テレビにも拍手を! 影山貴彦のウエストサイドTV

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テレビにも拍手を! 影山貴彦のウエストサイドTV

 先日、ある音楽ライブに出かけました。関係者の方々がコロナ対策に可能な限り力を注いでいることはもちろん、観客のみなさんがとてもマナー良く鑑賞していた様子に感心しました。ライブエンターテインメントを心ゆくまで楽しめる時が早く来て欲しいと強く願っているひとりですが、こうして送り手、受け手の双方がしっかりと対策を講じることで、なんでもかんでもNGという空気感が少しづつ変化を遂げつつあると信じたいですし、そういう流れにもっとなるべきだと思います。エンターテインメントは私たちの生活、いえ人生にとって、必要不可欠なものなのですから。

お目当てのミュージシャンが登場すると、ファンとしては声援を送りたいところ。でも、今はそれも我慢の時。いささか寂しいです。でもその代わりに、精一杯の拍手でファンの思いを届けるのです。拍手っていいものですね、コロナ社会になって改めて気づいたことです。
「みんな~、元気ですか~?」「パチパチパチ!」
「会いたかったよ~」「パチパチパチパチ!!」
「一緒に盛り上がってくれますか~?」「パチパチパチパチパチ!!!」
 心を込めて手を叩く。単純な動作ですが、声に劣らない熱さが伝導するのが分かります。

 映画も好きなものですから、密を避け、映画館に足を運ぶことも多いです。出演者などが舞台挨拶する試写会や映画祭などは別ですが、映画を見終えて拍手が起こることはあまりありませんね。でも何度か拍手が起こったことがあります。賞賛の思いもありますが、素晴らしい作品に触れられた感謝を込めて、観客のみなさんが拍手をしているように見えます。そんな時は劇場の一体感も増します。もちろん、関係者には直接それは届くことはありませんが、巡りめぐってその事実はきっと伝わることでしょう。SNSの時代ですしね。

 さて、テレビです。みなさん、自宅で面白いテレビ番組を見て、拍手したことはあるでしょうか?白熱したスポーツ中継を見て、思わず拍手することはあるかもしれませんが、感動的なドラマを見て、リビングで手を叩くってあまりないですよね。実は恥ずかしながら?私は時に拍手しているのです。

 映画と同じで、テレビは基本的に出演者やスタッフはその場にいません。当たり前です。ましてや感動を分かち合う人は、特に自宅での鑑賞だと、家族などごくわずか、あるいはひとりで見ている場合も少なくないでしょう。

 でも、それでもいいじゃないですか。テレビ画面やスマホに向かって拍手してみませんか?拍手するほどのテレビ番組なんてないよ、と厳しく仰る方がいるかもしれません。でも、コロナ禍の中、視聴者に少しでも喜んでもらおうと、日々必死で番組に携わっている人間は今も数多くいるのです。

 「昨日のあのドラマ、家で見てたけど思わず拍手したよ!」そんな視聴者の書き込みをSNSで目にしたら、関係者は飛び跳ねるほど嬉しいはずなのです。

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など

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