VR野球でスウィングを解析!最先端技術で“神技”を会得できるのか?

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VR野球でスウィングを解析!最先端技術で“神技”を会得できるのか?

NTTコミュニケーション科学基礎研究所の柏野牧夫が、テレビ東京系で4月6日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)にゲスト出演。トップアスリートたちが繰り出す“スーパープレー=神技”を“脳の動き”から分析した。

野球でバッターが「フォークボールが消えた」と表現をすることがある。物理的にはありえないことだが、バッターの体感としては文字通り「消えた」と感じている。逆に、それに惑わされないテクニックを持っていれば、高い確率で打つことができる。サッカーで言えば、緩急のあるドリブルなどがそれにあたり、実際のスピードが際立っているわけではなくてもディフェンダーはついていけない。これらは“脳の錯覚”が引き起こしている事象の一つなのだとか。

さらに柏野は「潜在脳機能」というキーワードを使って人々の動きを解説。鉄棒で逆上がりの練習をしてできるようになっても、なぜ、できるようになったか本人が詳細に説明することは難しい。これらは練習の中で脳が何かを会得した結果によるもので、そういった“無意識の領域”、自覚はなくても脳が体を動かせる部分こそが“神技の真髄”ではないかと考えているという。

この話を聞いた番組MCの勝村政信は、かつてブラジル取材中に現地のコーチに言われた言葉を紹介。「日本人の子供たちの技術はかなり上がっていて、もしかしたらブラジル人以上かもしれない。しかし、試合になったら絶対に日本人には負けない。なぜかと言うと、試合中に自分が何をするかはわからないが、日本人のやることはわかるから」と言われたと明かし、番組アナリストの福田正博も「サッカーの練習では、最初は考えてやる。次第に考えなくてもできるようになるのが大切」とコメント。柏野は「意識的に動いている部分と、状況に応じて勝手に動けることの違いかもしれない。そういう部分こそが我々のテリトリー」と話した。

そんな柏野の研究施設をブレインスカウター・サトミキこと佐藤美希が取材。研究所には野球のブルペンがあり、ここでは「バッターの脳がどう働いているか」を様々なセンサーを使って測定。バッティングはピッチャーがボールを投げてから0.4秒で情報を収集・処理してバットを振る。この一瞬に選手のレベルを決める非常に重要な資質があり、一流選手たちがこの瞬間に脳をどのように使っているか解明を進めている。

この日の実験には、ヤクルトスワローズやDeNAベイスターズで活躍した元プロ野球選手の田中浩康が参加。バッターボックスに立った田中は、告知アリのストレートとナシのストレート、告知ナシのカーブの3球種30球で、体の動きと目線の動きを解析。田中はバッティングの際、「真ん中くらいで(目でボールを)捉える瞬間があるので、どちらかというと真ん中くらいをよく見ている」と語ったが、目線を解析すると、実際には途中までは言葉通りボールを目線で追っているが、途中でボールから目線を離し先回りしていることが判明。自意識とは違う動き、つまり「潜在脳機能」によって、ボールの軌道を待ち受けて打っているという。「先回りする能力なんて初めて聞きました」と驚く田中に対して、柏野は「少年野球で教えるように、プロがボールをずっと追いかけているかというと、そうではないということ」と分析した。

さらに柏野は、選手ごとに細かく解析していくと、自分にどのようなプレースタイルが合っているかわかり、それに応じたトレーニングを設計することで、才能を伸ばすことができると説明。適正を早い段階で知ることで適切な目標を設定でき、場合によっては違う道を選ぶきっかけになることもあるという。福田は「今は、やっていた種目が偶然自分に向いていたというのが殆ど。成功する確率を高めることになる」と納得の表情を浮かべた。柏野は「(早々に見切りをつけることになりかねないので)冷たいと言われることもあるが、能力を持っていても大体は発揮できないで終わる。だったら、確率の高い方に懸けてみましょうということ」と自身の考えを伝えた。

スーパープレーを繰り出す一流選手たちが、どのように脳を使っているかを解明し、多くの選手が一流選手と同等のプレーをできるように育てるべく研究を進める柏野。現在はメンタルの科学的解明に力を入れており、「テクノロジーが進み、データが溜まってくると客観的に捉えられるようになり、調子の善し悪しや、調子が悪くなる前兆などの解析が進み、具体的な策が見えて来る」と、飽くなき探究心を見せていた。

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