藤木直人が主演を務め、戸田恵梨香新垣結衣らが出演したドラマ『ギャルサー』(日本テレビ系、2006年)が、民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」にて期間限定で配信されている。

このドラマ、とにかく設定の奇想天外っぷりがすごい。登場するのはカウボーイ、謎のインディアン、そして渋谷のギャルたち。とにかく濃いキャラクターが大渋滞しているので、視覚情報の処理が大変なのだ。だからこそジェットコースターな画面展開から目が離せなくなり、気づいたらハマってしまう。そんなエンタメ中毒性がある作品だ。

『ギャルサー』は放映当時に流行していた「ギャルサー」(ギャルのサークル)にスポットを当てて、そのサークルに属する少女たちと、渋谷に突如現れた謎のカウボーイとの交流を描くストーリー(情報量!)。ある目的を果たすためにアメリカ・アリゾナの大平原から日本にやってきたシンノスケ(藤木)が、ひょんなことからギャルたちと出会い、彼女たちが抱えるトラブルを解決していく、まさに痛快爆笑アクションコメディといったところだ。藤木は本作が日テレ系ドラマ初主演。今まで二枚目の役が多かったこともあり、コメディ要素の強いこの役柄で新境地を見せた。なお、YouTuberのパパラピーズが食事の際にいつも「ありがとう大地、ありがとう太陽、命をありがとう、いただきます」と感謝を捧げているが、その元ネタはシンノスケが頻繁に言う台詞なのだ。

脇を固める登場人物たちも豪華。シンノスケの親友のインディアンを古田新太、宇田川東交番勤務の警察官を佐藤隆太、そしてギャルサー「エンゼルハート」に属するギャルたちを、戸田と新垣のほか、鈴木えみ矢口真里岩佐真悠子ら華やかなメンバーが演じている。

「エンゼルハート」は総人数300名を誇る、渋谷最大のギャルサー。主要メンバーを簡単に紹介すると、6代目総代表のレミ(鈴木)は渋谷界隈のみんなが一目置く憧れの的。エンゼルハート黒組のリーダー・ナギサ(新垣)はサークルで一番パラパラを踊るのが上手く、クールだがみんなから慕われている。サキ(戸田)は下っ端メンバーで、サークル内では落ちこぼれ的存在。本作では物語をかき回してくれる重要人物だ。

このドラマ、とにかくギャルがたくさん出てくる絵面の強さがすごい! 派手なギャルメイクはもちろん、キャミソールやショートパンツ、ミニスカートのファッションや、ガラケーでメールを早打ちしているさまなど、懐かしい平成の姿を留めてくれているのだ。これは当時のギャル文化を知る上で文化人類学的に価値があり、自分と違う文化・価値観の人を知るという意味でも貴重な作品だと思う。

第1話、代々木第一体育館前でメンバーが一同に会し、パラパラを踊る姿はもう圧巻。それにギャルたちが00年代の渋谷・原宿界隈を走り回っている様子は、ひとつのいい時代を見ているという感じがして最高すぎる……! 特に渋谷の駅周辺では現在「100年に1度」といわれる大掛かりな再開発の真っ最中。渋谷ヒカリエ、渋谷キャスト、渋谷スクランブルスクエア……すでに多くの施設は開業しているが、これから2027年まで渋谷はさらなる変貌を遂げることとなる。変わり続ける街の記憶しか残らない今、15年前の渋谷の姿にはなんだか安心感を覚えてしまう。

渋谷は、学校で落ちこぼれ、家族からはうとまれ、行き場を無くした少女たちがたどり着いた聖地。そしてギャルサーはそんな彼女たちの居場所だ。ドラマを見ていると、いつの時代も「どこまでいっても渋谷は日本の東京」(Ⓒkemio)だし、文化が生まれ続ける街だし、いろいろな人を受け入れる懐の深い街だなと改めて思う。

いや、場所だけの問題ではない。いつの時代もやはりギャルのマインドは最高なのだという気づきもある。全盛期と比べると現在のギャル人口減は少なく、ギャル雑誌も次々と休刊してしまった。それでも外見も年齢も性別も関係なく、私たちは常にギャルマインドを宿すべきだと感じる。「自分らしさ」を大切にしてスタイルを貫く、ギャルの芯の強さは永遠に誰もが憧れるべき存在だと思う。特に生きづらい今の時代には。ドラマは時代の空気感とともにギャルマインドを十分に届けてくれているので、ぜひこの機会にしっかり吸収してほしい。

さらにエンディングのタイトルバックがまた秀逸。ギャル文字が流れるCGバックに、出演者みんながパラパラを踊ってくれているのだ。ガッキーの恋ダンスもいいけど、こちらのダンスもお見逃しなく! 

ちなみにカウボーイやインディアンなどネイティブアメリカンの役柄に関しては、現代では「文化の盗用」「文化の尊重」の文脈でもっと慎重になるべきだと思う。そこは考え方がまだ未成熟だった当時の時代背景を考慮しながら見てほしい。

なお、TVerでは「これぞTVer!傑作ドラマ特集」と題し、過去に話題となった作品が続々と配信されている。

(文:綿貫大介)

この記事のライター

綿貫大介

編集者・ライター ・テレビっ子/雑誌等で取材・執筆を行うほか、個人でインディペンデントマガジンやZINEを制作。近著に『ボクたちのドラマシリーズ』。現在『BRUTUS』で「TVウォッチャー綿貫大介のパンチラインテロップ」を連載中。Twitter→@watanukinow

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