Jユースの超詳細な描写で話題!サッカーマンガ「アオアシ」はこうして描かれる

公開:
Jユースの超詳細な描写で話題!サッカーマンガ「アオアシ」はこうして描かれる

Jリーグのユースチームを舞台に描いた大人気サッカーマンガ「アオアシ」の取材・原案協力をしているスポーツライターの上野直彦が、テレビ東京系で2月2日に放送されるサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)にゲスト出演。マンガの大ファンだというムーディ勝山と共に、作品の魅力やJユースのリアルな姿に迫っていく。

「キャプテン翼」をはじめ、数多くのサッカーマンガがあるが、その殆どは高校サッカーがテーマとして描かれ、Jユースはワンエピソードとして扱われたり、敵役として登場したりする程度。しかし、「アオアシ」では、これまであまり注目されてこなかったJリーグの下部組織にフォーカス。主人公・青井葦人を中心に、仲間でありながらプロを目指す上でライバルとなるチームメイトとのシビアな関係など、そのリアルな描写が話題となり、既刊15巻で累計230万部を突破している。

Jリーグの村井満チェアマンも大ファンで、コミックの気になるシーンに付箋を貼り「世界の育成世代の指導技法がいっぱい出てくる。私にとってのバイブルみたいなもの」と大絶賛。芸能界きってのマンガ通として知られるムーディ勝山は「サッカーを全然知らなかったのですが、知らなくても面白い」と語り、それを聞いたMCの勝村政信も「サッカーを知らない人がユースに興味を持つなんてことはまずないですよね」と興味を示す。

そんな作品における上野の役割は、作者である小林有吾先生のアイデアを際立たせるための情報の提供。ユースの練習があることが多い月~金曜は必ずどこかのクラブを取材し、その生活を4年半にわたり続けているという。しかし上野自身も、当初はJユースを主題にした作品がここまで人気になるとは思っていなかったという。

では、一体何が人々を惹きつけるのか? ムーディ勝山は「サッカー漫画は主人公がフォワードとかで活躍するイメージがあるが、『アオアシ』では主人公がサイドバックなんです」と特徴を説明。最初はフォワードだった葦人が、ある日監督から「ディフェンスへ転向しろ」と告げられ、物語が盛り上がってきたところで登場したこのシーンはファンの間で物議を醸し、作者の小林がネットで叩かれる事態に発展したほど。しかし、サイドバックが主人公になったことには理由があり、上野と小林が同じ愛媛出身で、同郷の長友佑都選手が好きだったということもあるが、現代サッカーの中でサイドバックの重要度が増しており、世界のサッカーのトレンドを掴んだ上で判断。計算されたストーリーとリアルなサッカー観が融合し作品は支持を集めている。

これを聞いたアナリストの福田正博は、「現代サッカーはすごくスピーディでコンパクトになり、スペースと時間がサイドにしかない。だから、サイドにゲームメイクできるような能力の高い選手を置くのは世界の流れ。そこに目をつけたのは素晴らしい」と頷いた。

また、村井チェアマンは、10年間活躍する選手は共通して「傾聴力」を持っていると分析し、心が折れるたびに傾聴と主張を繰り返し伸びていくという仮説を紹介。主人公・葦人が暴走族あがりのチームメイト冨樫慶司からトラップの仕方を学ぶシーンを例に、「葦人はボールをピタッと止めるのがトラップだと思っていたけれど、冨樫は次のプレーを意識してどう止めるかを考えている。それを教えるのに言葉では伝えずに自分で考えさせる。これは“ガイディッドディスカバリー”と言われる指導技法で、これを元暴走族の冨樫がやるという流れは泣きそうになった」と熱く解説。「現実のユースでも、技術を教えるだけではなくて、人間力をどう根付かせていくかがテーマとなっている。そういう意味でもバイブル」と作品について熱く語った。

また、知られざるJユースに子どもを通わせる費用も実際のJ1クラブのユースで実際にかかっている金額で描写。クラブによって違いはあるが月謝6000円、寮費5000円のほか、遠征費などを合わせて年間約30万円になるのだとか。また、練習後の食事の内容やユニフォームのクリーニングについてなども事細かに描かれている。そのほかにも、作者の小林がもともとグルメマンガを描いていたということもあり、食事シーンが非常に高いクオリティで、それらを食リポする登場人物たちの姿も人気となっている。

更に番組では、上野の現場取材に密着。この日は、上野が今一番気になる指導者だという新進気鋭の指揮官・浜嶋淳郎監督を取材するためにJ2の栃木SCユースチームが練習する宇都宮へ。練習の様子をつぶさに観察し、マンツーマンで監督に練習内容や戦術を聞くことも。その内容をスマホアプリ「コーチボード」などを使いメモし、詳細なディテールと共に小林に送るのだという。また上野は、栃木SCは学校の終わる5時半から野球場を借りて練習を行っていることなど例に、「Jユースは監督自身が1時間半前から白線を引くなどして練習の準備をしている。こういった現状を知ってほしい」と訴えた。

また、クラブユースと高校サッカーの関係にも言及。「この2つは水と油と言われるが、栃木SCのようにグラウンドを持っていないチームに高校や中学校がグラウンドを貸し、代わりにクラブが指導者を送るなど、もう少し歩み寄っても良いと思う」とコメント。一方で福田は「水と油でも良いと思う」と語り、「Jユースは術力の高い選手が多くて中盤の選手が育ちやすい。だけど、高校サッカーは長いボールを蹴って戦うことが多いから、センターバックやセンターフォワードが育ちやすい。お互いライバル心を持ってやれば良い」とそれぞれが持論を展開していた。

画像ギャラリー

PICK UP