“無人の東京”にレンズを向ける写真家・中野正貴「待っている時間が本当に修行みたい」『情熱大陸』

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9月27日放送の『情熱大陸』(MBS/TBS系、毎週日曜23:00~)は、写真家の中野正貴に密着。60代半ばを過ぎながらもなお、大都市・東京が見せる“無人の瞬間”にレンズを向け続ける姿を追った。

スポーツ、演劇、音楽、学術などありとあらゆる分野の第一線で活躍する人物にスポットを当て、その人の魅力や素顔に迫るドキュメンタリー。今回は、コロナ禍で人出の減った夏の東京を舞台に、重い機材を抱えながらひとりシャッターチャンスを追い求める中野の姿に密着した。

中野は2000年に、街から人が消えた一瞬を捉えた写真集「TOKYO NOBODY」を出版し、日本写真協会新人賞を受賞。窓越しに見える不思議な景色を集めた作品「東京窓景」でも、そのユニークな視点が高く評価された。中野いわく、“良い写真”の条件は「撮ってる人がしゃしゃり出ない」ことという。撮影に使用するのは、35年前に手に入れた木製の大判フィルムカメラ。デジタルでは出せない微妙な質感を作品作りに活かしている。

「いま俺、65(歳)になっちゃったから。あと15年経ったら80(歳)じゃん」と、時間の流れはあっという間だとし「そうすると頑張って撮らなきゃ」と中野。まだ夜も明けきらないうちから船に乗り、川から東京の街並みにカメラを向けていく。「いつもどこを撮っているのか?」という取材班の問いに、中野は「変なとこ。基本的に。キレイに撮るんじゃなくて、気になるところを撮っている感じ」と答える。更地となった築地市場跡に「なんか寂しいね」とこぼす一方で、隅田川沿いに建設されたタワーマンション群を興味深げに写真に収める。東京をひとつのテーマにしようと考えたのは、「街は生き物だ」という考えが根底にあるからだという。

自身の作品は、コンセプトから作っていくタイプではないと語る中野。「面白いなと思ってることをやり続けると、どこかで理論武装が必要になってくる。そうやってまた撮り足したり…… というのを繰り返しているあいだに、なんとなく(コンセプトが)できていく」と語った。

後半では、新宿・歌舞伎町で「窓越しに見えるゴジラのモニュメント」をカメラに収めようと奮闘する様子に密着する。中野は撮影スポットとして、モニュメントに面したビルに入居する飲食店に狙いを定めるが、コロナの影響でフロアが休業しているなど、その行程は予想以上に難航する。ときには道端の工事作業員にも聞き込みをしつつ、重い機材をひとり担いで歌舞伎町をひたすら歩く中野。はたして、「ゴジラの見える窓」は見つかるのか。

「待っている時間が本当に修行みたいなんだよ」とつぶやきつつ、膨大な時間と労力をかけ、一瞬のシャッターチャンスを待つ中野。インターネット上では「強靭な行動力、尊敬します」「静止画だからこそ一瞬に価値があるんやな」「自分にしか見えないものを撮り続けるってカッコいい」といった声が上がっていた。

次回10月4日の放送では、行列のできる町中華「兆徳」店主・朱徳平に密着する。

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