よく街頭インタビューを受けるのですが今まで一度もオンエアを見たことがありません。先日はインターネットTVとやらに「港区女子についてどう思いますか」と聞かれたので「全力でこの世には不要だと思います」と応えたのですがその後不明。
今回は『義母と娘のブルース』(TBS系・毎週火曜22:00〜)に主演する綾瀬はるかさんについて。美しい、可愛い、愛おしい。もうどんな言葉を並べても彼女には追いつかないと思っています。33歳にして日本を代表する女優さんが、本作では、土下座をデフォルトとする元・キャリアウーマンに。
■綾瀬はるかとは説明不要の美しさと可愛らしさを携えた最高級品種だと思う
光友金属のスーパー営業マンだった岩木亜希子(綾瀬)は小学校3年生の娘・みゆき(横溝菜帆)を持つ宮本良一(竹野内豊)と結婚。専業主婦となる。仕事一筋で生きてきた亜希子は慣れない家事に奮闘しながらも義母として役目を果たそうと日々邁進。が、良一はがんを患い、余命宣告を受けてしまう。
『義母と娘のブルース』、今クールで個人的に一番好きな作品だ。原作、脚本、演者がすばらしいとドラマは楽しくなることを教えてくれる。スタート当初は亜希子と心を開かないみゆきとの攻防戦が見ものだった。それが回を追うごとに二人に親子らしき“距離感”が生まれる。
そして第5話の放送を終えた今、実は良一は不治の病を抱えていることが明るみに。亜希子との結婚はみゆきが良一の死後、一人きりにならないようにするための偽装結婚だったのだ。が、主婦業に対しても営業マン時代と同様に真面目に向き合う亜希子に良一は心惹かれ始める。そして第5話では改めてプロポーズ。
良一「もしガンが治っても一緒にいてくれませんか?」
亜希子「こんな奇跡のような“受注”があって良いものかと」
このへんで観ている側はニンマリが止まらない。そう、ベースはコメディ、そこに家族愛、ヒューマン、ビジネスに加えてそのうちラブストーリーも入ってくる贅沢なドラマなのだ。これがいいテンポで1時間に組み込まれてくるので飽きることがなく、先述のように今クールで夢中になっている。さすがの火10枠、やってくれるぜ。
そして主人公・亜希子を演じるのが綾瀬さん。元キャリアウーマンで、現在は一人娘を持つ専業主婦。常に白シャツに膝下丈のタイトスカートに銀縁メガネの真面目一辺倒、すべてをビジネス理論になぞらえて向かい合おうとする。
私の知識不足なのだろうか。“キャリアウーマン”という言葉から、艶っぽさがあってタワマンに住んでいて……という女性を想像してしまう。いや、お茶の間のお父さん方もきっとそのはず。でも亜希子のような実直さのみで、ありえない業績を残し続けていくタイプも微笑ましい。
第3話でみゆきの通う小学校で、よくあるマウンティングのPTAの揉め事があった。その件を校長から咎められると
「子どもは親が嫌われるようなことをしたら、自分も嫌われると思っている。親は子どもが嫌われることを怖れて、言葉を飲み込み、陰口でうさを晴らす。
その背中を見て育った子どもは思うでしょう。長いものには巻かれればいい、強い奴には逆らうな。本当のことは影で言うのが正しいんだ。
だって大好きなお父さんとお母さんがそうやっていたんだから。
私ごとで恐縮ですが、私はそんな背中を大事な一人娘に見せたくありません」
と、亜希子。全親に見せたかったシーンだ。うっかり「微笑ましい」なんて上から目線で書いてしまったが「大変勉強にさせてもらっている」に訂正。
その綾瀬さん。もう説明不要の可愛さと美しさを秘めている女性なので何かをいうのがおこがましい気分になる。でも今回の作品を見ていて思うのは改めて“役が綾瀬はるかに憑依してくる”ということ。けして“何を演じても綾瀬はるか”なのではなくて、毎回違う顔を見せてくるのが彼女の魔法なのだと思う。
演技力もパーフェクトならビジュアルも一線級。それも造形美だけではない、内側からの可愛さも相まる。各所での天然ぶりは有名だけど、私が彼女の内面にグッときたのは2013年放送の紅白歌合戦。被災地の復興を願ってコメントする場面で涙が止まらなくなり、そのまま『花は咲く』を歌う綾瀬さんがいた。そして年末ギリギリで涙が止まらなくなった人がもう一人、そう私。すみません、泣き顔は汚かったと思いますが。いや、全国民が泣いていたはず。
あの涙は「可愛い子はグチャグチャに泣いても可愛いよね」という一般論だけで済まされるものではなかった。綾瀬さんの純度の高さあってこそ、だったと私は思っている。
さて『義母むす』。みゆきも「ひとつご提案があります」と義母に似てきた。そして良一のことが愛しくなってきた亜希子もいる。後半戦に突入しても、このまま視聴率は2桁をキープしたままで行きそうだ。そう、きっと亜希子さんのビジネス戦略はハマった。
(文・スナイパー小林)
■8月14日(火)放送から第2章がスタート!『義母と娘のブルース』第6話
小さな奇跡を拾い集めながら暮らした宮本家の みゆき (上白石萌歌) は、“お母さん”“みゆき” と呼び合い、箸使いと姿勢はビジネスの基本スキル、とりあえず押さえておけという 亜希子 (綾瀬) の教えを守り、教師からも一目おかれるような高校3年生に成長していた。ある日、スーパーで働くママ友の 晴美 (奥貫薫)からお買い得情報が入り買い物に行った亜希子は、みゆきの大学進学に関して聞かれる。大学は青春を謳歌するために行くのだから受かったところで良いと考えていた亜希子は、「今は将来何をしたいか、そのためにどこに行ったらいいのか考えて受験する」 と晴美から諭される。
一方、みゆきは、いい大学に受かれば亜希子が喜んでくれると信じ、そのためにもいい大学を受験しようと気持ちは逸るのだが、テストの成績は伸び悩んでいた。晴美の勧めもあって、亜希子はみゆきが自分の将来についてどのように考えているのか、どんな仕事に就きたいと考えているのか聞いてみると 「できればお母さんのようになりたい」 と言うみゆき。
それは、昔の亜希子の姿でもある企業の営業職かと思いきや、現在亜希子がしているデイトレードのことだった。親は子どもを温かく見守ると思っている亜希子は、貯蓄をベースに不足分を投資のリターンで補う形で暮らしてきたのだが、それはみゆきにとっては、楽して儲けていく道があると錯覚させてしまっていたようだ。それに気付いた亜希子は、仕事の尊さをみゆきに分かってもらおうと、一念発起し再就職をすることを決意。その就職先は……。