北川景子“咲”と永山瑛太“紘一”の“リコカツ”夫婦が提示する「新しい家族のカタチ」とは?

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「離婚」。この二文字は重い。しかし現代を生きる私たちにとっては、まず「結婚」の二文字がとても重い。「結婚して一人前」ってなんなんだろう。働いて、納税して、自立して生きているのに。今は好きなライフスタイルをそれぞれ自由に選んでいい時代のはずなのに、現実としていまだに独身者への偏見や世間からの結婚プレッシャーはあるのだ。結婚も離婚も、なんだか実態が遠くにありすぎてイメージが沸かないんだよな……。と思っていた矢先、予想だにしないドラマがスタートした。

現在放送中のドラマ『リコカツ』(TBS系、毎週金曜22:00~)は、第1話で水口咲(北川景子)と緒原紘一(永山瑛太)の二人が、運命的な出会いをきっかけに交際ゼロ日でスピード結婚したところから物語が進展する。華やかな結婚式を終え、さぁこれから幸せな新婚生活が始まる……と思いきや、すぐに互いの生活習慣の違いや結婚生活に求める価値観の違いが発覚。周囲に事実を告げず、水面下で離婚に向けた活動「リコカツ」を始める、というストーリーで、結婚と離婚、両方のメリット・デメリットを理解するのに最適な内容となっている。

主人公たちの離婚をメインに扱うドラマは過去にもあった。たとえば草彅剛瀬戸朝香が共演した『成田離婚』(1997年・フジテレビ)。これは結婚したての男女が新婚旅行先で相手の短所を発見し、日本に着くなり離婚するという当時の社会現象を元に制作されたドラマだった。

記憶に新しい『最高の離婚』(2013年・フジテレビ)では、永山と尾野真千子綾野剛真木よう子演じる2組の男女が、結婚と離婚のはざまで成長していく姿を描いていた。一方、「離婚から始まるラブストーリー」を謳っている『リコカツ』は、いがみ合っていた二人がどうお互いを認め合い、受け入れていくかの過程、そして最終的な決断が見ものになってくる。

紘一(永山瑛太)
紘一(永山瑛太)

ラブコメで「だから男は……、だから女は……」と男女の考え方の違いを描くのはあるあるだが、本作は性差ではなく(男脳、女脳なんて話はナンセンス!)、家族観・家庭観の違いが争点になってくる。

水口家は共働き家庭。両親は夫婦間に極端な支配関係はなく、お互い自由に暮らしている。ただ家事や育児の負担は夫婦でイーブンではなかっただろうと思われるので、平成型の夫婦像に近い。一方、緒原家は男性が外で働き、女性は無償労働者として家事育児に従事するという旧来的な性別役割分業家庭。いわゆる亭主関白な昭和型の夫婦像だ。そんな家庭にそれぞれ育ったのだから、咲と紘一の価値観は違って当然だ。

まるで平成と昭和。この異なる価値観と向き合うヒントが、『リコカツ』にはあるように思う。もちろん価値観は時代に合わせ最新版にアップロードすることに越したことはない。それでも「今は令和だよ?」では乗り切れない問題が現実にはたくさんある。

ドラマでは咲と紘一、そして両家の両親も離婚を決意する大渋滞状態になっているが、それだけ世間の夫婦間には多様な問題があるということだろう。問題に気づく人もいれば、問題意識すら持たない人もいる。そこにある溝を埋めるために行うのが「リコカツ」(離婚活動)なのだ。そう思うと、「リコカツ」はネガティブ発想で生まれたものではなく、とても前向きに問題に向き合うための行動のように思えてくる。だってこれは相手のことを知ることでもあり、自分自身のことを知るための活動でもあるのだから。

第6話で最後の晩餐を囲む咲(北川景子)と紘一(永山瑛太)
第6話で最後の晩餐を囲む咲(北川景子)と紘一(永山瑛太)

恋のはじまりに理由はなくても、恋のおわりには必ず理由があるもの。人生100年時代に、一人の人と添い遂げるという理想が正しいわけでもないと思う。もう「結婚が幸せ」でもなければ「離婚が不幸」でもない。どちらも重要視しなくていいライフイベントになってきた。ただ結婚も離婚も、自分らしく生きるためのポジティブな行為であるなら、どちらも最善の選択になる。

劇中の夫婦たちが結婚を維持するのか、離婚するのか。それぞれの夫婦の関係性がどう変化していくのか。どういう決断を下したとしても、個々の人生が幸せに向かう結末を迎えてほしい。もしかしたら『リコカツ』の水口家と緒原家から「息苦しくない新しい家族のカタチ」が見えてくるかもしれない。

(文:綿貫大介)

<5月21日放送 第6話あらすじ>
咲(北川)と紘一(永山)は互いを愛しく思いながらもすれ違い、ついに離婚届に判を押す。咲が心を込めてリノベーションした新居も、新婚夫婦に引き渡すことで話が決まり、二人での生活も残りわずか。咲と紘一は、夫婦としてではなく他人として同居生活を始めることに。

そんな中、水口家に家族全員が集まった。美土里(三石琴乃)が武史(平田満)に離婚届を渡したことを知った咲が、夫婦で話し合う時間を設けたのだ。しかし、咲の願いも虚しく、武史は離婚届を最後のプレゼントだと差し出す。

一方、緒原家でも薫(宮崎美子)と正(酒向芳)に別れの時が迫っていた。

咲と紘一が二人で過ごす最後の夜。咲は「最後の晩餐」だと料理を用意して紘一を待つが、勤務中にトラブルが発生した紘一とは連絡が取れない。すると咲が担当している人気小説家・水無月連(白洲迅)が現れ、勝手に部屋に上がり込んだきた。しばらくすると紘一が帰宅し、水無月と一触即発!? 離婚前夜は波乱の予感……。

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