ドラマ・舞台でひっぱりだこ! 個性派女優・小林きな子の「チャレンジ精神」

公開: 更新: 読みテレ
ドラマ・舞台でひっぱりだこ! 個性派女優・小林きな子の「チャレンジ精神」

人生が楽しくなる幸せの法則」(木曜よる11:59放送中)は、同じ職場で働く3人が“ちょうどいいブスの神様”から助言を受けながら幸せを目指していくという笑いあり涙ありのラブコメディードラマだ。
人の粗探しをして悪口を言う“開き直り女子”の皆本佳恵役を演じているのが女優の小林きな子さん。
これまで数々の舞台、ドラマ、映画で幅広く活躍、どんな作品に出演しても一癖も二癖もある演技を披露して存在感を放つ名バイプレーヤーのきな子さん。舞台でのたくさんの経験に裏打ちされた髙い演技力、表現力で多くの視聴者を魅了している。
今回、「読みテレ」はそんな小林きな子さんにインタビューを敢行。今回のドラマの話から女優という仕事の話、プライベートの話まで、いろいろな話をお聞きすることができた。

【聞き手/文:下田和孝】

◆「開き直り女子」佳恵役に共感!

―今回、「人生が楽しくなる幸せの法則」で演じている「開き直り女子」の佳恵はどんな女性ですか?演じていて共感できる部分はありますか?

「共感しかないですね(笑)。私も人の悪口をいっぱい言っちゃいます(笑)。自分で言うのもなんなんですけど、顔が穏やか、とっつきやすい、ファンシーな感じと言われて、悪口を言わなそうと思われがちなんですけど、意外と言っちゃうんですよね(笑)。佳恵が自分の事は棚に上げて人の事を悪く言っている気持ちもわかる気がします。でも、ダメな男(バンドマンのだめんず彼氏のたっつん)に貢いでいるのはちょっと…。財布から本物の5万円を出して渡すシーンがあったんですけど、芝居だとわかっているのにすごく辛くて…。やってみるまでわからなかったんですけど、男性にお金を渡すってこんなに悲しいのかと思いました。こうでもしないと繋ぎ止めておけないんだと思ったら猛烈に悲しい気持ちになりましたね。浮気も信じたくないというか、気付いているんだけど、言っちゃったら離れていくだろうと思って見て見ぬふりをして…。だから佳恵は乙女の部分がいっぱいある女性だと思いました」

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―共演している「自己表現下手くそ女子」彩香役の夏菜さん、「融通の利かない女子」里琴役の高橋メアリージュンさん、原作者でちょうどいいブスの神様役の山﨑ケイさんら共演者たちの印象を教えて下さい。

「夏菜ちゃんとメアリージュンちゃんはお2人ともお顔は女性らしいけど、どちらかというとサバサバしていて、男の子みたいな感じです。すごくとっつきやすくて、話しやすいですね。女性特有の嫌なベタベタ感がない。一緒にいて丁度良いなと思いますね。夏菜ちゃんは皆を引っ張ってくれる感じがします。すごく周りを見ていて、現場は撮影シーンがいっぱいあって、タイトなスケジュールなんですよ。撮影が始まる時、スタッフさんが俳優を呼びに来てくれるんですけど、呼びに来る前に夏菜ちゃんが『もう行こうか』『始めよう』って率先して言ってくれて…。座長に向いていると思います。ケイちゃんはセリフが多いのにすごいんですよ。まとめて1日で2話分くらい神様のシーンを撮るんですけど、セリフを全部入れて現場に来るんです。ドラマは独特な言葉があるんですけど、『え、白味?知らない。何ですか?』って…。教わったら『白味か~』って嬉しそうにしていました(笑)。ケイちゃんは女性らしいかわいさがあります」

―夏菜さん、メアリージュンさんとの掛け合いのシーンが多いですが、演技について話し合う事はありますか?

