天才4回転ジャンパー・トゥルソワ、プルシェンコとの新タッグに期待。織田信成「相性がすごくいいのかなと感じる」

公開: 更新: テレ朝POST

新型コロナウイルス感染症の影響により、イレギュラーな形での開催がつづいているフィギュアスケート・グランプリシリーズ

6大会のうちカナダ大会とフランス大会は中止となり、アメリカ大会と中国大会の2大会が、ともに無観客という形で開催された。

グランプリシリーズ解説者の織田信成氏は、ここまでの戦いをどう見ているのか。

中国大会の男女シングルで解説も務めた彼に、同大会で感じたことや注目の次戦・ロシア大会の展望を語ってもらった。

◆北京五輪に向け、力をつけている中国勢

今季のグランプリシリーズ、選手たちは、自国開催の大会か練習拠点を置く国(近隣国含む)の1大会のみ出場することができる。

感染防止策として無観客で行われた初戦・アメリカ大会は、客席にファンの顔写真がプリントされた「観客ボード」が設置され、演技の前後に録音した歓声や拍手を流す演出が話題に。

つづく中国大会でも、ファンが手作りしたバナー(選手のイラスト入りなどの力作)が掲げられるなど、無観客ならではの工夫が多く見受けられた。


そんな環境のなか、男子シングルでは金博洋(キン・ハクヨウ)が合計290・89点でトップに立ち、女子シングルでは陳虹伊(チン・コウイ)が186.53点で初優勝を飾った中国大会。

織田氏はどんな印象を抱いたのだろうか。

織田信成(以下、織田):「男子はやはり金博洋選手と閆涵選手(エン・カン)。この2選手は調子も保ったまま、試合で力を発揮しているなと感じました。女子も陳虹伊(チン・コウイ)選手が素晴らしい演技で、中国の選手は北京冬季五輪(2022年)があるので、どの選手もモチベーションが高いなという印象でした」

――金博洋選手と閆涵選手の、「ここがよかった」という点は?
織田:「閆涵選手は、4回転ジャンプこそ跳ばなかったのですが、それ以外のジャンプの安定感がすごく増したなと感じました。スピン、ステップでも取りこぼしが全然なくなっていたので、そういったところもすごく練習してきたんだろうなと思いました。

金博洋選手は、4回転ルッツをショートもフリーもしっかり決めてきたというところですね。今までは転倒することも結構あったので、そこを決められたというのは本人にとってすごく自信になったと思います。また、ショートもフリーもジャンプだけじゃなく、プログラムもすごく凝っているので、『挑戦しているな』『いいプログラムを作ってもらったんだな』と感じました」

――これまで金博洋選手は、ジャンプのイメージが強かったなかで、五輪前のプレシーズンでこういう(挑戦的な)プログラムにしてきたことに、何か意図などは感じましたか?
織田:「ショートがとくに前衛的というか、いままでにない振り付けで踊っていたと思うんですけど、なかなかそういう挑戦的な曲を五輪シーズンにもってくるのは難しいので、(今シーズンは)いろいろ引き出しを作っておいて、五輪でどういう曲、どういうプログラム構成でいくかを決めると思います。

そういう意味では、新しい引き出しが増えたんじゃないでしょうか」

――北京五輪の上位争いに期待感は出てきましたか?
織田:「期待感も増えてきましたし、あれだけの4回転ルッツを跳ばれると、日本の選手も勝つのがなかなか難しくなると思うので、ちょっとうかうかしていられないというのがありますね」

◆「ロシアを制す者が、世界を制す」コーチを変更した2選手に注目

次戦・ロシア大会は、強豪選手たちが出場する注目の一戦。

通常のグランプリシリーズの規定では、各大会に同じ国から出場できる人数は原則最大3名(3組)と決まっているが、今年はコロナ禍での開催に伴う特別な規定により、母国開催のロシア選手は女子7名、男子8名がエントリー(11月13日時点)。

