“ママアスリート”に対する支援の輪が広がる日本スポーツ界!福利厚生でチームを選ぶ未来も!?

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プロスキーヤーの上野眞奈美が、9月25日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、24:35~)にリモートでゲスト出演。女性アスリートを支援する環境作りについて、MCの勝村政信やアナリストで元女子サッカー日本代表の東明有美らと、トークを繰り広げた。

2009年に結婚して、第一子の出産を機に引退した上野は、翌年の2010年に現役復帰。2014年に開かれたソチオリンピックのフリースタイルスキーには、日本スキー競技界初となる“ママアスリート”として出場を果たした。そんな自身の経験を元に、上野はクレー射撃の中山由起枝やカーリングの本橋麻里らと共に、出産後に起こる体の変化や育児体験談を発信していくママアスリートネットワーク「MAN」を設立。上野は活動方針について「ママアスリートを増やしていく組織ではなく、どちらかというと互助的というか、女性アスリートをサポートする内容になる」と説明した。

「MAN」には、パラ種目も含めた12競技のママアスリートたちが参加。産後わずか5ヵ月で現役に復帰した元バレーボール女子日本代表キャプテンの荒木絵里香は、メンバーの一人として、出産後に効果的なトレーニング方法などを女性アスリートに伝えている。出産からの復帰に向けたトレーニング方法はそこまで確立されていないため、メソッドの共有も「MAN」の大事な使命。荒木は「出産して競技を続けることが女性アスリートの選択肢の一つになればいいと思います」と強調した。

また、ママアスリートとしての復帰は、夫である男性側の支援も重要だという。引退の翌年に結婚し、愛娘を出産した陸上女子100mハードル日本代表の寺田明日香は、6年ぶりに陸上競技に復帰し、東京オリンピックでは日本勢として21年ぶりに準決勝へ進出。その裏には、コーチ・トレーナー・栄養士を集めるなど、スポーツコンサルタントの夫による全面バックアップがあった。

しかし、全てのママアスリートが家族の支援を受け、周りからの理解を得られるわけではない。上野も「普通に育児の相談ができる友達はいるが、競技と両立した育児の相談ができる人がいなかった」と、孤独感を抱えていたことを打ち明ける。競技と育児の両立は多くのママアスリートが抱える悩みの一つ。特に、「タイムコントロール」は大きな課題となっており、スケジュールの狂いから生じる託児問題を解消しようと、日本では今、ナショナルトレーニングセンターに託児所を作るなど、様々な対策を練っている。

スタジオの様子
スタジオの様子

また、バレーボールの荒木も当時所属していた埼玉上尾メディックスからサポートを受けていた。荒木は「チームの母体が病院なので、看護師さんやお医者さん向けの保育園があり、そこに子供を預けさせてくれるというサポートがありました。やはり個人じゃなくてチームスポーツなので、企業側の理解やチーム側のサポートがないとなかなか難しいのが現状だと思います」と語った。

そして、女子サッカー界にもママアスリートを支援する輪が広がっている。昨年男児を出産して復帰した日テレ・東京ヴェルディベレーザの岩清水梓を筆頭に、ママプレーヤーが増えている女子サッカーのWEリーグ。番組には、なでしこジャパンのフォワードとして活躍した大滝麻未がリモートで登場し、「私、今妊娠8ヵ月で、もうすぐママになるんです」と告白した。

2019年にサッカー女子日本代表のキャプテン・熊谷紗希らと共に「なでしこケア」を発足し、女子サッカー発展のために力を尽くしている大滝だが、実は結婚を機に引退を考えていたという。しかし、その考えを変えたのは、所属しているジェフユナイテッド市原・千葉レディースからのメッセージだった。大滝はチーム側から妊娠・出産した選手をサポートする準備があると伝えられたことで、現役続行を決意。「そこで初めて、そういう選択肢もあるのかとなって、復帰を目指して今もトレーニングをしています」と声を弾ませた。

アナリストで元日本代表の東明有美
アナリストで元日本代表の東明有美

WEリーグのクラブで産休に入る選手のサポートを行うのは初の試み。ジェフ市原・千葉レディースのGMを務める三上尚子は、FIFAの「産休14週間中、給料の3分の2を支給」という規約を超えた「産休14週間中、給料の全額支給」を宣言した。さらに、11月に出産予定の大滝に対し、認可保育園に子供を預けられるようになる来年4月までの5ヵ月間は、育児に追われて選手としての復帰準備が難しくなるという理由から、ベビーシッター等にかかる費用の約5割をチームで負担すると約束。これには勝村も「太っ腹じゃないですか」と拍手し、東明も「素晴らしいと思います」と絶賛した。

また、東明は「福利厚生の一環として妊娠・出産した選手へのサポートというのが各チームで確立されていけば、もしかすると、そういった条件でチームを選ぶということが将来起こってくるかもしれない」と予想。女子サッカーの未来を示唆した。

他にも、産後のトレーニング方法などについても語られた今回。上野は「妊娠・出産をきっかけにして引退するのも一つの選択肢です。ただ、それを辞める選択肢としてチョイスする必要はないのかな。そういった理解をジュニアの世代から伝えていくことが大事なこと」と訴えた。

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