桐山漣「毎回“この仕事が最後になるかもしれない”という思いで…」幅広い役柄への挑戦

公開: 更新: テレ朝POST

『ミュージカル テニスの王子様』、『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)で注目を集めた桐山漣(※桐山漣の漣はさんずいに連が正式表記)さん。

作品ごとに違うイメージの役柄に挑戦し、ドラマ、映画に多数出演。

2013年に公開された主演映画『東京闇虫』では借金まみれのどん底の人生から這い上がろうと奮闘する若者。映画『曇天に笑う』では白髪の忍者・金城白子。主演ドラマ『コードネームミラージュ』(テレビ東京系)では和製ジェームズ・ボンドと呼びたくなる特殊工作員・ミラージュ。

さまざまなフィールドで幅広い役柄に挑み、まったく違う顔を見せながら着実にキャリアを重ねている。

 

◆ワンカット地獄と関西弁に悪戦苦闘!

主演映画『東京闇虫』(2013年)で桐山さんが演じた主人公・加藤は、ギャンブルで多重債務者となってしまい、借金返済のためにミステリアスな男・浅村(豊原功補)のもと、指定された相手に謎の封筒を届けるという怪しい仕事を請け負うことになるが、とんでもないトラブルに巻き込まれていく。

「自分以外はみんな闇の人間。非現実的なものをいかに現実的に見せるかが自分の仕事だと思っているので、そういう役を演じるのは楽しかったですね。

ただ、関西弁には苦労しました。やるからには関西の方が見たときに、違和感がないようにと思って、関西弁のセリフをiPodに入れて聞いたり、関西の友だちに電話して教えてもらったりしました。

関西弁を意識しすぎると感情がおろそかになってしまうし、感情を意識しすぎると怪しげな関西弁になってしまうので、そこは難しかったです。

約10日間で撮影というハードスケジュールでしたし、とにかくワンカット(カットを割らずカメラを回し続けシーンを撮影する)が大好きな監督だったので、ワンカット地獄に不慣れな関西弁で立ち向かう日々でした(笑)」

桐山さんが心配していた関西弁も、関西出身で冷酷なヤクザ・鯖田役を演じたやべきょうすけさんから「全然イケてたよ」とお墨付きをもらえてホッとしたという。

2017年には自身初となる2クール(6か月)連続のドラマ『コードネーム ミラージュ』に主演。世間に明るみに出ない犯罪を処理する使命をもつ警察内特殊部隊「K-13」の謎めいた特殊工作員ミラージュを熱演。身体能力の高さを活かしたスタイリッシュなアクションシーンも話題に。

-アクションシーンもかなりありましたが、トレーニングなどはされて撮影に?-

「もちろんそのときは普段以上に鍛えていました。ミラージュに関しては、殺し屋という設定ですし、きれいにスーツを着たいと思ったので、説得力があるようなボディーじゃないとダメだなと思って、スーツが映える体に鍛えました。

あと、やっぱり年齢もあるとは思いますね。ただでさえ着痩せしてしまうし、線が細く見られがちなので、この歳で細いままだと役柄の幅も狭まってきてしまう。ですから普段からコンスタントに鍛えに行くようにしてるんです。

休みなしで仕事がしばらく続いてると、行けないことがすこしストレスになったりするくらい(笑)。

ミラージュのときにはクランクインする1か月前から、ほぼ毎日アクション監督の園村(健介)さんに徹底的にアクションを鍛えてもらいました。

アクションに携(たずさ)わる作品はミラージュの前にも結構やっていたんですけど、あんなにみっちりやったのははじめてでした」

-アクションのキレもすごかったですが、食事なども気をつけているのですか?-

「そうですね。もう30代なので、好きな時間に好きなものを食べていたりすると、本当に体に素直に出てきてしまいますからね(笑)。

だから、寝る4時間前までに晩ご飯は済ませるとか、炭水化物の量を減らすとかしています。

もちろん食べたいですよ(笑)。食べたいけど、それはやっぱり自分の仕事のために、何かを我慢しないと自分は保てないし、いいパフォーマンスもできないと思うので。

そういったものが自分の未来につながっていくと思うと、やっぱり一時の欲は抑えないといけないなと思います」

-ものすごくきちんとして建設的ですね-

「10年以上、こうやって自分の好きなことをやらせてもらえて、こういう仕事に携わることができているのは幸せなことだなって思うんです。

やっぱりいいことも悪いことも自分で肌で感じながらやってこられたかなあって。だから、毎回、『この仕事が最後になるかもしれない』という思いで挑んでいます。

『これが最後かもしれない』と思っていると、そのときそのときで出し切ろうと思えるし、やっぱりそういった気持ちで自分はパフォーマンスに影響してくると思うから。

そんなことを裏では考えながら役柄に生き様と役の思いをのせてセリフを吐き出しています」

 

◆コメディーで新境地を開拓

近年はコメディードラマの出演も続き、『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ・日本テレビ系)の変顔全開のユニークな役柄も話題に。

