話題の『中学聖日記』から思い出す、あの日あの時にときめいた年の差恋愛ドラマ

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え、今秋のドラマは朝ドラも深夜も含めて全般的に面白くないですか? おかげさまですっかり寝不足なうえに体力不足。秋の夜長というものを体を張って楽しんでいる最中です。

現在、教師と生徒の年の差恋愛を描いた『中学聖日記』(TBS系、毎週火曜22:00~)が話題です。秋ドラマの事前情報をチェックして心がブルブル震えたのはこのドラマのおかげだと言っても過言ではありません。自分がアラフォーになったから……という一般論からの傾向ではなく、10代から年下男子好きだった私……。自分の恋愛観と照らし合わせるかのごとく、毎週楽しんでいます(鼻息)。そこでここ20年くらいの放送作品で私の印象に残った“年の差恋愛ドラマ”をいくつか選んでご紹介。あ、男性が年上ではなく、全編に渡って女性が年上設定ということで悪しからず。

■“年の差恋愛ドラマ”3選から、いつの時代も変わらない“純度の高い恋心”を追う

まず年の差恋愛ドラマの金字塔と呼びたいのが『魔女の条件』(TBS系、1999年)。高校教師の広瀬未知(松嶋菜々子)と9歳年下の生徒、黒沢光(滝沢秀明)が恋に落ちる設定だった。

シナリオの原則と言われる3幕構成がある。1幕で日常があって、2幕で非日常に主人公が飛び込んで、3幕で解決へ視聴者を導くものだ。結婚を控えた女性教師が、禁忌と言われる生徒と恋に落ちて、最終的には周囲を巻き込んで自分たちの愛を貫いた。王道の展開なのに、女性が年上で教師と生徒という設定は衝撃以外の何物でもなかった。最終回は二人がベッドで眠っているシーンで終わって、いろいろ物語の続きを妄想させていたことも思い出す。

「私は黒沢光くんを愛しています!」

と全校生徒の前で堂々の宣言。まさかの図書室での初エッチと、ありえない設定の連打。ちょっと昼ドラ感はあったけれど、そもそも恋愛設定がファンタジーに近いものだしと楽しんだこと思い出す。この作品でタッキーの胸撃つ可愛さが全国に知られたよな……。このたびタレント業を引退、そしてジャニーズ事務所を引っ張っていく立場になるということでもうあの造形美はテレビで拝めないのか、残念。

まだ結婚退職がデフォルトの90年代ラスト。女の愛の強さを全面に打ち出してくれた作品だ。

そして次にお勧めしたいのが『anego』(日本テレビ系、2005年)。32歳のOL野田奈央子(篠原涼子)と、新入社員の黒沢明彦(赤西仁)と10歳差の恋愛に。黒沢という苗字は年下恋愛の定番なのだろうか。

今から13年前。女性が結婚後に仕事を続けることもポピュラーになりつつあり、何よりも女性の選択肢が徐々に増えた時代だ。結婚、仕事、出産。すべての選択肢は女性に委ねられるようになってきた。

それでも奈央子と黒沢の恋はうまくいかなかった。結婚を夢見て

「朝も、昼も、夜もずっと一緒にいたいんだけど、同棲とかじゃなくて……結婚してください!」

と、逆プロポーズをする奈央子。その返事はあまりにもキツかった。

「考える時間をください。……5年……くらい?」

22歳の男性には当たり前のことかもしれないけれど、これが現実。そのあと、5年後は37歳だとひとりで泣く奈央子へ猛烈に同情した。

『魔女の条件』では禁忌だった年の差恋愛が、2005年を迎えて不倫の恋のような一般ラインまできたと思う。「誰にも言えない」「一般的ではない」という背徳感のある恋が少しずつ認知されてきたのだ。

ラストに紹介するのが記憶に新しい『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系、2016年)。美容皮膚科医の橘みやび(中谷美紀)は39歳。結婚も出産も強く願っていないという、90年代には希少だったキャリア女性の存在。なにもかも自由になる独身生活を謳歌していたところに現れたのは、フリーターで26歳の橋本諒太郎(瀬戸康史)。