「事前に『こうしたいね』という話はせずにテストをやってみてですね。監督から演技の説明があって『わからないけど1回やってみます』という風にセッションみたいな感じでやって、自分たちで『もっと、こうやろうかな』って考えて…」

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◆自らチャンスを掴んで女優デビュー!?

―きな子さんが女優を目指したきっかけを教えてください。

「高校を卒業して就職していたんですけど、そこを辞めるぞって時に母親が『こんなのあるよ』って演劇の学校が開校しますってチラシを持ってきて、勧めてくれたのが最初です。仕事を辞めようってならなかったら女優になってなかったかもしれないですね。母親は元々演劇が好きで、今でもお芝居を1人で観に行っているんです。私も高校の時は演劇部だったので、お芝居するのは好きだったんです。でも、仕事になるとは思っていませんでした」

―高校卒業後、劇団に入ろうとは思わなかったんですか?

「ないですね。両親が就職してほしかったみたいで、あまり裕福ではないというか、大学に行かせられる程の余裕がなかったんです。あと、動物が好きなのでトリマーになりたいと思ったんですけど、専門学校もお金がかかるから『なるべく就職してくれない?』と言われて、それで就職しました。働いたのは2年くらい。20歳の時に仕事を辞めて、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが1年間教えてくれるという演劇のスクールに行きました。その時、働いて貯めていたお金を学費に使いました。そのスクールは(先生に)KERAさんもいたし、松尾(スズキ)さん、キャラメルボックスの成井豊さん、新感線のいのうえひでのりさん、平田オリザさん、花組芝居の加納幸和さんとか、とにかくすごい方たちがたくさんいて…。開校した年なので気合が入っていたんでしょうね」

―そこで学んで女優になりたいと思ったんですか?

「そんな真剣には考えていなかったです(笑)。なんか楽しいし、バイトしながらやっていました。あまり重くは考えていなかったですね。なかなか仕事になる人って少ない気がするんですよ。やっていく内に何となくご縁があって、収入に繋がったような印象です」

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―たくさんある芸能事務所の中から大人計画を選んだ理由は?

「オーディションを受けて入ったわけではないんです。松尾さんの演出も宮藤さんの演出も受けた事がなくて…。事務所、社長にお世話になっていると言いますか…。でも、劇団の中で一番好きなのは大人計画だったので舞台は観に行っていました。受付とか、お手伝いに行っていた時期もありました」

―お手伝いをして、そこから「出てみない?」と声をかけられたんですか?

「そんな素敵な話じゃないです(笑)。事務所に入りたいと思って、どうしようかなと思っている時、お芝居を観に行ったら、たまたま隣の席に大人計画の社長がいらっしゃったんです。お手伝いとかに行って、何となく面識があったから『何かお仕事紹介してもらえませんか?』って思い切って言ってみたら、今に至るというか…。26歳くらいの時ですけど、嬉しかったですね。今でも夢みたいです。

◆刺激を受けたのはアノ大女優?

―舞台で活躍した後、ドラマや映画の仕事も増えていきましたが、女優人生を通して転機になったような作品はありましたか?

「転機かどうかわからないですけど、ドラマ『怨み屋本舗』(2006年)でストーカーの役をやらせて頂いた時に『ベッドシーンみたいなのがあるよ』って言われていて、最初は胸の上の所くらいまで、お布団をかぶるくらいまでって言われていたんですけど、行ってみたらブラジャー、パンツ姿で相手の男性を部屋の角に追い詰めるみたいなシーンになっていて…。そうなる事は抵抗がなかったんですけど『あっ、靴下履きたい』と思って…。ブラジャーとパンツの人が靴下を履いていたら、ちょっと滑稽なんじゃないかなと思った時に監督に相談したら『全然良いよ』と言ってくれて…。自分から『ああしたい』『こうしたい』ってどんどん提案して良いんだなと思ったら、お芝居がすごく楽しくなりました。受け身のままじゃなくて、それからは、なるだけチャレンジ精神で『こうやってみたいです』と言うようになりましたね」

―これまで刺激を受けた共演者の方はいましたか?

