札幌・11人死亡の共同住宅火災に見る、生活困窮者支援の現実

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5月27日(日)24時55分からの『NNNドキュメント'18』(日本テレビ)は、「そこで生きてきた 困窮者住宅で失われた11人の命(仮)」と題して放送する。

1月31日、生活困窮者の住まいや食事提供などの支援をする北海道札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で火災が発生。火はまたたく間に燃え広がり、11人が死亡する大惨事となった。入居者16人のうち13人は生活保護を受給していて、家族との繋がりがなく、路上生活から抜け出してきた人も少なくなかった。

「そしあるハイム」は築60年の古い木造で、中央の廊下が煙と炎の通り道となり、逃げ道は部屋の窓しかない状態だった。ものの10分で火は建物全体を包み、激しい炎に包まれ、窓に取り付けられていた木の格子を壊して命からがら逃げたと語る生存者。「そしあるハイム」を運営していたのは、困窮者の支援を目的に活動する民間の会社。法的な位置づけのある福祉施設ではなかったため、厳しい防火対策は求められていなかったという。

実はこれまでにも、秋田県や福岡県でも同じように困窮者や、行き場のない人を受け入れていた共同住宅や施設にて、多くの居住者が犠牲となる火事が起きている。どの建物も築年数が古い木造であることが共通している。困窮者を受け入れる共同住宅の運営は決して多くの利益を生まず、古く安い物件を活用するしかないからだ。

行政機関ではこうした実態を見て見ぬふりをしてきた。規制がない分、広く困窮者を受け入れることができるため、困窮者の受け入れを頼る受け皿となっていたからだ。このことから、困窮者の支援を民間任せにしている実態が浮き彫りになる。建物の老朽化や、防火設備の充実を図れなかった実情、行政の不十分な実態把握などの要因が重なり、今回、11人もの居住者が犠牲となるほどの火事になったのだ。

路上生活を経験し、自立支援事業所「なんもさサポート」の支援を受けて生活する男性は、いまの生活を「天国だ」と言い、自分たちの「受け皿」としてこの場所は必要だと訴える。札幌市全体では900人近くがこうした同じような事業の支援を受けて暮らしていて、「そしあるハイム」の生存者たちも肩を寄せて暮らした「そしあるハイム」での生活に戻りたいと話す。法的位置づけの曖昧さや、事業者の資金難を放置したまま困窮者支援を民間任せにしていては、悲劇はまた繰り返されかねない。

番組では、「そしあるハイム」火災の生存者の証言から、被害が拡大した背景と困窮者支援の現実を追う。

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