篠原信一「前の監督は何をしていた?」敗因は指導の違い

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篠原信一「前の監督は何をしていた?」敗因は指導の違い

シドニーオリンピック男子柔道100kg超級の銀メダリストで元柔道男子日本代表監督の篠原信一が、テレビ東京系で4月21日に放送された『FOOT×BRAIN』(毎週土曜24時20分~)にゲスト出演。「一本でしょっ!!」「諦めないことの大切さ」「前の監督は何してたんや?」の3つをキーワードに「敗北から学ぶ勝者の条件」について語った。

男子柔道の重量級で活躍し国内外で様々なタイトルを獲得してきた篠原。しかし、シドニーオリンピック決勝では、篠原が内股すかしを決めたようにも見えるが、相手選手に有効ポイントが入るという“世紀の誤審”により結果敗北。ロンドン五輪には柔道日本代表監督として挑んだが、男子柔道として初の金メダル0個に終わるなど、輝かしい実績の一方で苦杯もなめてきた。そんな篠原だが、スタジオに登場すると、この日のテーマについて「うってつけな人を呼びましたね」と笑いつつ、独自の視点で勝利へのアプローチ方法について語った。

まずは、最初のキーワード「一本でしょっ!!」をテーマにトークを展開。篠原は、シドニーオリンピック決勝について「一本だと思ってガッツポーズをしていたし、3人の審判が集まって協議をした上で“今のは篠原の勝ち”と宣告してくれると思っていました」と改めて当時の心境を吐露した。しかし、実際に下された判定は相手選手の有効。「なんで? 俺の勝ちだろ?」と思ったまま試合を続け、その思いは試合後半に焦りへと変わり、そのまま挽回できずに試合を終えたという。納得のいかないまま控え室に戻った篠原だったが、「何故、もう一度投げてやろうという気持ちになれなかったのか? 気持ちを切り替えられていたら違った結果になっていたのではないか?」という思いに包まれたという。

「心技体の3つが調和した時が一番良いと言われるが、一番大切な“心”の部分が何もできていなかった。心の弱さに負けた試合だと思う」と振り返ると、番組MCの勝村政信が「このような大舞台で、あのような経験は(事前に)できないですし、それに対処するのは非常に難しいことでは?」と質問。すると篠原は「そういう(事態でも乗り越えられるような)稽古をしてきたハズだった。それなのに最後の最後にメンタルの弱さが出たのだと思う。金メダルを取った野村忠宏や井上康生だったら、同じ場面になっても気持ちを入れ替えて勝てただろうなと思います」と、メンタルの強さに大きな差があったと後になって気がついたと明かした。

そして、今回のワールドカップでコロンビア、セネガル、ポーランドと同じグループHという比較的良いグループに入ったと言われる日本だが、FIFAランキングなどを見ても格上の相手であることに変わりはなく苦戦は必至。2つ目のキーワード「諦めない心」がテーマになると、番組アナリストの都並敏史は、「アディショナルタイムになれば勝っている方は守りに入るのだから、負けている方が積極的になれれば(追いつき逆転する)確率は上がるはず。だけど、これがなかなかできない」と、サッカーで11人全員の気持ちが一つの方向に向くことの難しさについて語ると、篠原も、柔道でもポイントが先行すると終盤で守りに入る選手がいるが「そういう選手はほぼほぼ負けて、最後まで攻められる選手が勝つ」と最後まで諦めない事の重要性について話した。更に都並は「日本サッカーでは、体格差のある海外選手を相手にすると劣勢になるケースが多いが、海外では小柄な選手でも大柄な選手に勝てていることが多い。階級制度があるとはいえ柔道ではどうしているのか?」と質問。篠原は「軽量級が重量級と試合をすることはないが、練習では軽量級が中量級、重量級と練習することで、試合で力負けしないし、力が強いと感じることがあまりないようになる」と語り、「柔道では、中学生がたまに高校に行って練習する。そこではバンバン投げられますけど、それによって強い相手に技をかけられた時の体裁き、受けの練習などになる」と、上のカテゴリに入って練習することで、競技力を上げていると紹介。また「サッカーでも受け身を取り入れることでケガの防止になるし、チャージを受けてチャンスを潰されそうになっても、すぐさま体勢を立て直すことでプレーを続け、更なるチャンスを狙えるのでないか」と提案し、その意見に都並も賛成した。

続いて「前の監督は何してたんや!」のテーマになると、「ロンドンオリンピックの監督に言いたい」と自らを非難。「もちろん選手に勝って貰いたいと、しっかり練習はさせていたと思う。でも、練習する環境は整えてやるから、あとは勝ちたかったら自分でやれよという感じだったのがいけなかった」と反省点を挙げ、「例えば、自分は、釣り手を掴まれた時は“はじいて技をかけたらいいやろ!”という指導だったが、井上康生監督は“何でかわかる?”と選手に聞き、選手に理解・納得してやらせるという指導をしている。僕は“自分で考える”ということをさせられなかったことに敗因がある」と分析。そして最後に、日本サッカーが世界で勝つための提言を求められると「努力の差はもちろんありますが、ちょっとした差を俯瞰で感じ、広い視野で見られることが大切」と語った。

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