大分トリニータ片野坂監督、カタノサッカーに影響を与えた「4人の監督」

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大分トリニータ片野坂監督、カタノサッカーに影響を与えた「4人の監督」

大分トリニータの片野坂知宏監督が、2月22日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。2019シーズンのJ1最優秀監督賞を受賞した名将のサッカー哲学を披露した。

2003年に大分で現役を引退し、その後はフロントスタッフに転身。2006年にS級ライセンスを取得し、4人の監督の下でコーチングスタッフとして経験を積み、2016年に大分の監督に就任した。就任当時の大分は、前年にJ3に転落し、経営破綻によってクラブの存続すら危ぶまれる最悪の状況……。しかし、現役時代に大分と契約しながらも試合に出て貢献することができなかったにも関わらず監督オファーを受けたことに感銘。「恩返しをする時」と感じ、初めて監督としてチームを率いることを決意。

就任当時は「不安で仕方なかった。初めての監督でしたしチームとしてもJ1に上がらなければならないというプレッシャーがあった」と言う片野坂だが、指揮を執りはじめると崩れかけていたチームは見事に息を吹き返し、監督1年目にしてJ3優勝。昇格したJ2ではポジション争いを激化させ、4選手が2桁得点をマークするなど、圧倒的な攻撃力を武器に2位でJ1昇格。J3からJ1へわずか3年でチームを昇格させたJリーグ史上唯一無二の監督となった。さらにJ1昇格シーズンには最高4位に上り詰めるなど旋風を巻き起こし、年間9位でフィニッシュ。その功績が認められ2019シーズンのJ1優秀監督賞を受賞している。

大分をドン底から救った片野坂だが、その裏にはコーチ時代に出会った4人の名将の存在があった。2007年からガンバ大阪でコーチとしてサポートした西野朗監督からは「チーム全体を見て、選手、スタッフをしっかりとマネージメントすること」、2010年から4年間在籍したサンフレッチェ広島ではミハイロ・ペトロヴィッチ監督から、ゴールキーパーからボールをつないで攻撃を組み立てる「サッカー戦術」、森保一監督からは「選手やスタッフとのコミュニケーション」、2014年から再び在籍したガンバ大阪の長谷川健太監督からは「勝負に徹する姿勢」をそれぞれ学んだという。一方で、名将のもとにいたからと言ってそれをモノにできるかというと簡単なことではない。片野坂は「僕一人ではなくコーチングスタッフにもどう思うか聞いて、その中で自分がベストな判断をしようと考えている」と語り、現在もその姿勢は崩していないという。

また、大分には潤沢な資金はなく、2018年度のチーム人件費はJ1上位の神戸44.8億円、鹿島31.6億円、浦和31.1億円と比較するとわずか4.8億円。およそ6~9倍もの開きがある。番組アナリストの都並敏史は「桁が違って、すごい外国人がいるわけでもないのに……」と感嘆。事実、ほぼ日本人選手だけで“カタノサッカー”と言われる戦術を駆使し旋風を巻き起こした。

このチーム編成については「予算のこともありますが、僕のチャレンジしている戦術が難しい部分もあるし、それに合う外国籍選手がいないですし、結果を出せる外国籍選手は高い。また、中途半端に入れるよりコミュニケーションを取れて戦術を理解して組織的にプレーできる選手となると日本人になる」と考えを披露。実際に藤本憲明オナイウ阿道岩田智輝といった選手たちがフィットし、チームに勢いをもたらした。

そして、J1で旋風を起こす“カタノサッカー”の代名詞ともいえる戦術が“疑似カウンター”。一般的にカウンターといえば、攻められた後の素早い攻守の切り替えによって数的有利を作り時間をかけずにシュートに持ち込む戦術。だが、擬似カウンターの場合は、自チームがボールを保持し、最終ラインまでボールを下げるなどして敵プレスを誘い込み、相手のバランスが崩れたところで一気に責め立て、あたかもカウンターのような形でシュートシーンまで持っていく戦術だ。

自陣深くでもボールを繋ぐのでリスクも高く、片野坂は「(ミスして)失点するなど痛い思いもしました」と苦笑いを浮かべ、戦術導入時にはサポーターに意図が伝わらず「どうして下げるんだ? 前に行け」と言われることもあったという。しかし、5年目を迎えた現在、「どういうサッカーをするか理解していただいて、下げるのも問題にされないですし“楽しいサッカーをしているので続けてください”という声が聞こえてくるようになった。これがトリニータのサッカーというものを作っていけて嬉しい」と笑顔を見せた。

さらに試合中にはテクニカルエリアいっぱいを走り回り、大声でピッチに声をおくる姿が印象的で、試合後のインタビューでは声がボロボロになっていることもしばしば。ある時サポーターがツイッターで「浅田飴さんが大分トリニータをスポンサードしてくれたら…」とツイート。すると浅田飴の公式アカウントが「でもお高いんでしょう…」と反応しつつ、大量の浅田飴を大分に発送。その飴を片野坂監督が試合中に舐めて、試合後のインタビューでも元気な声を披露したと思えば、翌月にはスポンサー契約にまで発展。お互い青がイメージカラーということでコラボレーション商品も開発された。

最後に片野坂は「勝ち点などの具体的な目標を立てることは大事」と語り、今年の目標は「勝ち点55、6位以内」と宣言。「これは本当に高いハードルですし、簡単なことではないのはわかっているのですが、昨年9位という成績を残せたのでそれを上回りたい」と意気込んだ。また、長谷川健太監督率いるFC東京とペトロヴィッチ監督率いる北海道コンサドーレ札幌に対しては「弟子として師匠に勝ちたい。本当にお世話になった中で頑張っていますというメッセージになると思う」と新シーズンへの思いを明かしていた。

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