【ネタバレ】『俺の家の話』観山家それぞれに広がる距離!打破する寿一の強さ

「潤 沢」のたかっし(阿部サダヲ)との出会いなど「いろいろあって完全にバカになった」観山家一同は、一切の毒気を抜かれ、松任谷由実の「BLIZZARD」を歌いながら家族旅行の帰路についたのだった。なんだか不思議な多幸感に満ちた6話とは対照的に、寿三郎(西田敏行)の認知症の悪化疑惑や、要介護2認定、秀生(羽村仁成)の親権を巡る元妻・ユカ(平岩紙)と寿一の双方の弁護士を交えた話し合いと、なかなかシビアな展開が続く『俺の家の話』(TBS系)第7話であった。

7話を一言で言えば、「生まれてしまった距離感をどう打破するか」の回だ。「リモート」を通して「物語上の距離」、「さくらのマスク」を通して「コロナ禍の距離」、そして「スカイツリーと山賊だっこ」を通して「"好き"との距離」が描かれている。

濃密だった6話とは対照的に、仕事が忙しくなった舞(江口のりこ)と踊介(永山絢斗)は「リモート介護」に切り替え、親権を巡る寿一、ユカ、ユカの夫・早川(前原滉)の話し合いもリモートを介して行われ、7話は全体的に「距離」が彼らを阻んでいる。特に秀生が観山家に行くことを禁じられたことが大きい。寿三郎は事あるごとに秀生の所在を聞き、秀生もまた、「能が死体(したい)」と暴れる。

そんなもどかしい状況を打破したのは、寿一の行動だった。寿三郎の病状の悪化を医師に告げられた寿一は、「家の継承」を含めた将来的な展望の話し合いでもなく、過去であるユカと寿一の「離婚の原因」の追及でもなく、とにかく「今」寿三郎と秀生を会わせてやりたいのだと、リモートで会話中、ユカに実際に会いに行く。早川の「バーチャル背景」とは対照的にぐんぐん近づいてくる、臨場感溢れるリアル背景、さらにはインターホン越しの登場。ビデオチャットの画面を突き破るかのように、勢いよくユカの家に押しかけ、頭を下げる寿一の姿、「スカイツリーのてっぺん」を久しぶりに見て心を許したユカは、秀生が能の稽古を続けることを許したのだった。

続いて、「さくらのマスク」である。さくらが、試合会場において、寿一の「寿固め」をかけながらの「必ず幸せにします」発言を受け、マスクを外し、満面の笑みを浮かべる場面だ。

これまでも、『俺の家の話』は「コロナ禍」という言葉を一切使わずに、登場人物たちのさりげないマスク使いをはじめ、新しい生活様式を自然に織り込むことによって、我々の生きるコロナ禍の日常を反映してきた。それによって、コロナ禍で生まれた「ソーシャルディスタンス」、つまりは人と人の間に生まれた「距離感」を暗黙のうちに示してきたのである。

また、『俺の家の話』における「マスク」、能の「面」、プロレスの「マスク」は、共通して、常に何かを「演じている」「秘密を抱えている」彼らの内面を隠す(「秘する」)ための「仮面」でもある。

だからこそさくらの「マスクをとる」行為は、ある種物語構造からの解放、過酷な家庭環境で感情を押し殺していた彼女の、人間性の解放であるとも言えるのだ。

3点目は、さくらと寿一が、一緒に作ったインスタントラーメンを食べながら、互いについて語り合う、この上なく素敵な場面だ。さくらは寿一を「スカイツリー」に例える。寿一は存在が大きすぎて「離れて見るのがちょうどいい」のだと。

『俺の家の話』は「好き」との向き合い方を描いたドラマでもある。3話における長州力の「幸せかもな、大好きなものを仕事にしなくていいもんな」という言葉はじめ、再三描かれてきた「好きなもの・人」との距離感の話がここでも登場する。

でも、本来なら必要なはずの寿一との「距離」を、さくらは彼に「登る」という行動を取ることで乗り越えた。あまりにも存在が大きすぎて、近くで見ると全然見えないけれど、「山賊だっこ」を通して「私は登った」。「近くで見て登って、初めて好きになった。2回登って確かめた、やっぱり好き」。だから離婚の原因となった、ユカが恐れた「殺気」を、彼女は「怖くない」と言う。これほど斬新で最高な告白があるだろうか。

とはいえこの恋が成立してしまうと、観山家の四角関係は一体どうなってしまうのか。寿三郎が浴室で「寿限無(桐谷健太)が面を持ちだした」という物盗られ妄想を語っていたことも気にかかる。時折感じずにはいられない、寿三郎の寿限無への当たりのキツさ。ただでさえ苦労人の寿限無をこれ以上哀しませないでくれと、心から思う。

(文・藤原奈緒/イラスト・月野くみ)

【第8話(3月12日[金]放送)あらすじ】
ついに、さくら(戸田恵梨香)へ自分の気持ちを告白した寿一(長瀬智也)。だが、まだそのことを家族に話すわけにはいかず、何事もないかのように振る舞う2人。そんな中、突然寿三郎(西田敏行)が「終活をする」と言い出した。自分が「要支援2」だと思っている寿三郎は、今のうちに遺産相続について書き記しておこうと言うのだ。「さくらへ贈与する」と寿三郎は言うが、それを聞いたさくらはキッパリと断ってしまい・・・。

日は変わり、寿一は寿三郎から新しい演目の稽古をするように告げられる。同時にスーパー世阿弥マシンの新しい対戦相手が決まり、寿一は能とプロレスを同時進行で稽古していくことに。そんなある日、寿限無(桐谷健太)との稽古中によろけてしまい、寿一は病院へ。診察の結果、とあることがきっかけとなりアキレス腱を断裂。2週間の車椅子生活を余儀なくされる。そして、観山家に"車椅子の親子が2人"という生活がスタートするのだった。

◆放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
毎週金曜22:00よりTBS系で放送中。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信

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