阿部寛「加賀恭一郎は大切な役」『新参者』シリーズがついに完結

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主人公・加賀恭一郎役を演じた阿部寛
主人公・加賀恭一郎役を演じた阿部寛

阿部寛松嶋菜々子を絶賛「鬼気迫る演技は役者というもの、演じるということを超えていた…」】

――今回事件の鍵を握る浅居博美を演じられた松嶋菜々子さんとは初共演。印象は?

すばらしい女優さんでした。現場でそんなにお会いすることはなかったのですが、色んなお話をさせて頂きました。今回、この博美という役をやってくださったこともそうですし、この作品で出会えてよかったな、と思いました。心でお芝居をされるかたで、シーン自体は“気負うようなシーン”でしたが、いい意味で力が抜けていて自然にはいってくる方だなと、驚きました。また違う作品でもご一緒したいですね。

――松嶋さんとのシーンで印象に残っているところは?

最後、明治座の演出家室の狭い空間で行われたシーン。このシーンでは松嶋さんがリハーサルから涙をながしている場面のお芝居が印象的でした。もうひとつは、加賀と博美が出会う剣道場のシーン。稽古中の生徒たちを挟んで、向こう側から歩いてこられる松嶋さんの姿がすごく印象に残っています。歩いてくる松嶋さんの姿にもこの作品に対する覚悟のようなものが感じられました。それから、僕との共演のシーンではないのですが、後半に出てくる松嶋さんと小日向文世さんのシーン。あの鬼気迫る演技は、役者というもの、演じるということを超えていたと思います。

――小日向文世さんと阿部さんは、久しぶりの共演でしたね。

はい。小日向さんとは『HERO』で共演して以来でした。『新参者』シリーズは、刑事物ですが親子も結構あって、「親と子」もひとつのテーマになっていると思います。“血”“親子”の関係というのは決して断ち切れないし、だからこそ、そこに愛憎や葛藤が生まれる。加賀も家族の問題を解決しきれないけれど、それでもそこに何か足跡を残していく。人は生きていくし、街は動いている……と。そして、それにぴったりの音楽が後押ししてくれています。特に小日向さん演じる父とその娘の二人が、二人の間でしか名乗ることが出来ないシーンは、父と娘がお互いがお互いを思う気持ちが表現されている素晴らしいシーンです。

――今回新キャストのかたも沢山いらっしゃいましたが座長として意識したことは?

キャストの方たちが、それぞれ限界に挑んで芝居をしているような印象を受けました。監督の演出力で追い込まれて、今まで見たことのないようなその人のお芝居がうまれるのを、側で見ていてわくわくしました。集中力がすごく必要になりますが、一緒にお芝居をしていて、非常に心地よかったです。

東野圭吾さんとのエピソードとメッセージ】

――『新参者』といえば、人形町。やはり思い入れは強いですか?

本当に皆さんあたたかくて、すごくお世話になりました。『新参者』シリーズは長いですから、離れることなく関係は続いていますね。今回も撮影前に皆さんへご挨拶をさせていただいたのですが本当に温かく迎えて頂きました。最後、福澤さんがタイトルバックで人形町の映像を入れていて、そこで今までのお返しの気持ちを表現できたのはすごくよかったですし、僕自身もあの映像をとても気に入っています。『新参者』に帰ってきたんだな、って思いますし、ご覧になった方も、同じ気持ちになるんじゃないでしょうか。

――原作には、ドラマのようなコミカルなシーンはないと思いますが、あれは、阿部さんの提案で?

ドラマが日曜劇場の枠でしたから、ちょっと力の抜けるシーンがあった方が良いなと思ったことと、加賀という人間は頭の中で捜査をする人間なので、捜査とは違ったところで人間味を出したほうが、この刑事の怖さというのが引き立つんじゃないかなと思い演出の方と相談して決めました。ちなみに加賀が、鯛焼きを買うために行列に並ぶというのは面白いと思ったので僕が提案しました(笑)。

――この完結作の撮影期間や完成後、東野圭吾さんとはお会いになられましたか?

はい。現場も観に来てくださったり、取材も一緒にうけて頂いたり、それから映画の公開日にも劇場に来てくださいましたので、何度かお会いしました。この映画を気に入って頂けたようです。

――シリーズの続編のお話は?

原作の加賀は若いでしょう? 最初に書かれたのは32年前(※)で、小説の中だと加賀はそれほど年を重ねていかないから、僕が演じたことによってそこを悩まれていたみたいで。加賀を書くときに、どうしても僕の顔が浮かんじゃうのが悔しい……と、おっしゃっていました(笑)。

※加賀恭一郎は1986年の東野の『卒業』で国立T大学に通う大学生として初登場。

――最後にメッセージを

映画館で観た方も、観てない方も、ご覧いただけたら嬉しいです。非常に感動的で、シリーズの中で一番泣ける作品だと思います!

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