山田洋次監督の映画『キネマの天地』でヒロインに抜てきされ、一躍注目を集めた有森也実さん。

『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)の関口さとみ役で世の女性を敵に回したものの、古風な日本女性のイメージを好む男性ファンも多く、「お嫁さんにしたい女優ベスト10」では何年にも渡ってランクインしていた。有森さん自身はそのイメージを払拭すべく、過激な役柄にも意欲的に挑戦することに。

◆アフリカロケの体験が女優人生の転機に

『東京ラブストーリー』の関口さとみ役を演じたことで、それまで以上にさまざまな役柄を演じることになった有森さんだが、どんな役を演じてもさとみ役のイメージを越えられず悩んでいたという。

そんな有森さんに『東京ラブストーリー』から7年後の1998年、『世界ウルルン滞在記』(TBS系)のオファーが舞い込む。それはアフリカ・カメルーンに暮らす民族とともに生活するというものだった。言葉も通じない人たちの中で、それまで食べたこともないハリネズミやカブトムシの幼虫を一緒に食べる有森さんの姿は衝撃的で、今でもよく覚えている。

-20年以上前ですが、本当にすごいなあと思いました-

「懐かしい。本当ですか(笑)。ちょうどあのときは帰国したらこまつ座の舞台『頭痛 肩こり 樋口一葉』で一葉役をやることが決まっていて。憧れのこまつ座の舞台、旅公演もあり、旅はマネジャーさんも付いて行きません。それで、『ウルルンでアフリカに行けたら、きっとこの舞台も頑張れるだろう』と思って行くことにしたんです」

-「何でも食べる覚悟でアフリカへ」というナレーションを聞いてもしかしてと思ったんですけど、本当にいろいろなものを食べていましたね-

「食べました。ハリネズミとかサワガニやホジョクというお芋、カブトムシの幼虫も食べましたね」

-もともと虫は苦手だったわけですよね-

「ダメですよ。ダメだけど、カブトムシの幼虫を取るために民族の女の人たちが、1日がかりで大木を倒すんですよ。貴重なタンパク質を手に入れるために。それも精霊にお祈りをして。あれを見たら気持ち悪いとか言っている場合じゃないですよ。すごいです。あの人たちの精神」

-何日ぐらいあの村で過ごしたんですか?-

「1週間です。往復で移動に3日間かかりました」

-よく決断しましたね-

「そうですね。でも、『世界ウルルン滞在記』のプロデューサーの方に『有森さんは絶対に秘境に行ったほうがおもしろい。行かせたい』って言われて、『秘境? おもしろいなあ』って(笑)。ヨーロッパとかちょっと優雅なところでバレエとかダンスを体験させる旅でもいいわけじゃないですか。それが秘境というのは、きっと新たな自分に出会えるかも…と思えたんです」

-あれを体験したことによって、もう何も怖くないという感じになったのでは?-

「そうですね。怖くないけど、怖い…生きるって何だろうとか、人の魅力ってどこから生まれるんだろうとかいろいろ考えました。現地の人たちには私が何をやってきた人なのかとかまったく関係ないじゃないですか。人と人との触れ合いというか、関わり合いのなかで一緒に生活できたということが、人間としての自分を認められたというか…そんな感じでしたよね」

-通訳の人も本当に帰っちゃったんですか-

「帰っちゃったんですよ。ひどいと思いませんか?(笑)。『言葉なんてそんなにないから、エコジョコ(ありがとう)って言っていれば大丈夫』と言って帰っちゃったの。

撮影隊も撮影のときしかいないから、昼間だけで夜は帰っちゃうの。『じゃあね』って(笑)。そんなことははじめてだったし、『もうどうするの?』って感じでした。朝になると子どもたちが起こしに来るんですよ。『起きないと“ありんこ”が来るからね』とかってジェスチャーで(笑)」

-いろいろな体験をされて、別れるときには皆さん泣いていましたね-

「本当に大変だったけど、生きているという実感がありました。最初は怖かったんです。『本当に大丈夫かな』って怖くて泣いていました。歌と踊りで歓迎してくれたけど怖かったですからね(笑)」

-アフリカロケを無事に終えて舞台も-

「はい。旅は一人で行きました」

-それにしても、ものすごい経験でしたね-

「そうですね。芸能界にいなかったらこんな経験できないですよね。『世界ウルルン滞在記』以外にも『世界の村で発見!こんなところに日本人』でパラグアイ、アルゼンチン、バヌアツ、インドネシア、ヨルダンに行きましたけど、どれも結構厳しい旅でしたよ。

