサポーターも喜ぶのではないか。ブランドの付加価値があり、販路があるという意味で展開先としてはとても良い」と太鼓判を押していた。

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