GPシリーズ欠場の羽生結弦へ「本当に責任ある行動だと思う」ネイサン・チェンが語るライバルへの想い

公開: 更新: テレ朝POST

いよいよ、本格的なシーズン開幕となる「フィギュアスケート・グランプリシリーズ」。今年も日本時間の10月24日(土)よりはじまる「アメリカ大会」から、世界のトップスケーターたちの戦いが幕を開ける。

初戦の「アメリカ大会」には、グランプリファイナル3連覇中のネイサン・チェン(アメリカ)が登場。新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間を経て、今シーズン初戦を迎える。

9月22日(火)にCSテレ朝チャンネル2で放送されたスポーツ番組『私が今やるべきこと ~フィギュアスケーターたちの2020~』では、ネイサン・チェンにリモートインタビュー。テレ朝POSTでは番組未公開パートを加え、前後編の2回にわけてこのインタビューの模様をお届けする。

後編となる今回は、今シーズンの新プログラムや欠場する羽生結弦への想いについて聞いた。

◆「今シーズンはかなり未知数」

――今シーズンの新プログラムについて教えてください。どんなプログラムですか?
ネイサン・チェン(以下、チェン):両プログラムとも変えました。両方ともシェイリン・ボーンの振り付けによる新しいプログラムです。

――毎年、新しいことに挑戦していますよね。昨年のロケットマンのヒップホップの部分はとてもよかったです。新しいプログラムにもまた新しい挑戦がありますか?
チェン:正直に言うと、この2つのプログラムは、とくに今年のフリーの方はそこまで挑戦的ではないというか、もっとしっくりくる言葉があるのですが、今思いつきませんが、僕にとってより居心地のいいもので、過去にやったことのあるものに近いです。

でももちろんシェイリンと作業をすること自体がチャレンジというか、彼女はいつももっと興味深いものにしようとしますし、過去の振り付けと同じ動きを繰り返さないように気を付けてくれます。

新しい動き、新しい感情、プログラム内の新しいキャラクターを表現しつづけようとしてくれます。だからそれがこのフリースケーティングでの挑戦だと思います。

ショートプログラムはとてもキャラクター性の強いものになります。僕が過去にやったいくつかのプログラムと似ていて、とてもキャラクター性が強かった「キャラバン」と似ています。

ショートプログラムはとても速いペースで、フリースケーティングはもっとゆったりとしたペースです。だからその2つの切り替えが挑戦になると思います。昨年のロケットマンと比べると、必ずしもあのヒップホップの部分のような挑戦はないですが、(今年のプログラムは)とても違うものになっています。

――今年はこれまでのシーズンとは少し違うと思いますが、今シーズンの目標は? 何を目標にしますか?
チェン:それをいうのは難しいですね。ある程度の試合のガイドラインは発表されましたが、今シーズンはかなり未知数です。

でもアメリカ大会に出る機会が得られて、全米選手権、そしてうまくいけば四大陸選手権や世界選手権にも出る機会が得られれば、それだけでうれしいです。(※インタビュー後、四大陸選手権の中止が発表された)

グランプリシリーズには1大会しか出場できないですが、試合数が少なくなったことで、すべてのアスリートがより向上するきっかけになるかもしれません。なぜなら試合の期間中は1試合1試合に常に集中しているからです。今ならたとえば基礎的な振り付けや基礎的なスピンなど、基礎的な技術を向上することができて、大きな大会の時期までにはより強くなれます。

◆「彼の立場としては本当に責任ある行動」

――羽生選手が今シーズンはグランプリシリーズを欠場することは知っていますか?
チェン:ええ、聞きました。彼の立場としては本当に責任ある行動だと思います。彼が出場する試合で彼がどれだけ人の動きをつくり出すかを考えると、彼の立場でそうすることは確実にとても責任あることだと思います。

でもほかのアスリートにとって、少なくとも僕自身や僕が知る何人かのアスリートにとって、こういった試合やアイスショーの多くはトレーニングをつづけるための資金源でもあります。

スケートはとてもお金のかかるスポーツです。試合やアイスショーから得られる資金なしではコーチや振り付け、氷上練習時間を確保することはときとして難しいものです。だから僕は可能な限り、トレーニングを続けるための助けになるそういった機会を利用しようとしています。それが僕が今季グランプリシリーズに出ることを決めた理由と背景です。

アメリカ大会もすべてのグランプリシリーズも、観客を減らしたり、無観客にしたり、すべてのスケーターやコーチにとって安全な対策を取るなど、極めて責任あるやり方で開催されるようです。

そうあるように僕は願っていますが、もし物事が変わって、リスクが高過ぎると判断したら僕も考えを変える可能性はあります。でも今現在は試合に出られる機会を本当に楽しみにしています。

◆羽生は「神のような大きな存在」

――もう何度も日本のメディアから聞かれていると思いますが、あなたにとって羽生選手はどんな存在ですか?
チェン:彼はこの競技のレジェンドです。彼は人々のフィギュアスケートに対する見方やフィギュアスケートのあるべき姿への期待値に革命をもたらしました。男子フィギュアスケートにおいて確実に大いなる先駆者です。もちろん彼以前にも同じようなことを達成したレジェンドはいましたが、彼は僕たちの競技において先駆者として大きな前進を成し遂げたと思います。

2大会連続でオリンピック・チャンピオンになることは至難の業です。彼がそれをどう成し遂げたかということは極めて素晴らしいことです。彼のような大きな存在のスポーツ選手に憧れた子どもとして、彼のいい演技、素晴らしい演技、そしてときにはそこまでよくない演技を見ながら、彼も同じ人間で失敗もするけれど、肝心なところで彼はいいパフォーマンスができるということを見ることができて最高でした。

彼はまるで神のような大きな存在ですけど、そんな彼ですら今でも調子の悪い日があり、それを乗り越え、懸命に練習をして、目標を達成しているんだということを子どもながらに知って感銘を受けました。僕の成長過程でそんな彼の姿を見られたことは僕にとってとても大きな意味を持ちます。そんな彼と試合で競い合える機会があることをいつも光栄に思っています。

番組情報:『フィギュアスケート・グランプリシリーズ2020「第1戦・アメリカ大会」』
10月24日(土)     あさ8:05~「男女ショート」 CSテレ朝チャンネル2
10月24日(土)     深夜2:55~「男女フリー」 CSテレ朝チャンネル2

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