でもタフなんです、私は。どこでも寝られるし、みんながお腹(なか)を壊しても私だけ大丈夫だったりね(笑)。 本当にタフなんです」

◆「やるしかない!」とヤクザの愛人役に

2002年には写真集でセミヌードを披露。そして映画『新・仁義の墓場』(三池崇史監督)ではヤクザの愛人役で大胆な濡れ場にも挑戦した。

-『新・仁義の墓場』はイメージを変えたいという思いで出演を決めたのですか?-

「いえ、あれは三池監督からオファーをいただきましたので、『絶対にやりたい! ご一緒させていただきたい!』と」

有森さんが演じたのは、命知らずの極道・石松(岸谷五朗)に見初められて強引に愛人にされてしまうが、献身的に尽くすようになる智恵子。キレやすい性格の石松はちょっとした誤解から組長を殺害。そして智恵子は逃亡を余儀なくされた石松とともに覚せい剤中毒になる。

-あの役を有森さんにというのはすごいですね-

「そうですね。でも、あの作品は『仁義の墓場』(深作欣二監督)のリメイクなんですけど、『仁義の墓場』の多岐川裕美さんはすてきでした」

-清純で可憐な女性が堕ちていくというのは演じ甲斐があったのでは?-

「そうですね。おもしろかったです」

-経験のないことを演じるわけですが、役作りはどのように?-

「実際にやってみるわけにはいかないので、もう感覚ですよね」

-終盤の岸谷さんとの車のシーンでは、覚せい剤中毒で精神状態がおかしくなって自ら頭を窓に何度もぶつけて血まみれになったり…完全に別の世界に行っちゃっていましたよね-

「そうですね。フィクションの世界だからこそ思い切った表現でキャラクターを作ることに挑めるのでしょうね。想像を巡らせながら、現場でその時々に感じたフィーリングを大事にして作っていく三池組はワクワクの連続でした」

-出来上がった作品をご覧になっていかがでした?-

「岸谷さんがカッコよすぎて、『しびれるー』って感じでした(笑)」

-三池監督は現場ではどんな感じでした?-

「パワフルでした。現場で脚本からガラッと変わることもあって、智恵子の最後のシーンの死に方もそうでした」

-かなり過激な作品でしたが、躊躇しませんでした?-

「私はそんなに覚悟を決めてという感じではありませんでした。別にヌードがあるわけじゃないしね。お尻は見えちゃったけど(笑)。あと、オリジナルの『仁義の墓場』という作品があったので、時代を現代としてリメイクするというのはどんな作品になるのかしら…と興奮しました」

-グラビアでもいろんな挑戦をされていますが、きれいですね-

「ありがとうございます。あれはもう写真マジックで(笑)。皆さんの力があってのことなので」

-グラビアはやられていていかがですか-

「グラビアは、自分との距離が近いですね。それがおもしろさでもあり怖さでもあります。やっぱり映画は監督のもの、舞台は何か表現しきれない、届かない。とくに井上(ひさし)先生の作品はやってもやっても届かない。

どんなにあがいてもなかなか自分のものになっていかない。どこかいつも遠いものに手を伸ばしているというような、ツラさみたいなのがあるんですよね。でも、グラビアはその時々のリアルな自分が写ります」

バレエで鍛え上げたプロポーションが美しい。さまざまなチャレンジを続けている有森さん。

次回後編ではさらなる過激なシーンに挑んだ4時間超えの映画『いぬむこいり』(片嶋一貴監督)の撮影裏話、7月10日(土)に公開される映画『ねばぎば 新世界』(上西雄大監督)の撮影エピソード、37年間在籍した事務所からの独立についても紹介。(津島令子)

©︎ YUDAI UENISHI

※映画『ねばぎば 新世界』(上西雄大監督)
2021年7月10日(土)より新宿ケイズシネマほか全国順次公開
配給:10ANTS、渋谷プロダクション
出演:赤井英和 上西雄大 田中要次 菅田俊 有森也実 小沢仁志 西岡德馬
大阪新世界を舞台に、かつてヤクザの組を潰してまわっていた勝吉(赤井英和)と弟分のコオロギ(上西雄大)が、宗教団体から逃げ出した一人の少年と出会ったことをきっかけに、かつての恩師の娘(有森也実)を助けるために立ち上がる…。

※舞台『ある八重子物語』(劇団民藝+こまつ座公演)
2021年6月17日(木)~27日(日)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
作:井上ひさし 演出:丹野郁弓
出演:日色ともゑ 有森也実 篠田三郎
ある病院を舞台に、新派を愛する人びとによって語られる八重子の芸と生きざまとは…。

テレ朝POST

自分の好きな番組を、好きな時、好きな場所、好きなデバイス(PC、スマホ、タブレット)で自由に視聴できる民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」。見逃したドラマや、もう一度見たいバラエティなど、番組放送終了後から約7日間無料で見放題ということもあり、多くの人に利用されています。

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