傳谷英里香、悩みは「自分観察」で乗り越える?歩み始めた“自身の幸せ”を思う人生【連載PERSON vol.8】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」vol.8は、ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)で鷹木真琴役を務めている傳谷英里香さん。

2018年9月に、所属していたアイドルグループ「ベイビーレイズJAPAN」が解散して以降、女優として本格的な活動をスタート。昨年はドラマ『ランウェイ24』(ABCテレビ・テレビ朝日系)のほか、舞台『新・罪と罰』、ミュージカル『Fumiko』に出演と、持ち前のチャレンジ精神を武器に、女優としてステップアップし続けています。

一方で、『炎の体育会TV』(TBS系)へのレギュラー出演や、「HONOLULU TRIATHRON 2020」を目指してトレーニングを重ねるなど、得意のスポーツを活かした分野でも活躍中。「人生にマイナスなことはない」とほほえむ柔らかな表情が印象的な傳谷さんですが、その言葉には“熱い思い”が詰まっていました。

――小さな頃、よく見ていたテレビ番組はありますか?

『世界まる見え!テレビ特捜部』や、おもしろ動画やハプニング動画を家族で見て笑っていた記憶があります。私は3きょうだいで姉と兄がいるんですけど、2歳上の兄が好きなアニメやドラマは一緒に見ていました。小学生の頃、兄から『花より男子』を勧められて、「え~?」と思いながら見てみたら、おもしろすぎて(笑)。2人で次の放送を楽しみに待っていたのを覚えています。

――では、ご自身が影響を受けた番組は?

芸能界に入ったのはスカウトがきっかけで、芸能に興味があったわけではないんです。でも、音楽が大好きな家族と『ミュージックステーション』を見たり、『金曜ロードSHOW!』を見たりしていたので、“表現”という意味では影響は受けているのかなと思います。

――ちなみに、傳谷さんが芸能界で活躍されていることについて、ごきょうだいはどんな感想を?

純粋に楽しんでくれています。家族に出演番組を告知するんですけど、「見るよ」「録画予約したよ」と、兄は何かと気にかけてくれて。姉は12歳離れているので、昔は“お母さん”のような目線で私を見ていたと思うんですけど、20歳を超えてからは“友達”みたいな感覚になりました。映画やカラオケに行くなど、より距離が近くなった気がします。

――今、おすすめのテレビ番組も教えてください。

やっぱり今でも『世界くらべてみたら』とか、世界の情報を知る番組が好きですね。なので、『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターのお話が来た時には「やった~! 海外にも行ける~!」って(笑)。現地に行って初めてわかることもたくさんあるので、貴重な経験をさせていただいていると思います。

――この業界に、傳谷さんが影響を受けた人はいらっしゃいますか?

芸能界の方ではないんですけど、土台となっているのは小学生時代に外部から来てくれていたバスケットボール部コーチの「自分の限界を決めるな」という言葉。私も、「しんどいと思ったところからが勝負だな」と小さいながらに思っていて、そこから“やるならとことん”というポリシーをずっと貫いていますね。

――それをポリシーとしているがゆえに、辛くなることはないですか?

……あります(笑)。やっぱり、他人のことは許せても、自分のミスが許せないなど、変に責任を感じてしまうことがあるんです。でも、そういう時には「あ、いま自分めちゃくちゃ落ち込んでるな」と俯瞰して、「そういう時の自分はどうするんだろう?」と観察します。“人間観察”と同じように、“自分観察”をする感じです。

――いつ頃、その技術を身につけたんですか?

中学生の頃ですね。当時、その年齢では抱えきれなかった悩みを本で補っていたんです。本を読んで思考を増やして、無理矢理「こういう解釈もある」「こう思えば、嫌なことも正当化できるな」と考えながら過ごしていました。その頃は無理矢理でしたけど、大人になってからは意識的に俯瞰している気がします。

――すごく強い精神力ですね。

強くなるしかなかったんだと思います。繊細な考えを持ってしまった時に、自分の弱さに付け込んでいる自分がいると気づいて、自分のことがイヤになっちゃったんですよ。そこから、変わりたい、強くなりたいって。でも、どうすればいいかわからないと思っていた時に、ふらっと立ち寄った本屋さんで出会った本のおかげで、物の見方を変えることができました。

――この業界に入ってから、印象に残っている言葉はありますか?

