石原さとみ主演『アンナチュラル』の魅力をひも解く

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現在、第6話まで放送が終了している連続ドラマ『アンナチュラル』(TBS系、毎週金曜22:00~)。初回視聴率12.7%からスタートした本作は、多少の上下動はあるが、安定した数字をキープし、今クールのドラマのなかでも、高い評価を得ている。法医学をテーマに、人の生死に深く切り込んだ本作の魅力を、脚本家の野木亜紀子氏および、プロデューサーの新井順子氏への取材を元にひも解いてみる。

『アンナチュラル』は、石原さとみ演じる法医解剖医・三澄ミコトが勤務している不自然死究明研究所(UDIラボ)を舞台に、「不自然な死の裏側には、必ず突き止めるべき真実がある」という信念のもと、ミコトをはじめ、同じく法医解剖医の中堂系(井浦新)、記録員の久部六郎(窪田正孝)、臨床検査技師の東海林夕子(市川実日子)ら個性的なメンバーが活躍する1話完結の物語だ。

前半戦は、UDIラボに持ち込まれた事件を解決していくなかで、ミコトや久部、中堂のバックヤードが少しずつ描かれていくという展開になっているが、野木氏は、それぞれのキャラクターの裏設定(映像化されていない部分の履歴書的なもの)は膨大にあると語っている。

こうしたキャラクターたちの多面的な人物像が、後半に向けて絡み合っていくことにより物語に大きな深みを与える。特に注目すべきは、過去に大きな心の傷を負ってしまった出来事という共通点を持つ、ミコトと中堂の関係性、そしてそれを、客観的を装いながらも主観的に観察している久部の存在だ。

1話完結というシンプルな展開は、視聴者にとって非常に観賞しやすいという一方で、前述したように、登場人物のバックヤードには大きな闇が潜んでいるため、いい意味でモヤっとさせられる。6話以降、こうした闇が何層にも絡まって、物語に大きなうねりをもたらすことは想像できるが、野木氏は「思わぬ人物がカギを握ることになります」と期待を煽る。

法医学をテーマにした社会派ミステリー&サスペンスとしての面白さは言うまでもないが、こうした深い人間物語も人気の秘密なのだろう。新井プロデューサーは「ドラマの視聴者層というのは女性が多く、ターゲットにするというのはセオリー。ドラマ好きのF3層(50代以上の女性)以外にもF1層(20~34歳)やF2層(35~49歳)、さらにはM3層(50代以上の男性)からも支持していただいています」と幅広い層でドラマが観られているという。

このデータが示す通り、本作は非常にバランスが良い。前述したように、法医学を絡めて社会派のテーマは、幅広い層の知的好奇心を刺激し、さらに登場人物の持つ深い闇も、誰しもが身近に感じる“命”に寄り添っており、感情移入しやすい。さらに、個性的なキャラクターを演じるキャストたちも、演技派俳優たちがそろい、物語に重厚感を与えている。

新井プロデューサーいわく、井浦のインスタグラムはドラマの開始と共にフォロワー数が2万人以上も増えたという。もともと、実力派俳優として高い評価を受けていた井浦だが、地上波連続ドラマの影響力の高さを物語るエピソードだろう。

主人公の石原は、ドラマ開始前「脚本ありきの作品に出演したかった」と本作出演に意欲を見せていた。野木氏も、ミコトという役は石原をあてがきしたと言っており「これまでフェミニンな役柄が多かった石原さんですが、実際お会いすると、とてもサバサバしている部分を持っていて、石原さんの違った一面を魅力的に表現できる役柄」と語っていた。その言葉通り、劇中のミコトは、多面的な感情を媚びることなくストレートに伝える魅力的なキャラクターになっている。

登場するキャラクターに深みがある作品は、それだけで視聴者を惹きつけるが、それにプラスして、ストーリーとしての面白さもある『アンナチュラル』。6話以降、それぞれが抱える闇が、“命”というテーマに収束していくダイナミックな展開が予想されるだけに、ますます目が離せないだろう。

(文・磯部正和)

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