ユヴェントスが目指す「サッカークラブ以上の存在」その戦略とは

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ユヴェントスが目指す「サッカークラブ以上の存在」その戦略とは

セリエAの名門ユヴェントスFCのグローバルパートナーシップ責任者、ジョルジオ・リッチが、1月28日に放送されたテレビ東京のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週日曜11:00~)にゲスト出演。日本のゲーム会社Cygamesとのスポンサー契約や、クラブのエンブレム一新について語った。

2006年、カルチョ・スキャンダルが発覚し2部降格、2010年度には122億円もの赤字を出すなど窮地に陥ったユヴェントス。しかし、同年ラニエッリ会長が就任した事で事態は劇的に改善。2011-12シーズンから近年はリーグ6連覇、この3年でUEFAチャンピオンズリーグ決勝に2回進出するなど安定した強さを見せている。さらに、監査法人デロイト・スポーツビジネスグループが発表した2016年、2017年のクラブ収入ランキングで10位に食い込むなど収入面でも躍進を遂げている。

このクラブ収入ランキングについてリッチは、「ここにイタリアのクラブが入っている事自体が凄いことなんです」と語る。実際に、巨額のテレビ放映権によって高額なリーグ分配金のあるイングランドのプレミアリーグやスペインのラ・リーガのクラブが上位を占めており、ユヴェントスが10位を維持しているのは企業努力の賜物で、その大きな要因として「自前のスタジアム」があるという。欧州では多くのクラブが自前のスタジアムを持っているが、イタリアで自前のスタジアムを持つことは異例で、「収入面の助けにもなるが、それ以上にチームのパフォーマンス向上に繋がっている」と語った。

また、ユヴェントスの新スタジアムは、ネーミングライツ契約によってアリアンツ・スタジアムと呼称され、これによって200億円の建設費のおよそ半分を回収。スタジアムの近くにはホテルやショッピングモールなどを併設した“Jヴィレッジ”と呼ばれる施設を作り、ここに本社やトップチームの練習場も建設する予定だという。

そして、これまでイタリア国内に目を向け、ほとんどのスポンサーが国内企業だったが、2015年に欧州CL決勝に進むようになったことがきっかけで世界に目を向けるようになったのだとか。日本のゲーム会社とのタッグはイタリアで衝撃をもって受け止められ、クラブにとっても有意義な契約になった。

このタッグは、セリエAのルールが改正され、ユニフォームの背中にスポンサーを入れられるようになったことで実現。これは120年の歴史の中で初めてで、リッチは「ユニフォームは本当に大切なものです。どの企業でも良いという訳ではない」と語り、この決定には企業ロゴの色やデザイン性が似ているかなども考慮されており、Cygamesはユヴェントスのチームカラーと同じ「白」と「黒」をコーポレートカラーに持っていることや、グローバルな展開を狙っていることなど、クラブのビジョンと一致したことも契約に向けて大きな要因となった。

この両者をつなぎ合わせたのは、ザッケローニ元日本代表監督の元通訳としても知られる矢野大輔。お互いにどのようなメリットがあるのかを聞かれると、「スタジアムでCygamesのCMが流れるとそれがとても格好良くて、サポーターから“おお!”と反応が起き、逆にユヴェントスのユニフォームにロゴが入っていることで、イタリア人のほとんどがCygamesのことを認識するようになっている」と答え、リッチも「ユヴェントスの背中に初めて入るわけですから、ダサいものはつけられません。名前があって背番号があって、企業ロゴが入る。これが自然な形である事が我々にとって大切で、サポーターにも受け入れられている。クラブを運営していく中では、非常に大切な要素です」と話した。

更に、大きな改革と言えば、昨年、13年ぶりに変更されたエンブレム。リッチは「とにかくこだわったのは、シンプルである事」と語り、ユヴェントスのことを知らない人にも、このロゴが入ったバッグやシャツを持ちたいと思われるようなグッズを作り、ファッションアイコンとしての役割を視野に入れて新たなエンブレムをデザイン。サッカー界の常識から良い意味で外れることで、ユヴェントスは「ある意味で普通ではない」「サッカークラブ以上の存在になりたい」というメッセージを伝えたかったのだという。

これらの施策が功を奏し、昨シーズンの762億円以上の売り上げを達成。さらに、2010年の122億円の赤字から81億円の黒字へとV字回復を成し遂げ、世界10位となる大きな利益を上げることに成功した。

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