お世話になっているお芝居の先生に「人の幸せではなく、自分の幸せは考えたことがある?」と聞かれた時、正直に「あっ……、なかったな」と。その瞬間、今まで自分のことを労ってなかったなって、涙が出てきたんです。そこで、“自分がやりたいことをやろう”とスイッチが入って、今に繋がっている気がします。グループにいた時はメンバーとスタッフさんを繋ぐ橋のような存在だったので、自分の気持ちはあまり発信していなくて。これからは、自分のことも考えようと思うようになりました。

――グループが解散してから現在に至るまで、成長したと感じるところは?

吸収したいという気持ちが強くなったので、より柔軟になったと思います。アイドルと役者は畑が違うし、すべてをゼロから作りたいという気持ちでした。

――ひとりになる怖さはなかった?

良い意味で「どうにでもなれ」「なんでもできる」と思っていたので、逆にわくわくして、明るい気持ちではありました。

――何も抱えるものがないからこそ、自由にできる、と。

そうですね。良いも悪いもすべて自分次第なので、自由だなとは思いました。でも、グループで過ごした経験を大切にしたうえで進みたいと思っています。ゼロとはいえ、抱えていたものを下ろすというよりは、すべて背負ってやるべきだなって。ファンの方の愛もそうですし、「共に行こう!」と。だから、怖くなかったのかもしれないです。ひとりじゃないと思っていたのかな。

――ドラマの撮影は新型コロナウイルスの影響で一時中断しました。どんなお気持ちでしたか?

逆に、「学べるな」と思いました(笑)。芸術に触れたり、お芝居のメソッドの本を読んだりして、むしろモチベーションが上がった気がします。もちろん寂しい思いもしたし、悲しいニュースを見て辛くなったりもしましたけど、自分が今できることはなんだろうと考えて、片っ端から手を出した感じです。

――たとえば、どんなことを?

1日に映画を6本観たりしていました。お昼を食べて、軽く運動して、映画を観て、夕飯を食べて、お風呂に入って、また映画を観て……。今まであまりやっていなかった料理も、2日かけて豚の角煮を作ったり、ホワイトソースからグラタンを作ったり。あとはお花が好きなので、花束を買ってきて自分で生けるっていう(笑)。

――すべてをプラスに変えるパワーが、本当に素晴らしいです。

もともとは、根暗だったんですけどね(笑)。

――ちょっと信じられないです(笑)。

あはは(笑)。人との出会いや経験の中で、いろいろな選択肢や思考が持てるようになりました。でも、たしかに今はめちゃめちゃポジティブですね。

――そのポジティブさがないと、なかなかトライアスロンにはチャレンジできないですよ。

トライアスロンに関しては、さすがに「本当にやるの!?」と思いましたけど、やってみたら楽しいかなって。

――実際、楽しめているんですもんね?

楽しいですね。でも、海で高い波をもぐる練習には恐怖心があります。この前、平塚の海に行ったら、荒れて濁って何も見えないんですよ。視界が悪い中、高い波に向かっていくのは勇気がいるけど、やるしかない。怖かったけど、やってみたらできました(笑)。

――泳ぐことの大変さより、恐怖心のほうが大きいんですね。

でも、海を見ると750m先(ゴール)は果てしなく遠いです。ゴール地点の灯台が(1cm程を指で表現しつつ)こんなに小っちゃくて、途中で沈みそう……と思いました(笑)。プールでは25m×15往復できたんですけど、それを海でやったらどうなるか、今からドキドキします。

――それでも、「やらない」という選択肢は……?

ないです。やってみないとわからないし、もし沈みそうになったらコーチが助けてくれるかなと(笑)。

――(笑)。最後に、女優をするうえで大切にしている軸・信念を教えてください。

軸にしているのは“本当に自分の心が揺れてからじゃないと動かない”こと。セリフは決まっているけど、そう感じていないなら言わなくてもいいんじゃないかと思うんです。自分自身が感じていなければ、壁に話しているのと一緒だなって。なので、自分の感じ方を大切にしています。

信念は“何も持って行かない”こと。たくさん準備をした上で、手ぶらで挑むんです。感覚で動きたいのに、準備したものを持って行くと、考えて演技することになってしまう。ただ、舞台はめちゃめちゃ怖かったです(笑)。でも、そこで成功体験をしてから「これでいいんだ」と思えるようになりました。もちろん不安なので、まだ「目的はこうだったよね」と振り返ることはあるけれど、できるだけすべてを手放して、臨むようにしています。

撮影・取材:勝浦阿津希

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