34歳で迎えた初ドラフト…田澤純一が今だから語る”正直な想い”「自分の力がなかった」

公開: 更新: テレ朝POST

2020年プロ野球ドラフト会議。史上最年長での指名が注目された、異色のドラフト候補がいた。

BCリーグ、埼玉武蔵ヒートベアーズ・田澤純一(34歳)。

日本のプロ野球を経験せずに海を渡り、メジャーで実働9年。通算388試合に登板し、ワールドシリーズ制覇にも貢献した投手である。

前代未聞のメジャー挑戦、その知られざる本音。そして期せずして作られ、名付けられた「田澤ルール」。

11月15日(日)の『GET SPORTS』では、田澤純一を特集。ドラフトを終えた今、野球人・田澤純一、34歳が真実を語った。

◆問題視されたメジャー挑戦

2020年10月18日(日)、同月26日(月)に開催されるドラフト会議を直前に控えた田澤は、次のように心境を語っていた。

「残りの野球人生は長いとは思っていないので。以前であれば田澤ルールがありましたけど、34歳で18歳の青年たちと一緒に選ばれる可能性があると考えると、不思議だなと思います」

34歳にしてドラフトを待つ理由は、12年前の2008年までさかのぼる。

当時22歳の田澤は、社会人の名門・新日本石油ENEOS(現ENEOS)のエースとして名をはせていた。

150キロを優に超える剛速球を武器に、社会人野球最高峰の舞台、都市対抗で優勝の原動力となる活躍を見せる。プロでも即戦力と騒がれ、ドラフトの目玉候補として進路が注目されたが、NPB入りを拒否し、メジャーリーグ挑戦を表明した。

当時は語らなかった決断の真の理由について、田澤はこう話す。

「社会人からプロに行ったら即戦力とすごく言われるので、その自信がなかったのが一番大きいと思います。そもそも『自分はメジャーでできるぞ』という感じで行ったわけではなく、『どうしたら成長できるかな』と考えたうえでの決断で、マイナーで自分がどう成長できるかということに興味があって行った感じです」

「ただ成長したい…」その一心で、ボストン・レッドソックスに入団。しかし、若者の前例なき挑戦は、日本球界で問題視された。

NPBはこの騒動をきっかけに、若き逸材の海外流出を防ぐルールを作る。ドラフトの指名を拒否し海外チームと契約した選手は、退団後も一定期間NPBの球団と契約できないという、通称「田澤ルール」である。

退路を断たれた形となった田澤は、渡米から数か月間マイナーで腕を磨き、1年目にしてメジャーで初先発・初勝利をあげる。

その後はリリーフに活路を見出し、セットアッパーとして地位を築いていった。2013年にはワールドシリーズ制覇にも大きく貢献。

しかし2020年3月、マイナー契約をしていたレッズから解雇されてしまう。

コロナ禍も影響し、日本に帰国するも、「田澤ルール」で2年間NPB入りはできない。そこで野球を続ける場所を求め選んだのは、NPBを志す若い選手が集う独立リーグの埼玉武蔵ヒートベアーズだった。

ほどなくして迎えたBCリーグでの初登板は、慣れ親しんだリリーフ。6回から登板すると、その実力を見せつける。

152キロを計測し、1イニング2三振のパーフェクトピッチング。実に12年ぶりとなる日本のマウンドで結果を出した。

◆「田澤ルールはもう使われてほしくない」

すると9月、思いがけない朗報が届く。なんと、急遽「田澤ルール」が撤廃となり、2020年のドラフトで指名を受ければ、NPB入りが可能になったのだ。

それは、背負い続けた長年の呪縛からの解放でもあった。

「変わったことに関しては、感謝しなきゃいけないなと思いますし、田澤ルールはもう使われてほしくないなというのはあります」(田澤)

よろこびの一方で、12年ぶりの日本でのプレーに戸惑うことも。日本とアメリカでは作りが異なる、ボールとマウンドへの対応だ。

「久々だなって感覚はあるんですけど、イマイチ対応できなかったと思います」(田澤)

不慣れな環境の対応に苦しみながらも16試合に登板し、防御率は3.94。実力と実績からするとやや物足りない成績だが、要所で投じる力強いボールは衰えを感じさせなかった。

いよいよドラフト史上最年長、34歳での指名が現実味を帯びてくる。

そして迎えたドラフト当日。会見場には大勢のマスコミが集うなか、田澤は別室で待機。指名後に会見をするはずだった。

しかし、育成ドラフトでもその名は呼ばれず、結局田澤が会見場に姿を現すことはなかった。

◆まさかの指名なし。今だからこそ明かす正直な想い

数日後、田澤ははじめてドラフトを終えた思いを語った。

「自分の力がなかったということだと思うのでそこは真摯に受け止めて、また野球がしたくなるのか、それとも身を引くのか考えていきたいと思います」

それでも、BCリーグに来たからこそ得られたものはある。

「ファンが横断幕を作ってくれて、応援してくれて、最後の試合も一緒に写真を撮ったりして、そういうのはすごくいいなと思いました。34歳になって若い世代の人とプレーすることやはじめて人に指導する難しさも感じられたので、野球人生においてプラスになったと思います」(田澤)

現役続行か、引退か。どんな決断をしても、野球人・田澤純一が進む道に終わりはない。

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜日夜25時25分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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