4兆円→7兆円超に拡大!スポーツを取り巻くスポンサーシップの重要性

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4兆円→7兆円超に拡大!スポーツを取り巻くスポンサーシップの重要性

早稲田大学の原田宗彦教授とJリーグ名誉マネージャーの佐藤美希が、11月9日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。スポーツ界の発展に欠かせないスポンサーシップの現状と未来に迫った。

急成長する世界のスポンサーシップ市場。2007年に4.2兆円だったのが、2017年には7兆円規模に拡大し、近年はアジアのスポンサーシップ市場が急伸しており更なる成長が見込まれている。しかも、このうち7割がスポーツへのスポンサードで、原田は「スポーツは泣いたり笑ったり、感情に訴求して消費者の心の中に入っていけるすごいコンテンツ」と、スポンサーにとっての魅力を解説した。

ところで、サッカーにおけるスポンサーシップとは具体的にどのようなモノなのか。まず、基本となるのが企業名広告。ユニフォームや練習着などに企業名を入れるウェア広告。スタンドやピッチ周辺の看板、ベンチ、そしてネーミングライツなどのスタジアム広告がある。同じ種類の広告でもJ1とJ3では大きく価格が異なり、J1の中堅クラブの胸スポンサーは約3億円程度(※番組調べ)と言われている。一方で、スペインのレアル・マドリードの胸スポンサーは約90億円。「この差はスタジアムの露出ではなくて、メディアを通した露出の規模がJリーグの約30倍あると理解すると良いと思う」と話した。

では、その露出量や広告効果をどうやって調べているのか? それを算出しているのが、Jリーグをはじめ、FIFAワールドカップ、欧州5大サッカーリーグ、北米4大プロスポーツリーグと提携する世界大手のマーケティング会社ニールセンスポーツ。同社では、試合映像をAIで解析し、企業ロゴが画面に露出した位置や秒数、回数、サイズなどを瞬時に計測。そのデータを元に独自の公式に当てはめ、広告としての価値を算出している。これらの数字は、スポンサー企業が見ることもあれば、スポンサーを探す側が、企業に対してアピールするための一つの材料として活用することもある。また、ドイツブンデスリーガでは、AR(拡張現実)を使ってスタジアム看板を放送される国ごとに出し分ける技術を実験。これによってグローバル企業だけではなく、放送される国の企業にも広告価値を提供できるようになると目論んでいる。

そして原田は、従来の企業名の露出だけでなくスポーツクラブが各企業のニーズを理解して、それに応じた提案をしていくことが重要と語り、「企業のアクティベーション」をキーワードにあげた。近年、欧米ではスポンサーシップとしてお金を払うだけでなく、その1.5倍ほどのお金をかけてプラスアルファの活動を行っているという。例えば、企業が新製品を発売したら、それを競技場の中で配り、アンケートを取って商品開発のヒントを得ることができる。クラブと企業だけではなく、訪れたサポーターも喜ぶトライアングルの関係が成り立つ。さらに進んだ取り組みをしているのがバイエルンミュンヘン。Apple Musicと提携し、登録すれば選手のお気に入りの音楽、ロッカールームやトレーニングで流れる曲などを聴くことができる。このようなファンが喜ぶ取り組みをすることで企業のイメージアップだけでなく、直接的な顧客の獲得にも繋げている。原田は「これらの仕組みを作ってあげるのがクラブ側の仕事になっていく」と話した。

では、日本ではどのようなアクティベーションが行われているのか。Jリーグとタイトルパートナーの明治安田生命との関係が良い例で、日本人の健康に着目して「みんなの健活プロジェクト」と銘打たれたイベント「Jリーグウォーキング」は、今年だけでも40回以上開催。ただ歩くだけでなく、体力測定やJリーグクラブが協力するチアダンス体験など、体を動かす様々なブースが用意されている。イベントに参加した人々からは「普段運動することはないので良い機会になった」「自分の好きなクラブが健康のことを考えてくれていると思うと嬉しい」といった声が聞かれるなど評判は上々の様子。

明治安田生命の大西忠専務執行役は「5年前にJリーグと取り組みを始めましたが、パートナーを続けるにはWin-Winの関係が必要。サッカーファンも私たちのファンも増えるような関係を作り上げていくことが成功の秘訣」と語り、Jリーグの村井満チェアマンも「明治安田生命さんは、このイベントに自治体関係者や職員など、“人の縁”を持ち寄ってくれています。そこに僕らはストレッチや運動などのノウハウを提供できる。お互いの持っているものを出し合っていく関係が良いですよね」と話した。まさにパートナーとしてのあるべき姿の一つと言えるだろう。

原田は「社会貢献という面でもいいし、Jリーグはサッカーの試合を通じて世の中を幸せにする百年構想がベースなので、大きな目標に向かって整合性がある」とこの取り組みを評価。そして、これからの企業とスポーツの関係は、より繋がりを強めていくことが重要で、「Jリーグクラブは企業の人を呼んで接待できるようなホスピタリティラウンジをスタジアムの中に作るべき」と提案。クラブを通して企業同士が繋がれる環境を作り出すことができれば更なる付加価値を作ることができ、それによって新たなサービスや仕事が生まれ、これまでとはまた違った形で還元することができると話していた。

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