『まんぷく』安藤サクラ、目尻の下がったあの笑顔は見ているだけで幸せになれそうだ

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本年も大変お世話になりました。個人的な2018年の漢字は「変」でした。ずっと今までとらわれていた結婚や出産にいきなり興味がなくなって、もっと新しいことをしようと意識が変換された1年でした。田舎の両親は泣いています。

さて今回は朝ドラ『まんぷく』(NHK総合、毎週月〜土曜8:00〜)に主演する安藤サクラさんについて。佇まいだけでたおやかさと強さが伝わってくる彼女は、今の日本にとって貴重な存在です。え、やたら美人だ、イケメンだというだけでは演技者としては物足りないじゃないですか。こういう女優さんがもっと増えたらいいのに、という願いを込めつつ彼女の魅力を再確認していきます。

■美貌に頼らない演技力で観る者を引き込んでいく

インスタント麺を開発した夫婦の物語を描いた作品。戦後、立花福子(安藤)は「世の中のためになる仕事がしたい」という夫・萬平(長谷川博己)を支え、塩製造業を経て「たちばな栄養食品」を夫婦で開業。社員にも恵まれて経営は順調だったが、萬平は進駐軍に囚われてしまい刑に処されてしまう。果たして会社の行方はどうなるのか。

日本のドラマはキャスティングから決定していくことが多く、安藤さんもその例だ。この作品に関してはあの福子=安藤さんの、目尻の下がった笑顔がまず一番にあると思う。『まんぷく』というタイトルの字面も可愛いけれど、そこから彷彿させる安藤さんの笑顔はもっと可愛い。眺めているだけで運が良くなってきそうな気がする。

朝ドラ史上No.1と言っても過言ではないほど、福子の徹底した前向き精神は朝から人を幸せにする。トラブルがあっても落ち込まずに「なんとかなる」とあの笑顔で上を向く。それから夫、萬平への全力応援姿勢もいい。よく考えると萬平は出会った頃は、イケメンで最先端の商品の開発に取り組むというステキ男子だった。それが結婚したら憲兵から乱暴を受けた後遺症で体が弱くなって、病弱であることが判明。会社を立ち上げるもトラブル続き。そしてその事件処理をするのはいつだって福子の役目だ。それでも泣き言は言わず、実は不良物件だったという旦那を懸命に支え続ける。

「私と萬平さんは一心同体です」

いつだって福子にはそう言い切る愛がある。さらに夫のために3万円の資金を出してくれるスポンサーを見つけてくるビジネスの手腕も見せる福子。物語は年をまたいでカップ麺販売まで続く。安藤さんは50代まで演じるそうだ。朝ドラが終盤に差し掛かると、ヒロインと自分の年齢よりも上を演じることが難しくなってくる。違和感との戦いとも言う。でも彼女ならそんな問題も軽くクリアした50代を見せてくれそうだ。

そんな風に今は笑顔を全開している安藤さんがテレビドラマで、視聴者に印象づいた作品といえば『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系、2016年)のヒロイン、宮下茜役。これも初めにキャスティングだけ聞いてしまうとラテ欄を二度見した。あの岡田将生さんの彼女役でヒロイン……あくまでイチ視聴者としてのミーハーな意見だ。

放送が始まると最初に抱いた感情はどこかへ消えた。オフィスラブで、彼氏の上司というなにかとやりづらい立場にいる茜。そして次々に女の本音を吐露していく。

「私は別れたくなかったの!」
「結婚する意思のない男の連絡先を自動的に消去できる機能があったらいいのにね」
「傷つくのを怖がっていたら、幸せになれないんだよ。誰も傷つけないやつは誰も幸せになれないんだよ」

茜が力一杯に叫んでいても、見る側が胃もたれしない演技で女心を鷲掴みにした。ドラマで岡田さん演じる坂間正和のことを「まーちん!」とふざけた愛称で彼氏のことを堂々と呼んで、嫌味にならない女優は最近安藤さんくらいしか知らない。

今回はテレビドラマ2作品を挙げたけれど、総じて気持ちがいい女性だと思う。俳優には自分が色々な役に近づいてカメレオンのように演じるタイプ、それから「どんな役を演じても〇〇さんだから」と完全にイメージを固定していくタイプと2種類ある。ここにビジュアルは関係ない。でも安藤さんはどちらのタイプにも当てはまることはない。

時には濡れ場にも体当たりで挑み、そして朝から笑顔を振りまく演技もする。役にはきっちり近づいていくけれど、そこには確実に安藤サクラがいる。どんな役を演じても、だ。まるで役柄と「今まで兄弟でした!」と言わんばかりに、すんなりと馴染んでいる彼女の姿があるのだ。その支配力は高く、いつまでもこの魅力に取り憑かれていたいなと思ってしまう。そしてそんな彼女にまた明日の朝も会えるのか、ああ楽しみだ。

(文・スナイパー小林)

<『まんぷく』12月25日(火)放送あらすじ>
会社を売って得た利益の使い道をみんなで相談していると、福子(安藤)が産気づく。そして無事、女の子を出産。鈴(松坂慶子)たち家族はもちろん、居合わせた東先生(菅田将暉)も感激。急いで刑務所の萬平(長谷川)に知らせに走るが喜びもつかの間、財務局が香田家に乗り込んできて、福子のお金が差し押さえに。途方に暮れる福子たちに対して東先生がまさかの提案を……。

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