結果ふたりは結ばれなかったけれど、みやびが予想外の恋愛を楽しむ様子がとても良かった。13歳年下の男の子から自分に入ってくる、今まで知らなかった若者文化や、20代に遊んでいたころの懐古。変わっていく自分。年下男子との恋愛の醍醐味がぎゅっと詰まっていた。

このドラマを経た時期くらいから、男性が年上で収入も地位もある女性と恋愛することに抵抗がなくなったように思う。

さて『中学聖日記』。中学校教師で25歳の末永聖(有村架純)は、15歳の生徒・黒岩晶(岡田健史)から求愛される。当初はお互いの立場を考慮して断っていたものの、黒岩の純粋な愛情表現に惹かれてしまう。聖は真面目で周囲の期待を裏切ることのないように生きてきた女性。婚約者の川合勝太郎(町田啓太)もエリート商社マンで、もう踏み外すことのない未来を歩むはずだったのに……という心の揺れが、見る側をドキドキさせる。

『魔女の条件』を彷彿とさせる設定だけれど時代背景の違いを楽しむのもいい。例えば未知は父親のコネで高校教師になった経緯があり、正直“腰掛け”感覚。でもプライベートではそれなりに独身女性を謳歌しているようなシーンもあった。友人に愚痴をこぼしたり、イタリアンでお酒を飲んだり。もう時期は過ぎていたけれど、バブル魂に近いものがそこにはチラ見えしていたのだ。一方、聖はあくまでも淡々としていて、感情表現も少ない“現代っ子”。でも憧れていた職業に就くことができたという熱意はある。同じ設定ながら、愛に壊れていく様子にはだいぶ差が出てきそうなのでそこが楽しみだ。聖は自我崩壊するんじゃないか? というのがスナイパー小林予測。

そして平成ラストのプリンスなのでしょうか。いきなりドラマ二番手の出演となった黒岩役の岡田健史さん。演技はまだ未知数だと思うけど、元高校球児というだけあって、ガタイのいいこと……! 大きな体で聖を抱きしめるシーンは個人的ハイライト。毎週火曜は早めに帰宅したい。

こんな記事を書くので改めて伝えたいのだけれど、年下男子との恋愛は楽しい。何がいいかと言えば、まず自分が若くあろうと努力するようになってエイジレスになる。いい美容法じゃないか。それから知らなかった文化が次々に入ってきて視野が広がる。知らなかった自分を見つけられるというのは醍醐味以外の何ものでもないと思う。とはいえ、いきなり経験のない人が恋愛実践に手を出すと何かと戸惑うこともあるかもしれない。その前にここに挙げたドラマで、予習をどうぞ。あ、けして倫理を踏み外せといったことを推奨しているわけではありませんので誤解のなきよう……。

(文・スナイパー小林)

■10月30日放送『中学聖日記』第4話あらすじ
勉強合宿で、晶(岡田)への特別な感情に気付いた聖(有村)。彼女を心配する千鶴(友近)は、「生徒に本気になったら終わり」と諭す。自分の想いは一時的なのものだと、聖は気持ちを新たに教師として晶に接する。

一方、諦めきれない晶は「花火大会のあとに会いたい」と聖にメールをする。そんな2人の関係を晶の母・愛子(夏川結衣)が疑い始める。

夏休みが始まり、つかの間の休日、聖はウェディング雑誌を読みながら挙式の準備を進める。その頃、勝太郎(町田)は原口(吉田羊)と二人きりで海外出張に出かけていた。勝太郎は、聖に誰か他に惹かれている人がいないか、ハッキリさせるよう原口に迫られる。

そして花火大会の夜、見回りで会場へ来た聖は、晶の意外な姿を目撃する。さらに、勝太郎と原口も会場に訪れ、波乱の夜が幕をあける……。

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