例年は大会ごとに分散するメダリストクラスの選手が一堂に会する特別な大会となる。

女子選手は、アリョーナ・コストルナヤアンナ・シェルバコワアレクサンドラ・トゥルソワという2019年のグランプリファイナルで表彰台を独占した成長著しい10代の3選手らが参戦。

通常のグランプリシリーズではかなわない、強豪選手同士の直接対決が繰り広げられることになる。

なかでもトゥルソワは、昨シーズンまで指導を受けていたエテリ・トゥトベリーゼから、五輪2大会金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコにコーチを変更。ロシアカップでは3種類の4回転を組み込んだ男子顔負けの構成に挑戦するなど、さらなる進化を見せている。

――次のロシア大会に向けて、織田さんが思う注目ポイントは?

織田:「『ロシアを制す者が、世界を制す』じゃないですけど、ロシアでトップになれれば必然的に世界でもトップになってくると思うので、その辺りの上位争いが注目。ジャッジの人も、たぶん細かく見ていると思うので、誰がトップに立つかが一番気になっていますね」

――去年のグランプリファイナルのトップ3がいるなかで、誰に注目していますか?
織田:「今、一番注目しているのはトゥルソワ選手。プルシェンコ氏にコーチを変更して、ここまで行われた国内大会(ロシアカップ)を通して見ていると彼女とコーチの相性がすごくいいのかなと感じます。プルシェンココーチとトゥルソワ選手の新しいタッグが、どんな風に花開くか注目しています」

――「こんな風に花開くんじゃないかな?」という予想はありますか?
織田:「4回転ループやトリプルアクセルなどいろいろな技を練習している情報が入ってきているので、どういう構成にするかというところだと思います。プルシェンココーチは、現役のときから4回転ジャンプをひとつのポリシーとしてやってきた選手なので、4回転ジャンプを増やして挑戦してくることもあるのかなと思っています」

――トゥルソワ選手は昨シーズンからたくさんの4回転ジャンプを跳んでいましたよね?
織田:「昨シーズンの時点でもすでに4本、5本跳んでいたと思うんですけど、それに近いくらいの構成で挑戦してくるんじゃないかと思いますね。やはりファイターですし、自分の武器は4回転ジャンプだと十分わかっていると思うので、すごく楽しみです」

――男子の注目選手がいれば教えてください。
織田:「今一番注目しているのはミハイル・コリヤダ選手。彼もミーシン氏にコーチを変更してはじめてのシーズンなんですが、すごく調子がいいし、4回転ジャンプの安定感もミーシンコーチの新たな技術によって生まれ変わったなという感じがします。なおかつ、素晴らしいスケーティングスキルがあるので、彼も次の五輪に向けて調子を上げてきている段階なのかなと思います」

――2019年のグランプリファイナルに出場したアレクサンドル・サマリンやドミトリー・アリエフもいるのでレベルは高いでしょうか?
織田:「レベルは高いと思いますね。サマリン選手もアリエフ選手も4回転ルッツを跳んでくると思うので、男子の4回転争いも目が離せないです」

※番組情報:『フィギュアスケート・グランプリシリーズ2020「第5戦・ロシア大会」
11月20日(金) 深夜3:00~「女子ショート」 テレビ朝日(関東地区)にて放送
11月21日(土) 深夜3:00~「女子フリー」 テレビ朝日(関東地区)にて放送
11月20日(金)  よる7:25~「男子ショート」 CSテレ朝チャンネル2
11月20日(金)  深夜1:20~「女子ショート」 CSテレ朝チャンネル2
11月21日(土)  よる7:25~「男子フリー」 CSテレ朝チャンネル2
11月21日(土)  深夜1:05~「女子フリー」 CSテレ朝チャンネル2
11月22日(日)  よる8:55~ 「エキシビション」 CSテレ朝チャンネル2

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