『有吉の壁』で話題沸騰のとにかく明るい安村、憧れの大泉洋に会うも「やめて!」と言われた理由は?【連載PERSON vol.11】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」vol.11は、『有吉の壁』(日本テレビ系、毎週水曜19:00~)で活躍するとにかく明るい安村さんが登場します。

安村さんは、2000年に幼馴染とお笑いコンビ・アームストロングを結成。14年に解散後、ピン芸人の道へ。翌年には、全裸に見えるポーズネタを生み出し『R-1ぐらんぷり』(カンテレ・フジテレビ系)の決勝に進出。決めフレーズの「安心してください。はいていますよ」は、ユーキャン新語・流行語大賞トップ10に選出され、大ブレイクを果たしました。

2020年4月からレギュラー化された『有吉の壁』には、第1回の特番(2015年放送)から定期的に出演。MCの有吉弘行さんを笑わせるために、躊躇なく頭をバリカンで刈り、リモート出演した自宅では、何度もバケツの水をかぶって視聴者の度肝を抜きました。

そんなストイックに笑いを追求する安村さんに、番組のことはもちろん、影響を受けた芸能人、芸人としてのスタンスについて話を伺いました。

「安心してください。はいていますよ」で大ブレイク!
「安心してください。はいていますよ」で大ブレイク!

――安村さんが影響を受けたテレビ番組を教えてください。

同世代が通ってきたような『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『とぶくすり』、他にもとんねるずさん、ウッチャンナンチャンさんの番組なんかを見ていました。それとやっぱり、北海道出身なので『水曜どうでしょう』ですかね。高校生の頃に見ていたんですけど、本当に面白かったです。

――出演者の大泉洋さんとはお会いできたんですか?

「北海道会」って集まりがあって、3年前くらいにそこで初めてお会いしました。「大泉さんに憧れて芸人やっています」って伝えたら、「いや、俺、俳優だからやめて!」って言われて(笑)。

――では、この業界において、影響を受けた方でいうと大泉さんになるんですね。

そうですね。気づかないうちに、大泉さんや『水曜どうでしょう』のメンバーの喋り方になっていることがあって。みなさん、北海道の方言ではあるんですけど、独特な喋り方をするんですよ。それが知らぬ間に体に染み込んでいる感じです。

――『水曜どうでしょう』の皆さんのように、会話で笑いを生み出すのがお好きなんですか?

エピソードトークとかではないじゃないですか。“やりとり”で面白かったので、今でもそういうのが好きです。

――ちなみに、おすすめのテレビ番組はありますか?

『ザ・ノンフィクション』はよく見ています。それと『NHKスペシャル「ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる~」』には衝撃を受けました。漁師が魚を捕っていると、野生のクマがやってくるので、いろんな仕掛けをして食べられないように追い返すんですが、あるおじいちゃん漁師はクマが来ると、子供に怒るような感じで「こらっ!」って言うんですよ。そしたらクマがいなくなるんです(笑)。他の人がやってもダメなんですよね。その「こらっ!」っていうのにハマってしまって、7歳の娘といるときに、何か起きたら「こらっ!」って言い合うみたいなのが家で流行りましたね(笑)。

――(笑)。安村さんは今年で芸歴20年。「笑いを作る」ことに対してのスタンスや思いは、昔から変わらないですか? 

コンビの時は正直スベることはなくて、形もできていたんですけど、ピンになってから、その感じでやっていたら全然ウケなくなったんですよ。そこで、明日のことを考えずに目の前のことを一生懸命やらないと、他の人たちに追いつけないと思いました。たとえば、みんなが80%くらいでできるものを、僕は120%でやらないと一緒にはやれないですよね。

――芸人人生において、現在は第何章ですか?

