和田正人、相棒・松尾諭は素晴らしい女房役!『やじ×きた』シリーズ化にも意欲

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主人公・喜多八役を演じる和田正人さん
主人公・喜多八役を演じる和田正人さん

“弥次さん喜多さん”で知られる、江戸時代最大のベストセラー小説「東海道中膝栗毛」(作:十返舎一九)を原案とした土曜ドラマ9『やじ×きた 元祖・東海道中膝栗毛』(BSテレ東、4月6日より毎週土曜21:00~)で主人公・喜多八役を演じる和田正人さんにインタビュー。

本作で主演を務める和田さんは、若き名バイプレイヤーとしてドラマBiz『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京系)、『浮世の画家』(NHK8Kドラマ)、月9『トレース』(フジテレビ系)、『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(NTV系)、日曜劇場『陸王』(TBS系)など、多数の作品に出演、5月24日には映画『空母いぶき』の全国公開を控えている実力派俳優です。


ひょんなことから女房と彼女に捨てられ、東海道を西へ「お伊勢参り」にかこつけた“自分探し”の旅に出発する“弥次さん喜多さん”の道中を、弥次郎兵衛役の松尾諭さん、十返舎一九役の竹中直人さんと共にコミカルな演技で盛り上げます。京都の映画村での撮影や、バディを組む松尾さんとの撮影秘話や、本作にかけた思いなどについてたっぷり語っていただきました。

——名作時代劇の主演に抜擢。オファーをもらった時はどんな心境でしたか?

プレッシャーですよ。こんな大役を僕にやらせてもらって大丈夫なのかって。相方の松尾さんもきっとそんな心境だったと思います。でも時代劇の看板を背負って演技をすることに対していえば、撮影中は役に没頭する時間の方が長かったので、試写や記者会見を行うまでは実感があまりなかったんです。気付けば、大きな作品で大きな立ち位置でやらせてもらっていたんだなっていう感想です。

——喜多さんは、元役者のお調子者。女好きで、儲け話に弱く、その上おっちょこちょい。役を作っていく上で工夫をしたことなどはありますか?

アプローチとしては“自分を開放していく”という作業でした。喜多さんの持つ欲求というのは実は誰しもにあるものだと思うんです。自分の中にもあって、普段は自制しているものを開放して演じればいいんだって。目の前のエサに素直に飛びついていくような感じです。いけるところまでやろうって(笑)。自分を開放すると、羞恥心もなくなってきて、どんな場面でも、まったく恥じらいなくやることができました。

——弥次さんを演じている松尾さんとのコンビはいかがですか?

松尾さんは若い頃、結構苦労していたり、人生の経験値がとても豊富な方なんです。そういう方は、現場にいてもどこか心にゆとりを持っていて、懐も広く、人に対して大きな受け皿を持っている。今回、松尾さんと竹中さんの中では僕が一番年下だったんですが、二人に遠慮していたら絶対にだめだと思い、自分の感情を素直にぶつけて演技をしたんです。それを大きな心で受け止めてくれたのが松尾さんでした。そういう意味ではとても素晴らしい女房役だったと思います。撮影中も、役について話し合ったりもせず、空気感だけでやれるような、謎のシンクロ感も感じました(笑)

——京都の映画村では松尾さんと撮影中だけでなく、毎日のように食事も一緒にしていたということですが、そこではどんな話をしていたんですか。

松尾さんが基本、僕のストレスのはけ口になってくれたという感じでした(笑)。酒を飲んで、松尾さんに「聞いてくださいよ〜」って愚痴を言ったりするんですけど、それを「和田君、言いたいことわかるよ」って受け止めてくれて。別に嫌なことがあったというわけではないんですよ。でも撮影をして、帰って、台本覚えてってことを繰り返しているとやっぱり疲れが出て来るんです。それを松尾さんが発散させてくれました。

——竹中直人さんとの共演はいかがでしたか?