「いつも刺激的だなってお会いする度に思うのは泉ピン子さんです。ちょっぴりきつい方、怖い人って思われがちじゃないですか?2時間ドラマで10年くらい毎年1回お会いしているんですけど、厳しくする裏にものすごく愛情があって、ただ怖いだけじゃないんです。愛があるから、強めに言って下さるんだと思います。たとえば、助監督の方が急いでいて、俳優さんの誰かを押して誘導しようとしたんですよ。そしたら、『あのね、ものじゃないんだから失礼でしょ』って言って下さって…。『あっ、守って下さっているやさしい方だな』って…。お芝居でも、私が駆け込んできて、ピン子さんに何かを言うシーンの時、まだ若かったので大きくやったらおもしろいだろうと思って演じていたら『何だ、その芝居は!おもしろくしようとしているでしょ?それじゃダメなんだよ』って教えて下さって…。アドリブも本当におもしろくて、お会いする度に素敵な方だなと思っています」

―役を演じるうえで、ドラマ、映画、舞台の違いを教えて下さい。

「舞台って舞台上のパーソナルスペースが守られているんですよ。絶対に関係のない人は入ってこないじゃないですか?でも、ドラマや映画を撮っていると、すごく近くにカメラがあったり、目線の先に色んな人がいたり、それが最初は慣れませんでした。目の前に相手がいるようにカメラに向かって演じる時もありますし…。だから映像の方は集中力がすごいなと思います。演技する事に関してはそんなに違いはないのかもしれないです。ドラマ、映画の方が自然にできますよね。舞台はやっぱり大きい声を出さないと届かなかったり、ずっと後ろ向いているワケにもいかないから何となく気持ち体がお客さんの向いていたりと意識するので…。あと、ドラマはカット割りがあって、何度も同じ芝居をするじゃないですか?それが大変だろうなと思います。私はそんな上手にできないですけど、何回も新鮮な気持ちでやれるってすごいですよね。何度も泣くシーンもありますけど、涙って水分なのでいつか出なくなっちゃうじゃないですか?最初が一番出ていると思いますね。結局、舞台も毎日公演はありますから何度も同じ事を繰り返している。だから新鮮な気持ちでやるって大変な事だと思います」

―ドラマの時は撮影前にスイッチを入れるのですか?

「そんなに器用な方じゃないので、たくさん泣かなきゃいけない時とかはなるべく始まる前にイメージして集中しないとダメですね。さっきまでゲラゲラ笑っていたのに『スタート』って言うとわーって泣ける女優さんがいらっしゃるんですけど、あれ、どうなっているんだと思って…。人によってアプローチは違うと思うんですけどすごいと思います。今回の役に関しては自分との境い目があまりないのかもしれない。だからスイッチを入れなくても大丈夫かもです」

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―オフの時はどのようにお過ごしですか?趣味や気分転換にしている事はありますか?

「最近はあんまりしないように気を付けているんですけど趣味は歩きビール(笑)。親が知ったら絶対に怒られると思うんですけど…(笑)。冬場はしないんですけど、夏場は夜、駅から家までの間に350mlを1缶、途中でベンチがあったら座って…。外で飲むのは気持ち良いんですよ(笑)。ビアガーデンに1人で行くのもちょっと嫌だし、そう思って行きついたのが歩きビールなんです。比較的人気のない所でやります。あと、上手にコンビニの袋で隠して、横にどっちに人が来ても良いように…。」

◆印象に残っているのは3人が感情むき出しにしてぶつかり合ったあのシーン!

―今回のドラマもいよいよ終盤ですが、これまでの撮影を振り返っていかがですか?

