市川猿之助の顔芸と「詫びろ!」が強烈インパクト『半沢直樹』第1部の名シーンを振り返る

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いよいよ9月27日(日)に最終話を迎える『半沢直樹』(TBS系、毎週日曜21:00~※TVerでは、第1話から20日に放送された第9話までを期間限定で無料配信中)。堺雅人演じる半沢直樹はもちろん、香川照之演じる大和田暁や、片岡愛之助演じる黒崎駿一など続投組、そして第1部の第1話から第4話には、伊佐山泰二(市川猿之助)、副頭取の三笠洋一郎(古田新太)、瀬名洋介(尾上松也)ら新キャラたちが名シーンを演出し、作品を盛り上げた。最終話を前に、印象的な名場面をもう一度振り返ってみたい。

前シリーズのラスト、父の敵と思っていた大和田常務に「倍返し」を見事果たし、バンカーとしての一つの決着を見せた半沢。しかし、そのやり方は過激で、頭取の中野渡謙(北大路欣也)から、子会社である東京セントラル証券への出向を命じられてしまう。

第2話シーンカット
第2話シーンカット

営業企画部部長として東京セントラル証券に赴任した半沢は、IT企業・電脳雑伎集団によるスパイラルへの企業買収のアドバイザリー契約という、非常に大きな仕事に取り掛かるが、東京中央銀行の横やりにより、暗礁に乗り上げる。半沢の前に立ちはだかったのが、東京中央銀行・証券営業部部長の伊佐山だ。

伊佐山は第1話の冒頭から邪悪な顔をして「あいつだけはぜってー許さない」と半沢への敵意を剥き出しにする。怒りの理由は、大和田の失脚。伊佐山は将来頭取になると見込んでいた大和田に忠誠を誓ってきたが、半沢により大和田が降格させられ、自身の出世も頓挫したことから、半沢を憎んでいるのだ。

これまでの物語では、半沢の敵となる人物は、“小物”を除き基本的に最初は紳士的に半沢に接するのが通例だった。しかし伊佐山は最初から汚い言葉と圧倒的な顔芸で半沢を叱咤しまくる。

最初の大きな対峙は、電脳雑伎集団の買収案件を、東京中央銀行に持っていかれたとき。半沢は社内を調査し、同僚の諸田祥一(池田成志)が、伊佐山に情報をリークしたことをつかむが、伊佐山は「知らない、知らないよ、俺そんなメール受け取ってないよ」としらばっくれる。さらに「てめーたちが勝手にでっち上げた偽装メールなんじゃねーのか」と脅す。キレた半沢はここで、本シリーズ初の「やられたらやり返す、倍返しだ!」を発動し、伊佐山に宣戦布告する。

その後、半沢率いる東京セントラル証券はスパイラルに協力姿勢を見せると、伊佐山が激怒し、半沢を銀行に呼び出す。そこで伊佐山は、子会社の仕事を全部引き上げることを宣言すると、半沢に「詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ、詫びろ半沢!」と連呼。歌舞伎の見栄きりのような迫力あるシーンは、インターネット上でも大きな反響だった。

いよいよ銀行と全面戦争になった半沢。いろいろなアイデアで銀行に一矢報いようとするが、相手は超メガバンク。500億円の追加融資で圧倒すると、伊佐山は半沢に向かい「ざまーみろ、お前の負けーーーー」と強烈な顔芸で半沢を一蹴する。

そんな伊佐山だったが、忠誠を尽くしていた上司である大和田を裏切り「土下座野郎」と言い放ち、三笠副頭取に寝返るなど、かなりの外道。最終的に伊佐山は、半沢と大和田のまさかの共闘により、役員会で地べたに這いつくばらせられることになってしまったが、大和田演じる香川との“いとこ共演”が話題になるなど、大きな爪痕を残した。

また『半沢直樹』と言えば、半沢と大和田の激しい戦いも見どころだ。実は、第1話から第4話までの原作となっている「ロスジェネの逆襲」に大和田は登場しない。それだけに、どんな形で物語に絡んでくるかが大きな注目だったが、第1話から存在感は抜群。

大きな不正が発覚したものの、常務から平の取締役に降格で済んだ大和田は、人事を配慮してくれた中野渡頭取に対して「施されたら、施し返す、恩返しです」という名言でスタート。

第3話シーンカット
第3話シーンカット

その後は、半沢と伊佐山の戦いを遠目から見ているような展開だったが、なにかと半沢にちょっかいを出す。窮地に追いやられた半沢に対して、大和田は「助けてやろうか?」と声をかけるが、半沢は「自分の身は自分で守ります」と無下に断る。すると大和田は「組織に逆らったらどうなるか一番よくわかっているはず。君はもうおしまいです」と言うと、去り際に振り返り「お・し・ま・い・です(death)」と顔芸付きでデスポーズ。ネット上では「来ました名言!」「今年はこれが流行語大賞か?」と大いに盛り上がった。

相変わらずバチバチの関係の半沢と大和田だったが、東京中央銀行が電脳への500億円の追加融資が決定すると、半沢は窮地に追いやられてしまうため、大和田にまさかの共闘を提案する。半沢は自分の父親の自死が大和田に原因があると思っているほど憎んでいる相手。一方の大和田も、不正を暴かれ役員全員の前で土下座させられた半沢への怒りは相当なものだ。

当然、半沢が共闘を持ちかけても、大和田は「お前なんかと誰が手を組むか! 死んでも嫌だね! 負け犬半沢君」と一蹴する。しかし、大和田にとっても裏切った伊佐山に一矢報いる必要があるため、二人はタッグを組む。

第4話シーンカット
第4話シーンカット

役員会に呼ばれた半沢は、伊佐山や三笠の悪事を徹底的に追及し、完膚なくまでに叩き潰すと、中野渡頭取は半沢の正義を称賛した。

どんな巨大な敵に対しても、自身の正義を貫く半沢に、東京セントラル証券のプロパーたちもいたく感動。そんな彼らに半沢は「勝ち組、負け組という言葉がある。私はこの言葉が大嫌いだ。大企業にいるからいい仕事ができるわけではない。どんな仕事をしていても自分の仕事にプライドを持って、日々奮闘し達成感を得ている人を本当の勝ち組と言うんだと思う」と熱いメッセージ。

東京中央銀行を救った半沢は、本店の営業第二部次長へと栄転。銀行の最大の懸案事項となっている帝国航空再建という新たな戦いに挑むことになった第2部「銀翼のイカロス編」もいよいよクライマックス。どんな結末を迎えるのか、楽しみは尽きない。

(文・磯部正和)

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