きっかけは “モー娘。”のダンス!日本ではじめて女子プロ野球選手が誕生した奇跡の実話

公開: 更新: テレ朝POST

今から約12年前、17歳の若さでプロ野球界に現れ、“ナックル姫”の愛称で一世を風靡した女子選手を覚えているだろうか?

2月8日(月)放送の『激レアさんを連れてきた。』には、日本プロ野球史上初、男性と同じチームに所属した唯一の女子プロ野球選手・吉田えりが登場。

彼女の最大にして最強の武器「魔球・ナックル」にまつわるドラマチックな物語を紹介した。

日本のプロ選手のほとんどが成し得なかった魔球“ナックルボール”を武器に、一回り以上体格の違う男性プロ野球選手から凡打の山を築き、本場アメリカでも活躍。ついにはアメリカの野球殿堂入りまではたした吉田えり。

彼女がナックルと出会ったのは、中学3年生のときだった。

当時から男子と一緒に野球をするなか、体格差で力負けするのが悔しくてたまらなかった吉田は、父親から漫画『野球狂の詩』を手渡される。

作中で女性プロ野球選手・水原勇気の投げる「ドリームボール」にあこがれ、この魔球を投げてみたい一心で研究すると、メジャーリーガーのティム・ウェイクフィールドが投げていた「ナックルボール」に似ていることが判明

ナックルボールとは、ほぼ無回転で軌道が不規則に変化する球種のひとつで、バッターどころか投げているピッチャーですら変化を読めないこともある、究極の変化球だ。

ウェイクフィールドは元々野手だったが、偶然このボールに出会い、投手に転向して200勝を達成した。

この事実に、「どれだけ力の差があっても、ナックルがあれば逆転できる!」と考えた吉田は、さっそくナックルボールを投げる練習を開始する。

さらに高校1年生になると、プロ野球選手になるため、すべての時間をナックルに捧げる“ナックルボール一筋”の生活に突入。

学校ではウェイクフィールドの写真を参考にナックルの握りを練習し、デートでは彼氏を相手に公園でナックルを練習。さらに、家に帰るとガムテープで指とボールをグルグル巻きにし、ナックルの握りのまま就寝した。

そんな生活を続けること1年半。結果はというと、残念ながら吉田のナックルはまったく変化していなかった。

焦りと不安で半ばあきらめかけていたそのとき、奇跡は意外な形でやってくる。

◆きっかけはモー娘。のダンス!

いくら練習しても一向に変化しないボール。焦りと不安で自暴自棄になってしまった吉田は、父とのキャッチボール中、なぜかモーニング娘。のダンスを踊りながらキャッチボールをするようになっていた。

サビの振り付けに差し掛かったタイミングで勢いよくボールをリリースしたそのとき、指に今まで感じことのない感触を覚える。そして解き放たれたボールは、なんと右、左にと不規則に揺れ出した。

つまり吉田は、モー娘。のおかげでナックルのコツを掴んだのだ。

その後、10球投げて1球成功、5球投げて1球成功と、徐々にナックルの精度を高め、手ごたえを感じた吉田は、「プロへのトライアウト」に挑むことになる。

◆トライアウトでもナックルをアピール

ナックルを練習し続けることおよそ2年、高校2年生になった頃、吉田の元に「関西独立リーグ発足」という吉報が舞い込んだ。

独立リーグとは、地域が独自に運営する野球のプロリーグのことで、トップリーグ(NPB)への登竜門にもなっている。

この報せを聞いた吉田は、「NPBに一歩近づける!」と思い、トライアウト挑戦を決意した。

迎えたトライアウト当日。プロを夢見て全国から集まった400人の選手のなか、吉田は物怖じせずに無回転のナックルをしっかりアピール。はじめての実戦でも、ナックルボールを次々と決め、4人の打者をノーヒットに抑え込んだ。

その結果、神戸9クルーズからドラフト7位指名を受け、高校2年生にして見事念願のプロ入りが決定。日本プロ野球史上初の女子選手誕生に、世間は大いに沸いた。

しかし、話はこれだけでは終わらない。この後、ついに吉田の人生を変えてくれた人物と奇跡の出会いをはたしたのだ。

◆野球の本場アメリカで出会った恩人

実は吉田、プロ入りしたものの、まだまだナックルの完成度は高くなく、試合で思ったような成績を上げられなかった。

ナックルの精度を挙げるべきだと考えた吉田は、野球の本場・アメリカ行きを決意。

日本の球団を退団後すぐさま渡米し、世界各地からプロ志願者が集まるスカウトリーグ「ウィンターリーグ」に参加。およそ4週間のテストを終え、独立プロ球団「チコ・アウトローズ」と契約した。

ところが、この渡米が原因で極度のコントロール不振に陥り、競技人生最大のピンチに直面してしまう。

考えれば考えるほど悪くなっていくコントロール。「ここが私の限界なのかな…」と思い、帰国を決意していたそのとき、テレビの企画で憧れのウェイクフィールド選手ご本人からナックルを教わるという、夢のような機会がやって来た。

人生を変えてくれた恩人と対面した吉田は、意外にもウェイクフィールド自身ナックルボールのコントロールに悩んだ時期があったことを知る。

「それでもナックルを投げるのをやめなかった」というウェイクフィールドの言葉に、「苦しいけど、ここであきらめたらダメだな」とパワーをもらった吉田。

この教えを胸に新たな一歩を踏み出し、モー娘。のフォームを捨て、新たなフォームに改革。その後、移籍先のチームで5回を無失点に抑え、念願のプロ初勝利をあげた。

ナックルという魔球を死に物狂いで武器にし、あきらめずに挑戦し続けたことで、偉業を達成することができたのだ。

現在は国内の女子野球のチームで野球をつづけているという吉田。番組終盤にはこれまでの経験を振り返り、「ナックルにこだわって、あきらめないでよかったなと思いました」と笑顔で語った。

※番組情報:『激レアさんを連れてきた。
毎週月曜 よる11:15~深夜0:15、テレビ朝日系列(※一部地域を除く)
※『激レアさんを連れてきた。』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)
※過去回は、動画配信プラットフォーム「テラサ」で配信中

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