登山家・野口健が「ボロクソ言われ日記」を書く“表の理由”と“裏の理由”

公開:
登山家・野口健が「ボロクソ言われ日記」を書く“表の理由”と“裏の理由”

アルピニストの野口健が、12月8日にテレビ東京系で放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)にゲスト出演。一つのミスで死に繋がる過酷な環境と向き合う登山家の“メンタル”について語る。

野口は、16歳で登山を初めると、各大陸の最高峰を次々に制覇。1995年、25歳で当時の7大陸最高峰登頂の世界最年少記録を樹立。2007年には東京ヴェルディ1969の環境アドバイザーに就任し、背番号530(ゴミゼロ)のユニフォームを着てスタジアム周辺のゴミ拾いを実施するなど、様々な活動を行っている。

まず野口は、エベレストなどの最高峰登頂の過酷さを説明。酸素量が地上の3分の1になるエベレストでは高所順応が必要で、登頂には2か月もの滞在期間を要する。さらに極寒の山頂付近になると1時間でわずか100mしか進めないことも珍しくなく、体力はもちろん、強靭なメンタルが不可欠であると強調した。

そんな極限状態に打ち克つためのメンタルコントロール法とは? まず野口があげたのが「妄想」。登頂して日本に帰った時の自分へのご褒美などを思い浮かべるそうで、「良いイメージがあると頑張れるし、なんでもありで楽しい」と笑った。そして、次にあげたのが「音楽」。あまりの寒さにテントから外に出るだけでもかなりの覚悟が必要で、NHK大河ドラマで戦いに向かうシーンで使われる楽曲をテントの中で聴き、夜明けになると「突撃じゃぁぁぁl」と自らの気持ちを昂ぶらせてテントのファスナーを開くのだとか。これらはアスリートたちが試合前にイヤフォンを耳にし、勝利をイメージするのと共通している。

続いて野口は「最終的な判断の難しさ」について言及。「これ以上進めば100%死ぬ」というような吹雪であれば間違いなく撤退だが、得てしてわずかな降雪など微妙な判断を迫られることが多い。しかし、標高8000mの最終キャンプから行う登頂へのアタックは、体のことを考えると通常1回が限界で、失敗なら下山を余儀なくされる。しかし、判断に迷っていると「一か八かやってみよう!」と声を上げる者も出てくる。そういった場合、一種の興奮状態に陥っていることが多く、迂闊に行ってしまうと大量遭難に繋がることがあるという。高所の生活では想像以上に精神が追い詰められており、「下山中にザイルを解いて自らジャンプして落ちて行く人や、裸になって発狂する人もいる」と壮絶なエピソードを紹介。「人間はそんなに強くはない。どこかで近づいてくる死のエネルギーと面と向かってはいけない。軸をずらして逃がす。生きてさえいればなんとかなるから」と話し、最後まで冷静であることと、時には“逃げる勇気”も必要だと説いた。

これに対して番組アナリストの都並敏史は、「海外の環境が合わなくて上手くいかない選手がいる。日本に戻ればまたチャンスを掴める可能性があるのに、戻ると格好悪いからと現地に留まりドツボにはまってしまうケースもあるから参考になる」と語り、番組MCの勝村政信も「ロシアワールドカップのポーランド戦の戦い方は批判されたが、今思えばあの選択は正解だった」と振り返った。野口も「いろんな事が起こる。完璧主義ではなくて、自分の心をいかに自由にしておくか。どこかで歯車がずれていった時に割り切って、どう流れを変えていけるかが大切」と話した。

さらに野口が話したのは「人からの評価」。例えば清掃キャンペーンでも様々な反応があり、ゴミが少なければ「ゴミがないじゃないか!」と難癖を付けられ、「ゴミが多いことが公になってしまう」と地元から批判されてしまうこともあるのだとか。もちろん褒めてくれる人もいるが、批判する人の声が大きすぎて、本人には批判しか届いてこないのだとか。

そんな中、野口は“ボロクソ言われたことだけを綴った日記”を書いていると告白。「あの野郎、絶対に忘れないぞ!」と書いたノートを投げつけたり踏みつけたりすることでその時はストレスを発散。その後、落ち着いたところで見直すと、「自分の理想などがあって認められなかったことも、冷静になってみると批判の7割が合っている」と言い、反省すべき意見には赤鉛筆で丸をつけ、ただ批判したいだけの意見はバツをつけるなどして、自分の中で整理、消化していくことで、自身の殻を破ってきたと明かしていた。

画像ギャラリー

PICK UP