『ダウンタウンDX』の前説を担当するコンビ・どりあんずにそのプレッシャーを聞いてみた

公開: 更新: 読みテレ
『ダウンタウンDX』の前説を担当するコンビ・どりあんずにそのプレッシャーを聞いてみた
© ytv

今秋、読売テレビ『ダウンタウンDX』が番組スタートから25周年を迎えた。11月15日の放送(木曜夜9時~全国ネット)では2時間スペシャルとして、人気コーナー『スターの私服』『視聴者は見た!』が復活する。

これまで、芸能人の私服をカタログ形式で見せる『スターの私服』では叶姉妹のゴージャスな私服が話題となり、芸能人の目撃情報を報告する『視聴者は見た!』ではスターの普段の様子が語られ、芸能トーク番組の定番をつくったともいえる同番組。毎回多彩なゲストが楽しいおしゃべりを披露するのはもちろんだが、なんといっても魅力なのは、それを笑いで何倍にも膨らませているダウンタウンのやりとりだ。浜田雅功の仕切りと、松本人志の繰り出す笑い。これが番組を支えてきたと言っても過言ではないだろう。

そんな笑いの天才がいる現場で、収録の前説を3年間担当しているお笑いコンビがいる。芸歴20年目の「どりあんず」だ。

 (1757)

前説とは、収録の本番前に観客に行う説明のことで、拍手のタイミングからスマホ使用を禁じる諸注意などを伝えるもの。同時に、若手芸人にとっては芸のアピール、腕試しの場でもある。「どりあんず」にとっては、ダウンタウンの前でトークを披露しなければならない“プレッシャー”の場だ。ボケの平井俊輔さんとツッコミの堤太輝さんに、そのあたりを聞いてみた。

前説のスタイルはダウンタウンイズムかもしれない

――やはりプレッシャーは相当なものですか?

平井「それはもう! ダウンタウンさんが裏で聞いてると思うと正直こわいですよ。僕らがしゃべった後にお2人が登場するので、パスを出すようなものですからね。いい感じで盛り上げて渡したいと思ってます」

――今、どりあんずは『DX』以外にも『水曜のダウンタウン』『プレバト!!』の前説もしていますよね。

堤 「一番多い時は年間250本の前説をしていました。けど、給料明細を見たら『あれ?』って感じなんですよね。これは考えなきゃと思って、そこから現場の空気を味わうための勉強の場として3本くらいにしぼってます」

平井「普通は前説って1年間で交代していくものなんですけど、僕らは『DX』を3年やってますからね。じっくり勉強させていただいてます(笑)」

 (1759)

――前説のコツってあるんですか?

平井「打ち合わせはしないようにしています。臨機応援に対応していこうと。おこがましいですが、そこはダウンタウンさんイズムかもしれないですね。お2人って楽屋は別々ですし、本番5秒前までいっさいしゃべらずに、番組が始まって初めて話し出すんですよ。僕らも噂では聞いてましたけど、『ホントにそうなんだ!?』とビックリしました」

堤 「あと、前説ってその時のお客さんのテンションにも左右されるんですよ。空気を読みながら、少しずつ上げていくのがいいのかなあと。時間の制約もありますしね。ある番組では、出て行った瞬間にスタッフさんからOK出されたこともあります。もう準備できたから引っ込めって」

平井「逆もあって、『DX』ではないですけど1時間以上やったこともあります。それ、ただのトークライブだろって(笑)。スタッフさんの『もうちょっとつないで』が5回くらい続いて」

堤 「普通は20分くらいで本番に渡すイメージなんで、そこへ向けてトークの山場を作っていくんですけど、さすがに1時間だと山を下って、また上を目指さなきゃいけないというのが何回も。鍛えられますよね」

 (1751)

――失敗ってあります?

