脳医学が教える「究極のアスリートの育て方」

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脳医学が教える「究極のアスリートの育て方」

東北大学の瀧靖之教授が、テレビ東京で8月25日に放送されるサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)にゲスト出演。“究極のアスリートの育て方”について脳医学からアプローチした。

これまでに東北大学で16万人もの脳画像を解析してきた瀧教授。近年の研究で、脳の領域がそれぞれどんなタイミングで発達するかがわかってきた。例えば、「視覚」や「聴覚」の領域は0歳〜、スポーツを始めるのに最適な「運動野」は3~5歳、そして、外国語の勉強に適した「言語野」は8~10歳、というような具合だ。脳の発達タイミングに合わせて物事に取り組むと、上達スピードが格段にはやくなる。つまり、一流のアスリートを目指す場合、「運動野」が発達する3~5歳をどう過ごすかが鍵になる。

とは言っても、3~5歳で本格的に競技に取り組まなければならないわけではない。缶蹴りやかけっこなど、様々な経験をすることが重要で、この時期に、「転んで手をつく」などの反射神経も養われるのだとか。

それぞれの能力を伸ばす鍵となる“好奇心”。瀧教授は、それを育むための図鑑の使い方を紹介した。例えば、水族館に行った際に、魚について図鑑で事前に知っているのと、知らないのとでは、子どもたちの興味の示し方がまるで違うという。図鑑で知った上で本物を見ることで、仮想と現実がつながり、世の中の広さ、奥深さに興味を持つようになる。また、「子どもと一緒に親が楽しむ姿を見せることで、子どもたちの興味や好奇心が育まれる」と言い、これを「オヤチカラ(親力)」と呼んだ。

そして、「一流アスリートの育成」が話題になると、トップアスリートの共通点について言及。メジャーリーガーの大谷翔平選手は、少年時代にバドミントンと水泳を始め、動体視力と体のしなやかさを身につけた。プロテニスプレーヤーの錦織圭選手は、生後一年でスイミングを始め、ピアノ、サッカーを経て12歳でテニスの道に。さらに、アクロバティックなゴールで世界を魅了するフットボーラーのイブラヒモビッチも、テコンドーの有段者だ。それぞれが様々なスポーツを経験し、その後のプレーに活かしている。

番組アナリストの福田正博も、「サッカー界でも小さい時に色々なスポーツを経験することが重要」と考えており、「いろんな状況の中で自分たちがルールを決めて行うストリートサッカーは、育成に良いと言われている」と話した。

しかし、どうして色々な競技を経験した方が良いのか? 瀧教授は「一つのことをやるよりも、色々なことを経験する方が、脳のその後の適応性が上がると語る。勉強も趣味も運動も、広く浅くでも良いから色々なことをかじって、それから得意なことに絞っていくのが理想」と述べ、仮に嫌々やらされている場合でも、「あるところを乗り切ると一段上のステップにいける。それで嫌だからと言って辞めても、やったという経験が大事。何もやらないのが良くない」と提言した。

また、大人になっても脳の成長の可能性はあると明かし、「脳は可塑性(かそせい)といって、変わることができる力が何歳になってもあり、50歳から始めても必ずあるレベルに達することができる」と話し、「大人になっても重要なことは、いかに好奇心、趣味、ワクワク感を持てるか。何かを突き詰めよう、何かを楽しもうというのは加齢、認知症のリスクを減らせると最近わかってきた。大人が楽しいと思ってやっていることを子どもたちが見ると、子どもたちもやり始めるので一石二鳥。自分自身の脳の健康を保ち、子どもたちの好奇心も伸ばす。それが子どもたちの夢の自己実現につながる」と話した。

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