東山紀之「蜷川幸雄さんに見て欲しかった」SPドラマで松たか子と初共演<コメント全文>

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東山紀之松たか子が、石井ふく子プロデュースのドラマ特別企画『ふつうが一番 -作家・藤沢周平 父の一言-』(TBS系列、今夏放送)で初共演。東山から、ドラマへの意気込みと共に、12日に亡くなった演出家・蜷川幸雄さんに対するメッセージが寄せられた。

本作は、直木賞作家・藤沢周平と家族のふれあいを、エッセイストである実娘・遠藤展子の目線でとらえたヒューマンタッチの物語。東山演じる藤沢が、小菅留治の本名で小説家になることを夢見ながら「食品加工新聞」の記者として勤めていた昭和38年頃、一人娘の展子を残し妻に先立たれ、母・たきゑと慎ましく暮らしていた時代から、松演じる後妻・小菅和子との再婚、そして昭和48年に直木賞を受賞するまでの家族との日々が描かれる。脚本は、水谷豊主演のスペシャルドラマ「居酒屋もへじ」ほか、市川染五郎主演の映画「蝉しぐれ」など、映画監督としても知られている黒土三男。演出は「渡る世間は鬼ばかり」など様々なヒットドラマを手掛け、モンテカルロ・テレビ祭最優秀作品賞受賞作品「塀の中の中学校」ではプロデューサー・演出も務めた清弘誠が担当する。原作は、展子の「藤沢周平 父の周辺」(文春文庫刊)、「父・藤沢周平との暮らし」(新潮文庫刊)。また、周平の母・たきゑを草笛光子が演じるほか、角野卓造、佐藤B作、前田吟といった演技派俳優が決定している。

主演の東山は「藤沢先生はとても偉大な作家。俳優であれば先生の作品を一度はやってみたいと考える方が多いと思うので光栄です。本作は、和子さんという素晴らしい奥様に恵まれて直木賞を受賞されてから、作家活動がますます隆盛になられたという物語。僕も松さんのお力を沢山いただき、良い作品にするよう努めます」と意気込みを語る。また、松は「結婚を申し込まれる長いシーンのリハーサルの時、東山さんと向かい合ったら、スッとセリフが出てきた瞬間がありとても不思議でした。ご一緒している時の空気が滑らかで、安心感がありました。家族のシーンが温かく、喧嘩することがあっても直後に笑いあえるような素敵なドラマに関わらせていただき幸せです」と、東山との共演の感想を述べた。

石井プロデューサーは「今、いろいろなドラマがございますが“ふつう”が一番難しい。“ふつう”の中に何があるのか……。家族、兄弟、親戚といろいろなことが起こります。藤沢さんは、和子さんに結婚を申し込んだ時もの凄く反対されるんですが、彼女への本当の想いをお義父さんに伝えるため、仕事の小説を書かなくてはいけない時に送った100通ものラブレターを見せてお願いするんです。そんなエピソードを盛り込み、遠慮なく話す夫婦、遠慮なく喧嘩もする、そんな家族のドラマを皆さんにご覧いただきたいと思います」とドラマを紹介。また、東山と松にどうしても出演して欲しく、今回は3年も待ったという石井プロデューサー。「私はしつこいですから(笑)。やっと実現できましたので、共演にも草笛さん、角野さん、篠田三郎さん、前田さんなど豪華なメンバーにお願いしました」と語っている。

そんな中、東山からは、蜷川さんへのコメントも届いている。全文は以下の通り。

――蜷川さんからは、自分でできそうもない、割と不可能に近いものを題材として渡されるんです。それをどう演じさせるか考え、指導して、叱咤激励しながら僕ら演者のステージを引き上げてくださる方でした。若手の俳優や僕もそうだと思いますが、役者としての生き方に自問自答している人たちが多い中で、蜷川さんはその答えを演劇というものを使って導いてくださった方だと思います。

蜷川さんは僕の作品を本当によく見ていてくれていて「あれ見たよ、良かったよ」というような言葉をかけてくださいました。松さんとも話していたのですが、今回の藤沢先生の役もきっと喜んでくださっていると思いますし、天国でダメ出ししながら見て下さると思いますので、これからは今まで以上に全てに真摯に向き合い、気を引き締めて邁進していきたいと思います。

藤沢先生の役を演じさせていただくというのは、僕が蜷川さんに気持ちを引き上げていただいたのと同じように、この役を演じることでさらに視野が広がっていくのではないかと思っています。できればその辺りも蜷川さんに見ていて欲しかったし、目と目を合わせて指導して欲しかったです。

蜷川さんから「ヒガシ、おまえ情緒がないんだよ、情緒が…」と言われたのを強く覚えています。舞台で演じた役柄が死に向かう時の芝居で言われた言葉ですが、それ以降はどんな作品に向き合う時も「情緒とは?」ということを考えて演じるようにしています。その後、蜷川さんの舞台で演じたのは女性の役だったのですが「女性を演じるときは男性のようにやれ」ということも教えていただきました。そういう発想は僕には全くなかったのですが、そうか……だから「女々しく」「雄々しく」とか、「猛々しく」という言葉があるのかということも気付かせていただきました。 これからも蜷川さんに残していただいた言葉をヒントに、さらに励みたいと思います。

僕だけでなく、蜷川さんにお世話になった同じ事務所のタレントたちは、ジャニーさんと蜷川さんとの友情の中にいるので、お二人の友情のためにも僕らはますます学んで、どうやったらお客さんに喜んでいただけるかということを常に探し続けることが使命だと思っています。その使命に気付かせて下さった方が蜷川さんだと思うので、これからもずっとその使命を貫くことを大事にしていきたいと思います。

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