Jリーグの課題“新規ファン獲得”をパ・リーグTVに学ぶ!

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11月6日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)では、2012年にスタートしたプロ野球のパ・リーグを専門に扱う配信サービス「パーソル パ・リーグTV」を特集。Jリーグの課題でもある“新規ファン”の獲得をテーマに、パ・リーグTVの革新的な取り組みを紹介した。

パ・リーグ全試合のライブ配信と、2012年以降の全ての試合が見放題のパ・リーグTVは、好きなカメラアングルを選択して試合が楽しめるマルチアングルカメラを導入。パ・リーグTVを運営するパシフィックリーグマーケティングのCEO・根岸友喜は「インターネットならではの機動性を活かして、パ・リーグTV独自のカメラを追加しています。ある球場では、もともとのカメラが12台だとしたら、独自のカメラを5~6台追加して、お客様自身が後で好きなアングルで選手のプレーを楽しめます」と説明した。

根岸友喜
根岸友喜

マルチアングルカメラであれば、選手のベンチでの様子や監督の表情、ネット裏からの映像で試合観戦なども可能に。番組MCの勝村政信は「サッカーだったらボールを持っていない選手の動きって、みんな勉強したいじゃないですか」と、Jリーグ観戦にも欲しい機能だと訴え、解説の北澤豪も「いろいろな視点で見られて、分析にもつながる」と評価した。

そんな革新的な見せ方をパ・リーグTVが実現できたのには、放映権を巡る事情があった。Jリーグの場合、J1~J3の53クラブ全ての放映権をまとめてJリーグが管理。2017年からはDAZNで試合を配信している。一方、プロ野球の場合は、NPB(日本野球機構)ではなく、各球団が放映権を管理。パ・リーグにおいては、2012年からパシフィックリーグマーケティングが6球団の全試合のネット配信を一括して管理している。結果として自由な視聴スタイルを提供することが可能になった。

片渕茜、勝村政信、根岸友喜、北澤豪
片渕茜、勝村政信、根岸友喜、北澤豪

かつては、セ・リーグの人気が高かった日本のプロ野球だが、現在はスタジアム入場者数の差も少なくなり、パ・リーグでも人気球団が増加。根岸は「昭和の頃のプロ野球は、100人のお客様がいるとしたら、95人がセ・リーグで、残りの5人がパ・リーグという状況だった」と振り返りながら、「おかげさまで今は3万人のスタジアムが満席になり、ある球団ではチケットが取れない状況になっている」と、現状を報告した。

そんなパ・リーグ人気を後押しするパ・リーグTVでは、新たな取り組みとして、2014年にYouTubeチャンネルを開設。好プレー映像はもちろん、珍プレーや選手の素顔、まとめ動画など多彩なコンテンツを取り揃えている。その試みが話題を呼び、2020年夏には動画の総再生回数が1億6千万回を突破。国内の総再生回数のランキングでは、人気YouTuberのHIKAKINヒカルを抜いて、3位にランクインした。

パ・リーグTVはYouTubeチャンネルの開設によって、新たなファンの獲得にも成功。根岸は「我々のYouTubeチャンネルを見ている人で圧倒的に多いのは20代の方々です。18~34歳の方々で70%。年代では20代が一番多い。これはここ2、3年の傾向です」と明かした。パ・リーグもJリーグも実際にスタジアムに足を運ぶのは40代後半がメイン。活性化のために、10~20代の若い層の取り込みが大きな課題となっている。なぜ、パ・リーグTVは若い新規ファンの獲得に成功しているのか。番組では、その秘密を探るため、動画の制作現場に潜入した。

番組のカメラは、パ・リーグTVのYouTubeチャンネルで動画編集を行っているシニアディレクターの中村達広に密着。そこから見えてきたのは、新規ファンを獲得するための3つのポイントだった。1つ目は、試合中に動画を編集するスピードの早さ。中村は1人で2、3試合を同時に視聴しながら、試合中に動きがあるとすぐに編集を開始し、1本の動画をおよそ15分で完成させるという。

また、2つ目は、独自のオリジナルコンテンツの豊富さ。パ・リーグTVのYouTubeチャンネルでは、スーパーキャッチやホームランだけではない、ベンチでの選手同士のやり取りやコーチの動きなど、テレビ中継では見られないシーンを切り取って配信していた。中村は、細かい重箱の隅をつつくような場面も含めて、全てが野球の魅力だと強調。VTRを見ていた根岸も「今後はよりニッチなコンテンツもどんどん増やしていきたい」と、展望を語った。

そして3つ目は、YouTubeには欠かせないサムネイル。中村は、動画の内容を伝えるサムネイルにもこだわっており、誰が見てもわかりやすく、考えさせないサムネイルを心がけているという。

片渕茜、勝村政信、根岸友喜、北澤豪
片渕茜、勝村政信、根岸友喜、北澤豪

根岸は、パ・リーグとJリーグは境遇が似ているとしながら、「球場外でどれだけ野球のコンテンツ、サッカーのコンテンツをファンの皆様や、今はファンではない方々に届けるかだと思っています」と主張した。また、「新しいファンを獲得するためには他のコンテンツとの掛け合わせが大事」という根岸の言葉に、北澤も「ぜひ協同させてもらいたいですね」と賛成。勝村はサッカーと野球の相乗効果を期待しながら、「サッカーがパ・リーグの皆さんを嫉妬させるような何かができたらいいなと思いましたね」と締めくくった。

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