第3章ですかね。1章はコンビのときで、2章はピンで裸になってダメになって……。『有吉の壁』のおかげで何とか芸人として生きていけているので、いまは第3章です。でも、他と違って3章はとても短い可能性がありますね。『有吉の壁』が終わってしまうと、僕もダメになるので、3章だけ小冊子になるかもしれません(笑)。

『有吉の壁』の“Mr.壁”と呼ばれている
『有吉の壁』の“Mr.壁”と呼ばれている

――(笑)。そんな『有吉の壁』には初回から定期的に出演されています。番組立ち上げ時のことを覚えていらっしゃいますか?

正直、ここまで(レギュラー化に)なるなんて思っていないですし、訳もわからずやっていたので、言い方が良いか悪いか分からないですけど、ふざけていました(笑)。それが逆に良かったみたいで、すごく反響があったんですよ。けど、2回目から変に力が入って全然ダメになったっていう(笑)。僕の良くあるパターンです。

――『有吉の壁』は、視聴者が芸人さんのポテンシャルを再認識する場でもあると思います。芸能人の方もよく安村さんを絶賛されていますが、現場で声をかけられることも増えたのではないでしょうか?

番組でマツコ(デラックス)さんに言っていただいたり、伊集院光さんにはラジオ(TBSラジオ『伊集院光とらじおと』)も呼んでいただいて、ありがたいです。でも、戸惑いの方が大きいですかね。いま、テレビ界で夜の7時から僕が見られるのは、この番組しかないですから(笑)。他の番組は人気芸人さんが出ますけど、この番組だけは関係ないので、異空間にいる感じがするんですよね。『有吉の壁』だけが異常なんです。

――水曜よる7時という時間帯的にも、ファン層が広がったのでは?

そうなんです。インスタのコメントやファンレターなんかにも、「子供と一緒に見てます」と絶対に『有吉の壁』のことが書かれてあって。あと別バラエティのロケなんかに行くと、スタッフさんから「『壁』見ました。(自宅からリモート出演時、バケツの水を何度もかぶった)あれ本当に家でやったんですか?」みたいなことを言われますね(笑)。

――それと、視聴者にインパクトを与えたひとつが「ブレイク芸人選手権」のコーナーで披露された歌ネタ「東京ってすごい」(北海道から上京した安村少年が、東京という大都会に揉まれ、生まれ変わった姿を表現するネタ)だと思います。席で見ていた芸人さんたちも立って爆笑されていましたよね。このネタが生まれた経緯を教えてください。 

正直言うと、不純な動機でして(笑)。結果的には「芸人の心に響いた」って感じになったんですけど、僕的にはそんなつもり一切なく、優勝賞金300万円の『歌ネタ王決定戦』っていう関西の賞レースで優勝するために作った歌なんですよ(笑)。

『歌ネタ王』は、『M-1グランプリ』や『キングオブコント』と比べて出場者が少なくて、映像審査に受かったらすぐに準決勝なので、“これはチャンスなんじゃないか”っていう感じで作りました。準決勝まではいけたんですけど、お客さんの前でめちゃくちゃスベっちゃって……。でも、他のライブでやると、楽屋にいる芸人さんから「すごく面白い」って言われていて、いつか『有吉の壁』でやりたいなって思っていました。

――芸人さんもそうですが、夢や希望を持って上京してきた人たちの胸に刺さるネタだと思います。

そんなつもりまったくなかったんですけどね(笑)。僕、裸ネタのイメージが強いので、普段劇場で服を着てネタをやると、お客さんが“裸のネタいつやるんだろう?”ってひっかかりながら見ているんですよ。なので、歌ネタも裸のまんまやろうと思って、“裸といえば何だろう”って考えたときに、自分の生い立ちを歌うしかないなって。

前の相方に誘われて芸人になって、コンビで14年やって、解散して、ピンになっていま裸でいるって、意味分からないじゃないですか(笑)。野球しかやってこなくて、北海道にいるときはずっと童貞だったんですけど、そんな僕が東京に来てたくさんの人と出会って、いろいろ教えてもらって……っていうのを歌にしました。

歌ネタ「東京ってすごい」に芸人たちも感動
歌ネタ「東京ってすごい」に芸人たちも感動

――Huluで配信されている反省会「有吉の壁に耳あり」を拝見すると、多くの芸人さんが“一番しびれた瞬間”として、「スピーチの壁を越えろ!日本カベデミー賞選手権」を挙げていらっしゃいます。安村さんは「グラニュー糖浩一」で参戦されましたが、どんな雰囲気だったんですか?

