松本清張「砂の器」を通して日本の歴史の古層を考える

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MCに伊集院光島津有理子アナウンサーを迎え、古今東西の「名著」を読み解く番組『100分de名著』(Eテレ、毎週月曜22:25~22:49)。3月は、社会の常識や背景が知らず知らずのうちに人間を縛り犯罪に走らせる様を見事に描き出し、「社会派推理小説」という一大ジャンルを築き上げた作家・松本清張(1909 - 1992)をピックアップ。長塚圭史が朗読を担当、講師に原武史を迎え、清張の作品群を通して、「人間の闇」や「国家の深層」といったテーマを見つめなおす。

第2回(3月12日放送)は「生き続ける歴史の古層」と題して、過去を消し去るために殺人という手段をとらざるを得なかった人物とその心理を描いた小説「砂の器」に注目。

大ピアニストを目指す主人公・和賀英良に背負わされた十字架は、幼少期に苦しめられた、いわれなき差別や偏見だった。近代化を成し遂げたにもかかわらず、依然として日本に残る迷妄きわまる差別構造が人を犯罪に追いやる原因となる。その犯罪を暴くきっかけになるのも、古代からの残滓を残す「方言」という文化。この小説は、日本に今も生き続ける歴史の古層への鋭い視点が生んだ作品なのである。ここで描かれた犯罪を読み解くことで、近代化・高度経済成長を経てもなお、日本に根強く残る歴史の古層を暴き出す。

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