-シリアスなものからコメディーやホラーまで幅広いジャンルの作品に出演されていますね-

「コメディーのお話をいただけるようになったのは、わりと近年なんですよね。2018年ぐらいかな? 『磁石男2015』(日本テレビ系)もキャラクター的には強かったですね。

『磁石男』は、自分のなかではあまりコメディーという感覚がないんです。ただ、帰国子女でちょっと観点がずれているという感じで。

『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系)でコメディーの楽しさを感じて、その後に自分の劇的な出会いだったのが、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)でした」

古田新太さんのスカート姿が強烈でしたね-

「『俺スカ』はほんとに大きかったですね、自分のなかで。新太さんとずっと一緒にいたし、本当に新太さんとのかけあいが多くて振り回される役だったので。

こういう受けの頼りない先生役もはじめてだったんです。それを言ったら、『探偵が早すぎる』や『おじカワ』は攻めが多い発信系。『いいね!光源氏くん』(NHK)の中ちゃんもそうでした」

-そういう意味ではおもしろいですよね、役の幅が広くて-

「そうですね。受けもボケもツッコミも。幅広くお声がけいただいていることがありがたいというか。自分のなかでは、毎回挑戦者の気持ちで現場には入っているんですけど」

-コメディー作品をやりつつ、映画では『曇天に笑う』などまったくジャンルの違う作品も。白髪姿も雰囲気がありました-

「そうですね。あれは原作が真っ白の髪の毛だったので」

-原作ものも結構やられていますけれどもプレッシャーは?-

「原作ものだと原作のファンもいるし、自分がその役を演じたことによって、せっかくもともと気にかけてもくれる層である原作ファンを失望させてもいけないし…。

皆さんがこの作品のことが好きで、この役はこういうところが好きというのを理解するには、やっぱり原作を見ておくのと見ておかないのとでは全然違うから、そこの思いは一旦自分のなかに落とし込んだ上で、現場に入るようにしています。

それを引き出しから拾って出せるときと、出せないときがありますけどね。やっぱり演出上できることとできないときがあるので。

どっちもやっぱり自分にとっては大事だから、歩み寄るという感じ。別に原作の真似事をするつもりはさらさらないし、原作ものであろうがなかろうが、人としてきちんと生きることをテーマに近年はやらせてもらえていますね」

-かなりコアな原作ファンも多いと思いますが?-

「プレッシャーには僕は思わないです。プレッシャーを感じちゃうとできないですから。

自分の人生を振り返ると、僕は最初の『ミュージカル テニスの王子様』も原作もので、原作ものからスタートしているんですよね。

そこから、ドラマや映画で原作ものを多く経験させてもらえてきたので、とくに原作ものだから構えちゃうということはないです。

『原作があって、そこから拾えるものがあるんだったらラッキーじゃん』くらいの気持ちですね」

-参考書みたいな感じですか?-

「そうです。困ったときに参考書として見ればいいという感じで、そこから拾えるものがあったら出せれば。

あまり出せないような台本だったら、しょうがないけど、出せるようだったらチャンスは窺(うかが)うみたいな感覚ですね」

-役作りに関してはご自身のアイデアもいろいろ出されるそうですね-

「そうですね。あとやっているときって、やりながらいつもその役のことを考えているので。

仕事が終わって車を運転しながら帰るときとかに、たとえばそういった何気ない日常からその役のことを考えていたりするから、そこからフッとうまれてくるインスピレーションだったり、ここでこういうことをしたらおもしろいかなとか思いつくときがあるんですよね。

今度これをちょっと仕掛けてみようかなとか。『おじカワ』では、『多分眞島秀和さんだったら反応してくれるだろうな』とか。

やっぱり眞島秀和さんは本当に懐が深いので、そういう状況も楽しんでくれました(笑)。

眞島秀和さんに関しては、役の設定上受けになっちゃうから、僕が仕掛けていく感じにはなっていたんですけど、いいセッションになったんじゃないかなと僕は思っています」

『おじカワ』では眞島さん演じる主人公・小路三貴を一方的にライバル視し、何かというと突っかかる鳴戸渡役を演じた桐山さん。猫が大好きで猫じゃらしを手に「ネコちゃーん」と猫撫で声で迫ったり、ユニークな表情変化も話題になった。

次回後編では12月4日(金)に公開される主演映画『海の底からモナムール』の撮影裏話、コロナ禍での日々などを紹介。(津島令子)

ヘアメイク:江夏智也(raftel)
スタイリスト:吉田ナオキ
衣装協力:WYM LIDNM、REV、GARNI、NUG

※映画『海の底からモナムール』
12月4日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにてロードショー
脚本・監督:ロナン・ジル 配給: アルミード
出演:桐山漣 清水くるみ 三津谷葉子 前野朋哉 杉野希妃
10年前、イジメに遭い、崖から飛び降りたミユキ(清水くるみ)は、タクマ(桐山漣)に「ただ愛されたい」という一心で、17歳のままの姿で海底を漂っている。10年後、高校卒業後初めて島を訪れることになったタクマたちに待っていたのは…

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