「カベデミー賞」は2時間半くらい収録したと思うんですけど、みんなで合わせて7分くらいしか笑いをとっていないんですよ(笑)。あと、2時間23分くらいは、全員ずっとスベっていて……。放送はその7分をギュっと集めて編集してくれただけなんで、友近さん以外、誰も手応えないんじゃないですかね(笑)。

――独特な雰囲気だったんですね。

みんな“スベる恐怖に負けないぞ!”ってことだけでやっていたんで(笑)。

――ショッピングモールや遊園地などで行う人気企画「一般人の壁」は、毎回スタッフさん含め、ハードな収録だと思うのですが、安村さんにとってはどんな現場なんですか?

有吉さんと(佐藤) ‎栞里‎ちゃんはずっと止まらず回っているので、1つネタやって、スベっても「うぁ~スベったなぁ」って言っているヒマがないんですよ。走って次のところに行って、すぐに準備して、来るの待って、ネタをやんなきゃいけない。

なので、やっている最中はみんな必死ですし、すれ違っても喋らずに、終わってから答え合わせをする感じです。「どうだった?」「3個やって2個“◯”でした」みたいな。スベったとしても反省をするヒマがないので、結構壮絶です。始まっちゃったらすぐに終わるんですけどね。

――他の芸人さんとロケバスなどで話すことも多いんですか?

パンサー)尾形(貴弘)の家のローンの話とか……(笑)。他愛のない、何の情報もない話なんかをずっとしている感じです。僕はみんなとすっごく喋りたい派なんですよ。でも、みんなは朝も早いし、体力的にも削られるので寝たいんです。パンサーの向井(慧)と、チョコレートプラネットの長田(庄平)が席近くだったときは、僕が寝ようとしているアイツらに延々と話しかけるので「いい加減にしてくださいよ!」みたいな(笑)。

みんなで移動して、みんなで帰って「ワー!」って言っているのが楽しいんですけど、誰も付き合ってはくれません(笑)。

――そんな『有吉の壁』は、安村さんにとってどんな場所ですか?

僕はいま『有吉の壁』しかないんで、それをただ一生懸命やるだけですね。いろんなことを考えて、打ち合わせして、本番にぶつける感じなので、いわば“試合”って感じです。あと、僕は定期的な仕事が『有吉の壁』だけなので集中してできますけど、お笑い第7世代なんかは、他の仕事もやりながら『有吉の壁』もやるって本当にすごいことだと思います。

――MCの有吉さんはどんな存在ですか?

全部うまく転がしてくれますし、有吉さんのおかげで“スベっても大丈夫”みたいな感じになっているんですよ。僕たちは“有吉さんを笑わせよう”って明確な目標があるので、やりやすいですし、自然に“やりやすくしてくれる人”なので本当に尊敬します。

――有吉さんがネタを面白いかどうか判定する「◯・×」はやはり気になるものですか?

そうですね。テレビを見ている方は「×」が出て“面白い”って感じがあるらしいんですけど、やっている僕としては、番組初期から「×」が出ると「ウァッ……『×』か!」って(落ち込む)なるときがあるので、やっぱりウケて「◯」をもらいたいですね。

――最後に8月26日(水)に放送される『有吉の壁』スペシャルの見どころを教えてください!

新企画「夏祭りの壁を越えろ!おもしろ屋台選手権」は衝撃的でした(笑)。みんなとんでもない緊張感だったんですけど、やり始めたらめっちゃくちゃ面白かったですね。僕にも注目してほしいですが、個人的には、特にトム・ブラウン布川ひろきみちお)がとんでもなく面白かったです。今年一番笑ったかもしれないですね(笑)。

(取材・文:浜瀬将樹)

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