澤穂希の名言「私の背中を見て」究極の場面で伝えた理由

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澤穂希の名言「私の背中を見て」究極の場面で伝えた理由

元女子サッカー日本代表の澤穂希が、テレビ東京系で6月9日放送にされたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24:20~)にゲスト出演。大勝負を乗り切るための「哲学」を語った。

澤は、FIFA ワールドカップに6度出場し、オリンピックにも4度出場。2011年のドイツワールドカップでは得点王とMVPに輝く活躍でチームを優勝に導き、さらに同年のFIFA最優秀選手賞“バロンドール”を受賞するなど、日本サッカー界を長らく牽引してきた。そんな彼女も現在は母親になるなど新たな人生を歩んでおり、「ガラッと変わりましたが、娘の成長を間近で見られて、すごく日々が充実しています」と笑顔を見せた。

そんな澤が去った“なでしこJAPAN”も、高倉麻子監督の下、4月のアジアカップでは世代交代を進めながら連覇を達成し、ワールドカップ出場権を獲得するなど新時代に突入。澤は、「(高倉監督が)アンダー世代から見ている選手が多いので、個性ある選手たちが育っていると思います」と印象を語り、「今の若い選手は技術があるから、上手さや足先でやる印象があるので、もっともっと泥臭いプレーを見せて欲しい」と、もう一皮むけるためのアドバイスを送った。そして、これまではリーダーシップを取れる選手があまりいなかったが、最近は熊谷紗希の台頭や、川澄奈穂美の代表復帰などもあり、「“それを言ったら嫌われてしまうかもしれない”という時に、ハッキリと言える選手が入ってくれたのは凄く大きい」とチームを締めてくれる存在の必要性に言及した。

一方で、澤はキャプテンとしてどのようにしてチームをリードしたのか? 2008年の北京オリンピックで、ベスト4にドイツとブラジル、アメリカ、そして日本が残った際、チームメイトに初めて伝えた言葉があるという。当時、このレベルに日本が残ることはなく、選手自身も「場違いじゃない?」と感じたほどだった。しかし、4チーム中3チームがメダルを取れるという千載一遇のチャンスに澤は、「苦しい時は自分の背中を見て」と声をかけたのだとか。「苦しい時間帯はみんな同じなんです。だけど、その苦しい時こそ“私は最後まで諦めない。絶対に走り続ける”というキャプテンシーがありました。でも、言葉だけでは説得力がないですし、自分も口だけの先輩は嫌だと思うので、行動で示すために究極の時にこの言葉をかけました」と、その瞬間にかけた筆舌に尽くし難いほどの思いを明かした。

さらに、「私はドリブルやシュートが上手いわけでもパスセンスがあるわけでもない。でも、私の苦手なところは他の選手がカバーしてくれるし、他の選手が苦手なところは私がカバーできたりする。勿論苦手を克服するように努力はしますが、出来ないと思ったことにはあまり挑まずに、自分の得意な分野を伸ばしました」と語り、苦手という理由でPKを蹴らなくても大丈夫だった理由や、サッカーが11人のチームスポーツであることを改めて説いた。

続いて男子日本代表の監督交代の話題になると、番組アナリストの都並敏史は、「佐々木監督のなでしこJAPANは、選手たちが試合を“自分たちのもの”として戦っていた。監督は、一つの船として走らせなくてはならないから、戦術などを提示してくれるわけです。それに踊らされてしまったのがハリルジャパンの最後だった。これはマネージメントするハリルさんも悪いのだけど、選手たちももっと“自分たちのもの”だと思わなければならなかった」と分析。すると澤は「佐々木監督の指示は勿論ありますが、“でも、やるのは選手だよね”と言って、選手同士でミーティングを行っていました」と当時のチーム内部の空気を明かし、練習では、サイドバックとサイドハーフの縦の関係や、ボランチとディフェンスラインの関係などについて常に声を出し、少しでも納得がいかないと練習後に話し合い、問題が起きたらすぐに解決するようにしていたという。これを聞いた都並は感嘆の声を上げ、「チームとしてまとまっていこうという意識は、あの時のなでしこジャパンの方が明らかに高いし、男子もそれをやらないといけない」と学ぶべきポイントを指摘した。

さらに番組では、監督交代が発表された直後にSNSで「西野監督に期待すること」というアンケートを実施。アンケートの上位は、西野監督へのエールが21%、選手選考に対するコメントが16%、戦術に対するコメントが15%、結果を出して欲しいというコメントが14%、協会への意見が12%となった。“戦術”と“結果”が拮抗するアンケート結果について澤は、「ワールドカップは結果がすべてだと思う」と語り、都並も「結果を取るためにはリアリストにならなくてはならないというのが、前回大会の反省だった」、勝村も「(理想は)べらぼうに強いチームが言えること。74年のクライフ率いるオランダが理想のサッカーで挑んだけど、最後、ガチガチの西ドイツに負けてしまった。最近だとスペインが理想と結果を出して、あの流れのチームなら追えると思うけど……。負けたら終わりですからね」と述べるなど、日本サッカーは二兎を追う段階にはまだないと、リアルな立ち位置について語り合った。

最後に、開幕が迫るワールドカップに挑む日本代表に対して提言を求められると、澤は“コンディションがすべて”と言い切り、「今までの女子サッカーはグループリーグの3試合でいつも終わっていたけれど、徐々に力をつけて決勝トーナメントに行けるようになりました。ただ、優勝するには、コンディションを決勝トーナメントまで持ってこなければならない。一試合だけ良いのではなくて、すべて良いコンディションでいられるのが強いチームだと思います」と、グループリーグの先を見据えた戦いが鍵を握ると語った。

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