万事解決?本末転倒?大阪IRのインバウンド期待はリスクか?リターンか?

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万事解決?本末転倒?大阪IRのインバウンド期待はリスクか?リターンか?

それって良い事?リターンとリスク徹底検証SP(全編公開)【そこまで言って委員会NP|2021年9月19日放送】

リスクか、はたまたリターンか?暗号資産から北方領土、芸能人夫婦の離婚まで、リスクとリターンをめぐる議論は様々だ。

大阪のIRもそのひとつ。横浜市長選でIR反対派が勝利し、IRに手を挙げているのは長崎県、和歌山県と大阪府市の3カ所になった。大阪ではオリックスとMGMリゾーツ・インターナショナルの連合が1兆円規模のIR整備計画を発表。それを軸に、IRによる大阪経済の底上げへの期待が高まっていた。一方、コロナ禍で世界中のIRは業績が悪化。MGMの経営悪化で大阪IRも開業時期は未定になった。

そこで9月19日放送の「そこまで言って委員会NP」では、「リターンとリスク徹底検証スペシャル」と題して、まずインバウンドのリターンを期待した大阪のIR誘致計画に賛成か反対かを委員会メンバーに聞いた。

結果は賛成6名、反対2名で賛成の方が多いようだが、よくよく聞くとそう単純でもないようだ。

元裁判官で国際弁護士の八代英輝氏は「大阪の復興にはずせない。夢洲はなんとかせねば。」と賛成の理由を述べた。

一方、作家の竹田恒泰氏も賛成派のはずなのだが「インバウンド前提がちょっと危うい」と懸念から論じる。「大規模な会議場、展示場、ホテルやお店、それだけだともたないのでカジノを持ってきて全体で帳尻が合うのがIR。観光客は行くのか?ミナミや黒門市場に行きたがるのでは?」とインバウンド効果への期待を危ぶむ。

経済ジャーナリスト井上久男氏も賛成を掲げていたのだが「地下鉄延伸の費用もIR事業者が負担する当初の話なら賛成。関西に付加価値をもたらすので。だがデメリットもある。中国人観光客がたくさん来ることになり中国依存経済のひとつになってしまうのではないか。」と懸念を示した。

元々反対としていた経済ジャーナリスト・須田慎一郎氏が続く。「IRはインバウンドが目的ではなかったはず。大阪は日本第二の都市なのに地盤沈下しつつあり、足りないものが国際会議場や展示場。それだけでは儲からないので埋めるのがカジノ。観光客誘致のためではない。」

さらに須田氏は「カジノで大金を使うのは“ハイローラー(富裕層のプレイヤー)”、そういう人たちは“ジャンケット(カジノと契約し富裕層の誘客などを行う)”が呼ぶがそれを確保できるかの問題もある。大阪府知事や市長はは当初の目的を忘れて志が低すぎやしませんか。」と手厳しい。

反対論が続いた中、元衆議院議員の金子恵美氏は「国際会議場や展示場は重要。日本には少ないので大きな展示会がかなり韓国に流れている。大阪には雇用の期待もありグローバルな観光人材の育成もできるなど様々な目的がある。」と賛成側で頑張る。

これに日本チャップリン協会会長・大野裕之氏が違う角度で支援する。「IR=カジノがどうかと思う。ラスベガスでは世界レベルのショーが集まって素晴らしい公演をしており、自分はカジノに行ったことがない。そういう所は日本になかった。IRは、昼に会議をして夜は他のことを楽しむのがセット。大阪にIRができれば京都や神戸、奈良などの文化的バックグラウンドがある。各地に足を運べるのでその真ん中の大阪に作る意義はある。」空気を変える意見が新鮮だった。

そこに落語家・立川志らくが斜め上から割り込む。「IRの目玉はカジノ。だが日本にはもともと公営ギャンブルはたくさんある。これ以上必要か?カジノができたら私は行きますけどね。」反対を掲げているのにどっちかわからなくなってきた。

さらに「欧米の人は本格的なカジノは堪能してきて小規模にやっても来ないのでは。やるなら日本独特のオイチョカブやチンチロリン、丁半博打を流行らせるべき。そっちのほうが欧米人は来る。」と議論をさらに掻き回す。

すると竹田氏が「丁半博打はハイローラーに人気が出ると思う。ルーレットは少額しか使わないがバカラだと二択で燃える。百畳間でさらし巻いたお兄さんが出てきて『張った張った張った!ピンゾロの丁!』とか言えば盛り上がる!世界中から来ますよ。」とテンションが上がりまくって議論がさっぱり見えなくなった。

最後に信州大学特任教授・山口真由氏が「万博にも期待。70年の万博は未来が見えるとみんなワクワクした。大阪からワクワクさせて欲しい。空飛ぶタクシーをやると聞いている。」となぜか万博への期待をキラキラ語るのだが、政策秘書・野村明大が「山口さん過大に期待しすぎでは?」と塩対応で終わった。

丁半博打はともかくだが、IRをめぐる議論の複雑さはよくわかった。そしてどうやら、インバウンドは当初のIRの目的ではなかったのは確かなようだ。この際、インバウンドへの期待は置いといてIRを議論すべきではないだろうか?欧米の人々がチンチロリンを楽しむ姿はちょっと見てみたいとも思うが。

【文:境 治】

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