男子柔道、躍進の秘訣は“虎化” フィジカルトレーナーが明かすメンタルの影響

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男子柔道、躍進の秘訣は“虎化” フィジカルトレーナーが明かすメンタルの影響

柔道全日本男子のフィジカルトレーナー・岡田隆が、11月17日にテレビ東京系で放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)にゲスト出演。選手の潜在能力を極限まで引き出す“虎化理論”を披露した。

金メダルゼロに終わったロンドン五輪の柔道全日本男子。大会後、井上康生体制へと刷新され、新たな取り組みを始めると、リオ五輪では金メダル2個を含む全階級メダル獲得という全日本男子史上初の快挙を成し遂げた。この中で岡田は、選手たちを鍛え上げ、屈強な外国人選手にも負けない肉体へと変化させるなど、大躍進を影から支えた。

まず番組では、ブレインスカウター・佐藤美希の取材の様子を紹介。岡田が准教授を務める日本体育大学のジムを訪れ、岡田の教えのもと正しい筋トレに挑戦した。岡田は、腕立て伏せ一つをとっても「腕の開き」「角度」によって「胸」や「腕」など、鍛えられる筋肉は変わってくると言い、さらに「筋肉と対話」することで、今どこで効果を得ているかを認識でき、効率的なトレーニングが出来ると説明。逆に、無意識に行うと自分の得意な筋肉ばかりを使ってしまうため、本来求めている部位への効果が薄くなってしまうと伝え、佐藤を納得させていた。

そして岡田はスタジオで、クリスチアーノ・ロナウドの仁王立ちポーズの写真を見て筋肉の付き方を分析。「手の当たっているところの上、外腹斜筋。本来はこんなに膨れていなくて、逆三角形になっていくところ。でも競技的には、筋肉をつけて体幹を強くして、骨盤を回転させて足を振っているのがよくわかる」と、凄まじいシュートを放つ秘訣を解き明かした。

正しい筋力の付け方が話題になると、スポーツ選手は競技に必要な全身の筋肉を満遍なく鍛えて、その上で選手毎に特化した筋力を鍛えていくのが望ましいと解説。しかし、柔道界では日本ならではの技術や“柔よく剛を制す”という考えが根強く、筋力トレーニングや肉体改造には十分に時間が割かれてこなかった。各国が技術を磨いていく中、同等の技術力があった場合には、パワーがあった方が良いのは間違いない。「世界のトップに立つためには、すべての要素を完璧にしないといけない。筋肉も極限まで強くしなければ勝てない」と考えたという。

そこで、岡田が最初に取り組んだのは筋力トレーニングではなく座学。「なぜ筋力トレーニングをやるのか? どういう意味があるのか?」を伝え、深く理解して自分から追い込める人にならないと潜在能力は引き出せない。これは前述の「筋肉との対話」にも関わるもので、理解を深めることなく効果的なトレーニングをすることは難しいという。

そうやって肉体改造を進めるうちに、リオ五輪である程度の成果を得たと感じた全日本男子は、そこから更に踏み込んだ強化を実施。「精神を集中し、ここぞというところで最大の力を発揮する、一種の静寂に包まれたような感覚も大事」と考え、それらの心境を再現するために座禅や茶道を取り入れた。さらに、「銅メダルと金メダルで何が違うのか? これは力や上手さの差ではない。その舞台で“勝てる人間”である必要がある」と分析し、その極限の状態を再現する方法を模索。その一つとしてバンジージャンプのようなトレーニングを取り入れたという。

さらに、「虎は生まれながらにして強い。柔道の歴代レジェンドを見ても、本当に強い人たちは筋トレなどしなくてもチャンピオンになっていく。しかし、そういう人を追いかけても、猫に生まれた人では勝てない」とある意味で元も子もない発言をする岡田。しかし、「猫を虎にする」という大胆な発想をもとに、海外への単身武者修行を実施。海外ですべてを一人でやらなければならない環境に追い込むことでハングリー精神を養い、メンタル面を“虎”へと強制的に変化させた。この取り組みから帰ってくると「選手の顔つきは変わった」と明かし、「ハングリー精神は大事。最後の一絞り、どんな競技でも心の力は必要になってくる」と。肉体と同様にメンタルも鍛えることが、世界のトップと闘う上で不可欠だと提言した。

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