元陸上選手・大迫傑が引退の理由と会社設立の目的を告白「大事なのは前に進むこと」

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12月4日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)は、元陸上競技選手の大迫傑を特集。日本サッカー躍進のヒントにもなる大迫の考え方や新たな取り組みを紹介した。

大学時代は、出雲・箱根・全日本と駅伝で大学3冠を達成し、マラソンでは2018年の『シカゴマラソン』と2020年の『東京マラソン』で日本新記録を2度も樹立。トラック競技の日本記録も保持するなど、まさに日本陸上界の開拓者でもある大迫の“思考回路”を、3つのキーワードを頼りに紐解いていった。

大迫傑
大迫傑

1つ目のキーワードは「シンプル」。大迫は、MCの勝村政信や解説の北澤豪に対して、「いかにゴールまで無駄なことをせずに最短距離で行くか。あれもやりたいこれもやりたいとなると、ぶれてしまう」と説明。世界と戦うためには目標をシンプルに設定して、一つひとつ解決していくことが大事だと語った。

実際に、大迫は「速くなる」というシンプルな目標のためにあることを実行。それは、長距離走選手強化を目的にしたアメリカ・オレゴン州の陸上競技チームに参加することだった。実業団に所属することが当たり前だった日本の陸上界において、大迫の行動は常識外のこと。それでも、世界一のチームから何かを得たいと、大迫は単身アメリカに渡ってハイレベルな環境に身を置いた。

一方で、環境が変わっても決して無理をしないのが“大迫流”。練習についても「これだっていう1週間のスケジュールを決めて、それ以上も以下も絶対にやらない」と語った。北澤が「やりたくなるんだよね。やったほうがより強くなれるんじゃないかって思っちゃう」と話す通り、アスリートはトレーニングが不調だと、つい過剰に練習をしてしまいがちだが、大迫はトレーニング時期の好不調は「ただの波でしかない」とし、「最終的に目標に持ってくればいいだけ」と指摘した。

2つ目のキーワードは「ノイズキャンセリング」。『東京オリンピック』の前年にマラソン大国でもあるケニアを訪れた大迫は、その理由について「情報をシャットアウトし、生活をシンプルにするため」だったと明かす。しかし、情報を完全に遮断することはできなかったそうで、「いかにノイズと戦わずに関わっていくかを考えるようになりましたね」と打ち明けた。目を背けたいものから逃げるのではなく、付き合い方を少しだけ変える。そのことに気づいたという大迫は「すべて許容できる覚悟を持つ。イレギュラーなことにもフラットに対応していく」と、メンタルを強くする方法にも言及。これには北澤も「(イレギュラーなことに)いちいち反応することも必要だけど、しすぎてもパワーが分散されてしまう気もしますね」と同意していた。

3つ目のキーワードは「I(アイ)」。これは、現役引退後に大迫が立ち上げた会社の名前で“自分自身”という意味が込められているという。東京オリンピックの男子マラソンで日本人として3大会ぶりの6位入賞を果たした大迫は、このレースを最後に、現役を引退。9月には、“人生の主人公は自分”をコンセプトにした「株式会社I」を設立した。

30歳という若さで引退したことについて、大迫は「競技はもちろん楽しいですし、極めていきたいという気持ちもありますけど、でも、それと同じくらい、そして、それ以上に自分の興味があることが増えてきて」と吐露。そして、「アスリートのみならず、多くの子どもから大人まで人生を豊かに生きる上で必要なスキルっていうのがあって、それを伝えていきたい」と意気込んだ。

陸上競技の選手として世界中を回って得た知見を広く伝えるために起業した大迫は、世界で戦える日本人ランナーの育成を行いながら、子どもたちにもメッセージを伝えている。「株式会社I」では、小中学生を対象としたイベントを開催。全国10都市を周り、競技力の向上やトークセッションなどを行なってきた。大迫はそこで「大事なのは、挑戦をして失敗をして、改善をして前に進んでいくことなんだよ。そのスキルっていうのは、人生を生きる上で絶対に活きるんだよ」と力説。夢を持つことや挑戦することの大切さを子どもたちに語って聞かせる大迫に、勝村も「人間力を育てるんだよね」と感心。大迫は「勝ち方って、ナンバーワンを獲ることも勝ちですけど、自分の人生に勝てば勝ちだと思っていて」と、独自の人生哲学を披露した。

さらに、スポーツの力で健康寿命を伸ばすことを目的に、シニア世代でも始めやすいランニングやウォーキングができるコースを整備する構想もあるという。大迫は「これからスポーツの力を通して、一つひとつ解決していけばスポーツの価値を伸ばしていけるのではないか」と期待する。陸上界だけでなく、スポーツ界全体を発展させるために走り続ける大迫に同調した勝村は「勝ち負けではなくて、人間としての厚みや力をつけてくださいっていうのが、たぶんスポーツの本来の力なんだよね」と、補足していた。

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