『高嶺の花』石原さとみの本領がいかんなく発揮されるドラマがやってきた

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テレビドガッチ読者のみなさま、はじめまして。ライターのスナイパー小林です。今回からテレビドラマの楽しさ、そして出演している俳優のみなさま方の麗しさを私なりの視点でお伝えしていく連載が始まります。

ときおり、YouTubeのほうが面白い、視聴率を取ることができなくなったなどと寂しい声も聞こえてくるテレビ業界。でもやっぱり日本人にエンターテインメントといえばテレビです(断言)。ここから発信される情報に気づかされ、泣かされ、笑わされ。

ドラマヲタ代表の私が綴っていく文章で、その魅力がみなさまに少しでも届きますように。そしてテレビドラマよりもドラマティックな毎日を。今回は『高嶺の花』(日本テレビ系、毎週水曜22:00〜)に主演する石原さとみさんについて。

■1時間に詰まったゆるやかさと緊迫感の流れ方が心をそそる

華道の名門『月島流』の出戻り長女・月島もも(石原さとみ)と商店街で自転車屋を営む風間直人(峯田和伸)のラブストーリー。身分違いの恋は実を結ぶのか?

脚本は野島伸司さん、そして彼の脚本で演じることが憧れだったとインタビューで話していた石原さとみさんが主演する『高嶺の花』。彼女が出演した『ディア・シスター』(2014年)『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(2015年・いずれもフジテレビ系)くらいからだろうか、石原さんは物怖じせずに発言をする、気の強さを醸し出す女性の印象が強くなった。それを私は勝手に“キムタク現象”と呼んでいる。

キムタクといえばもちろん押しも押されぬ日本のトップスターなわけで、名作をひたすらリリースし続ける名優。そしてトップアイドル。木村拓哉というイメージが強すぎて彼が演技をすると「どんな役でもキムタクに見える」という現象がある。それを私はキムタク現象だと呼ぶのだけど、こんな存在はハレーすい星くらいのペースでしかお目にかかれない希少性があるとも思っている。それが石原さんに見えたのだ。

キムタク現象の女優版、「何をやっても(演じても)石原さとみに見える」。くどいようだけど、これは賛辞。偉業とも呼びたい世界観を石原さんはこの数年間で視聴者、世の中にぶつけてきた。『5→9〜私に恋したお坊さん〜』の桜庭潤子役では、出会って早々、自分へ好意を寄せてくる星川高嶺(山下智久)のことを

「(いい人かと問われて)いや全然っ! なんか上から目線だし、なんか話し通じないしっ!!」

と、全否定。おそらく脚本に登場しているであろう、アマダレ(出版用語の「!」マーク)の持つ勢いをそのまま表現する口調の石原さんを容易に想像できる。そしてややオーバーリアクションな感情表現をする演技と、すべてをひっくるめて石原さとみ現象なのだ。加えて強烈な色気を漂わせるふっくらリップも持ち合わせているとなれば、もうこれ最強。

そんな石原さんがここ数年で出演された作品の中で、第1話からとても輝いているように見えるのが『高嶺の花』だ。先述した野島さんとの初共作だけに気合が入っているのだろうか。彼女が演じるのはバリッバリのお嬢様、そして結婚式当日に旦那から離婚を言い渡された過去を持つ、もも。けして寂しそうにはせず気丈にそして賑やかに振る舞う。でも本音は傷ついているし、疲れてもいる。その機微の表現にグッときた。やりすぎず、痛すぎず、ちゃんと自分の魅力が表されている。こんな石原さとみが見たかった。

ほどよいノスタルジックさがある映像もいい。日テレの水22ドラマだと『anone』(2017年)など、どうしようもない切なさの連打を撃つ作品が印象深い。もしくは『東京タラレバ娘』(2016年)のように突き抜けた明るさのある作品。その中間に位置してちょうど見やすい質感を放っているのが本作だ。

石原さんの動と静の演技と同じように、テンポ良いリズムでストーリーが流れてくる。ももが華を生ける躍動感あるシーンがあると思えば、直人とちゃぶ台で朝ごはんを和やかに食べるシーン。BGMの「ラブミーテンダー」もよく似合う。この混在が飽きなくていい。ひと言だけ申すなら起きたての30歳の普通の女は朝っぱらから、石原さとみばりに仕上がってないけどな。もうちょっと崩れていても罪はないだろうに。

さて『高嶺の花』。このロミジュリ恋愛はどんな風に進んでいくのか。いやハッピーエンドは予想もしない形を迎えるのかもしれない。ももの父親が早く離婚の痛手から立ち直ってほしいと

「(とりあえず恋をしていらなくなったら)そのときは捨ててしまえばいい」
「(自分が抱えた)悲しそうなものは(他人に)バトンしなさい」

そう言ったセリフの親の愛情深さが怖くて響いた。教え通りに直人は人生の踏み台にされてしまうのか。第1話からギュン、とさせられたので第2話を楽しみに待つ。そしてこのドラマが終わるころには私も

「たーかーねーのはーなっ!」

になれるように、さとみ美ロジックを学ぼうと思う。

(文・スナイパー小林)

■7月18日(水)放送『高嶺の花』第2話
月島流の大切な行事に登場し、華道家として復活したもも(石原さとみ)のもとに、彼女をキャバクラ嬢と勘違いした直人(峯田和伸)たちから電話が。ももはとっさに話を合わせ、店に来て指名して、と頼む。そしてすぐさま店の面接を受けて即採用、直人をキャバクラ嬢として接客する。酔った勢いも手伝い、2人は急接近……!? だがその帰り道、突然、元婚約者・吉池(三浦貴大)からの電話が鳴って、思わず受けてしまったももは……。

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