「共演者、スタッフとのチームワークはメチャメチャ良いです。最初に会った時、夏菜ちゃん、メアリージュンちゃんと3人で台本の読み合わせを監督としたんですけど、皆ちょうど良い3人が集まって、その時点で良い予感がすると思っていました。現場に入ってみたら、やっぱり似ているわけじゃないんですけど、それぞれの距離感がちょうど良くてバランスが良いんですよ。役の事だけじゃなくて、3人のバランスが良いですね」

―特に思い入れがあるシーン、印象に残っているシーンがあったら教えて下さい

「皆で泣くシーンですね。その時のセリフもすごく良くて…。夏菜さんが演じる彩香と私が演じる佳恵がフラれて、全然平気な顔をしているんですけど、メアリージュンちゃんが演じる里琴が『あんたたち平気な顔してるけど、本当は傷ついているんでしょ』ってすごい怒ってくれるんですよ。そしたら、彩香は『だってそういう生き方しかしてこなかったんですもん。辛い時は1人で泣いて…』って言うんです。ケイちゃんの方は撮っていないのに泣いちゃってたんですよ。メアリージュンちゃんのお芝居で、『自分に言われているかと思って』って…。その後にケイちゃんが泣くシーンを撮る時、『さっきいっぱい泣いちゃって涙でなくなっちゃいました』って…(笑)。佳恵にも響いたんですけど、私もケイちゃんと一緒で自分に響きました。彩香が言っている気持ちもわかるし、そういう風にしか生きてこなかったから甘え方もわからないし、怒ってくれる人もいなかったし、自分のために怒ってくれるってこんな心震えるものなんだって…。一番大好きなシーンでした」

―第5話で佳恵がたっつんへの未練を断ち切るために電話して別れを告げるシーンも良かったです

「あのシーンもやってみたら悲しくなっちゃって…。何テイクかしている時に涙が出てきて、すごく辛い決断だけど『今までありがとう』って言える佳恵がすごいなと思いました。自分は言えないし、昔の佳恵だったらそんな事しなかったと思います」

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―この作品は人生を楽しくするヒントがたくさん描かれていますが、撮影を通して学んだ事はありますか?

「いっぱい良いのがあるけど、その中でも『何とかしないブスより何とかするブス』。あれ、大好きなんですよね。『仲間を助けないブスより、仲間を助けるブス』。ゴミが落ちていたら拾えばいいじゃないとか、トイレットペーパーの芯が替えずにあったら次の人のために替えたらいいじゃないとか…。ブスをつけなくても良いと思うんですけど『やらない女性よりやる女性の方が良いよ』っていう考えはすごい。なるほど、良い言葉だなと思いました」

―ドラマは終盤です。視聴者に注目してほしいポイントは?

「今後の3人はチームワークというか、協調性を持って、かつ周りを見ながら自分はどうしたら良いのかを考えて行動する。自分の事だけを考えずにやさしさ、思いやりを持って、ちょっと余裕が出てきた3人が誰かのために何かをしたいって思うようになっていく。第1話の時の3人と比べると、すごく成長しているんですけど、まだ不器用なところがあるので、最後どこまで成長できているのかを楽しみにして頂きたいなと思います。視聴者の方々もこういう所あるなって、ちょっとでも共感できる部分を見つけてもらうと楽しめると思います」

仕事の話からプライベートの話まで、いろいろな質問に気さくに答えてくれたきな子さん。開き直り女子の佳恵と全く違うほんわかした雰囲気が印象的な方だった。ドラマと舞台を同時にやっていて多忙にもかかわらず、疲れを感じさせない充実感に満ちた表情は良いドラマを作っているという確かな手応えなのかもしれない。
ドラマ「人生が楽しくなる幸せの法則」の放送は残りあと僅か。果たして、自己表現下手くそ女子の彩香、融通の利かない女子の里琴、開き直り女子の佳恵は幸せを掴む事ができるのか!?今後の展開に注目だ。

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小林きな子 プロフィール
1977年生まれ 東京都出身
「家売る女」「東京ダラダラ娘」「トドメの接吻」など、ドラマ、映画に出演多数。
5月4日より舞台「家族のはなし PART1」(京都劇場)に出演。

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