1話で結構絡みがあったんですけど、竹中さんとは初共演なんです。やっぱり大御所の喜劇俳優ということで、その人の前で演技をする緊張感というのはありましたね。1話以後は僕たちの珍道中を陰から追っかけてくるという役どころで、基本的には絡みがほとんどなかったんですけど、もっと絡みたかったなぁ、という思いはあります。

——竹中さんの演技から刺激を受ける部分もたくさんあったのでは。

とにかくお芝居に自由を感じました。縛られていない感じです。竹中さんは、役作りに関して、自分のキャリアの35年間の中でほとんどやったことがないと仰っていました。役を作るということは自分じゃないものを演じるということなんですけど、その概念がないということなんだと思います。縛りのなさ、自由さがとにかく魅力的だなって思いました。

——このドラマの主題歌はドレスコーズの「Bon Voyage」です。メンバーの志磨遼平さんは曲を書き下ろすにあたって、ドラマの雰囲気を知ろうと、実際に撮影現場を見にいらっしゃったそうですね。

志磨さんはカメオ出演もするんです。役者として登場するシーンが少しだけあるのですが、しっかり役作りをしてきて、セリフをちょっと訛らせたりしていて、お芝居の経験はあまりないはずなのにすごいなって思いました。アーティストの方が演技をする時というのは、僕ら役者同士にあるような、予定調和のようなものがいい意味でないので、刺激になりました。

——主題歌についてはどんな感想を持ちましたか。

ロック調の音を使うって最初に(スタッフから)お聞きしていたんです。全く想像がつかなかったんですけど、出来上がったものを見た時に、毎回しょんぼりして終わる僕たちの珍道中を綺麗に包み込んでくれる曲だなって思いました。しかも次にまた楽しい旅が始まるんだ、ってワクワクさせてくれるような魅力も持っている。志磨さん自身が出演し、作品に色づけをしてくれて、かつ役作りまでして貢献してくれて……。そんな志磨さんの姿勢を見て、音楽も絶対いいものができるだろうなって思っていました。

——ロックな音楽を採用した背景には、若者向けの時代劇を作りたいという狙いを感じます。

そうかもしれないです。でも、僕自身は若い人だけでなく、老若男女に受ける時代劇になって欲しいんです。これは絶対子供にもウケる時代劇だと思っているんです。自分が小さい頃におじいちゃんと見ていた『水戸黄門』のように、子供も楽しめる。そして時代劇を見てきた年配の人が新しい時代劇だねって思いながらも、どこか懐かしいものを感じてもらえるような、そういう作品にしたいって。それを使命だと感じて撮影してきたんです。『水戸黄門』のような国民に愛される時代劇に育っていってくれたらいいですね。

——そういえば和田さんはこのドラマをやるにあたって、名作時代劇の『水戸黄門』が頭に浮かんだと制作会見でも仰っていました。今後、『水戸黄門』のようにシリーズ化して、長くやってみたいという思いはあるのでしょうか。

僕たち役者はお仕事を頂いてなんぼのもの。そういう場を与えてもらえることは大きな喜びだと思うんです。これが続いて行くことができるなら、続いて行って欲しいという願いは当然あります。それ以上にこの作品を見てくださった方にたくさん愛してもらいたいという気持ちもあります。

——「平成」最後の、そしてその後訪れる新しい時代の人気シリーズになれば良いですね。

せっかくBSテレ東さんがこんな素晴らしい作品を作ってくれて、素晴らしい役者さんたちがたくさん出演してくださっているんです。この作品をより多くの人に見てもらいたいです。新しい元号が始まって、新しい時代の時代劇の連ドラと言えばこれっていうようなドラマになり得ると僕自身もどこかで思っているんです。本当に楽しい座組だったし、また、みんなと再会したいという気持ちもあります。視聴者の方に育てて行ってもらえるようなドラマになれば本当に嬉しいです。

(インタビュー・文:名鹿祥史)

<あらすじ>
喜多さんと弥次さんは、相棒でありながらライバルで、女がらみの争いは日常茶飯事。今日も喜多は弥次の呑み仲間・芋七(金山一彦)の女、おたこ(八幡みゆき)を口説いて芋七に追いかけられ、弥次は間違えて関係を迫った産婆のおよね(小柳友貴美)から逃げ回っていた。

そんな騒動を起こしつつも、喜多は手代を務める両替商・大黒屋の女将・お雪(たかはしあいこ)と恋仲となっていた。大黒屋の主は病で臥せっていて、喜多は主亡き後、主となることを企んでいた。その前に、喜多は別の女と手を切るために、弥次に十五両の金を工面するように頼む。

喜多の頼みを引き受けた弥次は、金策に困っていた所、大家から妊娠したおつぼ(矢野優花)を紹介される。そして、売れっ子戯作者・十返舎一九(竹中直人)に筋書きを頼んで一芝居打ち、喧嘩の絶えない女房のおふつ(安藤玉恵)を追い出して、金を入手しようとする。しかし、その筋書きには仕掛けがあり、喜多と弥次は江戸を去ることに……。江戸を飛び出し、伊勢へと向かう2人の珍道中が今、幕を開ける!

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