堤 「本番で使うためにテーブルにドリンクが用意してあったんですけど、それを相方がブツけてバッシャーンとこぼしたことがありました。お客さんが『あ~あ……』の大合唱で、相方は『すいません!』と焦りまくりで」

平井「なにかおもしろいこと言わなきゃと思って、『泳ぎましょうか?』と返しました。全然ウケませんでしたね(笑)」

堤 「またそこから上を目指さなきゃいけないという……」

平井「ゲストの名前を間違えてしまったこともありました。前説ってゲスト表をもらうんですね。番組のスタイルにも寄るんですけど、『ダウンタウン浜田さーん!』とか言ってタレントさんを呼び込んだりする“呼び込み”をスタッフがやるパターンと、前説の芸人がやるパターンがあるんです。で、その番組は我々がやっていたんですが、『五月みどり』さんという文字がなぜか僕には『五木ひろし』さんと見えてしまい、『続いては五木ひろしさんでーす!!』と元気に」

堤 「五月みどりさんが『えっ、わたし??』っ顔に。失礼ですよ、ホント」

平井「以来、ゲスト表にはルビを振ってもらってます」

堤 「そういう問題じゃないから」

『ダウンタウンDX』の前説は、じつはダウンタウン…!?

――ところで『ダウンタウンDX』のスタジオって劇場みたいにカーテンが引かれているんですよね。

堤 「そうなんです。お客さんは入ってきても、まだセットは見えない状態。まずは、カーテン前に我々が出てきます。前説が終わってカーテンが開いたら、テレビ通りのセットが見えて、そこにダウンタウンさんが登場! そのライブ感が楽しいと思います」

平井「仮にお客さんのテンション100がMAXだとしたら、他の番組では前説で80くらいまで上げて本番に渡す感じなんですね。けど『DX』の場合は違います。90以上にしないとダウンタウンさんが出てきて、『あれ? 今日のお客さんテンション低くない?』なんて言いますから(笑)。ネタでわざと言うんですよね(笑)。ステージの袖でマズイと思って、僕らも「イエーイ!!」って声、張り上げてますからね」

 (1753)

――前説のことでお2人から何か言われたことってあるんですか?

平井「年に一回くらいですけど、浜田さんから『おまえら、今日はよかったんちゃうか』と言われたことがあって、その時はよかったーと嬉しかったですね。じつは、僕らがやってる前説って、ダウンタウンさんが登場してしばらくトークするので(※そのトークはオンエアでは放送していません。収録だけのお楽しみなのです)、ホントは前々説なんですよ」

堤 「この番組ってダウンタウンのお2人が前説してるようなもので、そこはものすごく貴重だと思います。観覧のお客さんも楽しみなんじゃないですかね、なに話すんだろうって」

 (1755)

――どりあんずが知ってる、松本さん浜田さんってどんな人ですか?

堤 「浜田さんは楽屋でゲストの方たちとしっかり交流してますね。『DX』には俳優さんやアイドルさんも出ますが、本番前はみなさんとても緊張してるんです。それをさり気なくケアしてる浜田さんをよく見かけます」

平井「松本さんはゲストに絶対にスベらせないぞって感じが漂ってますね。あと、お2人とも仲がいい(笑)」

――どりあんずの今後の目標は?

平井「それはもう『ダウンタウンDX』に出ることです」

堤 「25年間、この番組から人気に火が付いた人がたくさんいますからね。『どんだけぇ~!』のIKKOさんとか。何かが生まれる瞬間が観られるのが『DX』の魅力だと思います。次は、どりあんずの人気が生まれる瞬間をなんとかして」

平井「テレビ界には長寿番組が何本かありますけど、『DX』ってコンビが担当する長寿番組のトップなんじゃないですか? 僕らもコンビなので、この番組は夢であり目標です」

堤 「出演できたら前説は譲りたいと思ってます。若手芸人にとってダウンタウンさんの現場はみんな行きたい現場ですからね。でも、その現場を我々が見られなくなるのはもったいない。譲りたいけど、やっぱ譲りません」

平井「若手からすると、あんたら、いつまでやってんねんでしょうね(笑)」

どりあんずプロフィール
同級生だった平井俊輔と堤太輝が高3でコンビ結成。卒業後の1997年に、吉本興業主催の東京ドームでのイベントに参加。その後、吉本興業福岡事務所の9期生となる。福岡吉本の1期生には博多華丸・大吉がおり、先輩にパンクブーブー、バッドボーイズがいる。2004年に、東京本社に移籍。現在は、ライブ・テレビ出演と活動中。


【取材・文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
鈴木しげき 放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。

PICK UP