「なりたい仕事がない…」高校3年時、“卒業後の進路”にアイドルを選び、勝ち取った少女<大場結女>

公開: 更新: テレ朝POST

秋元康プロデュースによる、『ラストアイドル(テレビ朝日系、2017年8月に放送開始)で活動を開始したアイドルのひとり、ラストアイドル2期生の大場結女(おおば・ゆめ)。

ラストアイドル2期生の大場結女

中学では管弦楽部の部活動、高校ではアルバイトに明け暮れる日々を送った彼女。

高校3年生になり、卒業後の進路を本格的に考える時期が迫り、家庭の事情で就職を目指すことになった大場。

だが、興味をもてる仕事がない。

そんな時期に、大好きだったラストアイドルのオーディション情報を知った彼女。

興味をもてない仕事をいやいやこなすよりも、どうせだったら、憧れの世界にチャレンジしてみたいーー。

そんな想いから友人に背中を押され、ダメ元でオーディションに応募したところ、奇跡が起きた。

彼女は、就職活動の選択肢のひとつとして、アイドルの道を選んだのだった。

はたして彼女は、アイドルになって望んでいたものを得たのかーー。『ラストアイドル』に賭けた少女たちの、ビフォーアフターに迫る。

◆「高校まで普通にオタク生活を楽しんでいました(笑)」

2000年12月、千葉県で生まれた大場結女。

生後4か月のころ

母親との1枚

カメラを向けられるとすぐにポーズする子どもだった

オーディションやバトルでは常にAKB48の楽曲を選びパフォーマンスを披露してきた彼女。最初に興味をもったアイドルも、AKB48だった。

「アイドルに興味をもったのは、小学3年生の頃だったと思います。テレビの歌番組にAKB48さんが出ていて、大好きになりました。前田敦子さんと柏木由紀さんの存在感がすごくて、ついつい目を引くんです。とくに柏木さんは、動きのすべてが、“Theアイドル”って感じ。『遠距離ポスター』って曲がきっかけで好きになって、『AKBがいっぱい ~ザ・ベスト・ミュージックビデオ~』ってMVを集めたDVDを見ながら、いつもダンスをマネしていました」

当時6歳

プリキュアが大好きだった小学生低学年時代

当時小学3年生。アイドルに夢中になる

高学年になると、当時流行っていたももいろクローバーZを好きになり、友人と一緒に踊るように。

「6年生の頃はももクロさんが好きで、友だちと一緒に振り付けを覚えていましたね。小学3年生のときは家でひとりで踊るだけだったけど、この頃は放課後に校庭の片隅で、一緒に練習していたのを覚えてます」

当時小学6年生。ももクロにハマっていたころ

中学では、大好きなアイドルからはいったん離れて部活に熱中。毎日休みなく、管弦楽部で活動していた。

「全国大会にも出場する強豪校だったので、休みはほとんどなかったです。担当パートはバイオリンで、部活に熱中していました。アイドルに触れる余裕がない3年間でした」

そんな大場は、高校生になり、アルバイトを開始。

ファミレスで週5日アルバイトをしながら、再びアイドルにハマる生活が幕を開けた。

「この頃に好きだったのは、ラストアイドルでした。いとこが録画した番組を見ているところに遭遇して、一緒に見ていたらすごく面白かったんです。番組も見ていたし、1期生がデビューしてからは、握手会やライブにも通っていました。小学生の頃は現場に行けなかったけど、高校ではバイトをしていたので、憧れの人に会いに行けるのがすごく楽しかったです」

当時高校3年生。ラストアイドルの“オタク”だったという

一番好きなメンバーは、のちにシュークリームロケッツのメンバーとなる小澤愛実。ファーストシーズンのオーディションバトルでは、彼女の活躍に一喜一憂していた。

「大好きな愛実さんがバトルで負けちゃったとき、いつも笑顔の愛実さんが号泣していたので、あの回は強く記憶に残っています」

バトルが終わり、オーディションに参加していたメンバーたちのデビュー決定後は、ライブやイベントに足を運ぶようになる。

「ライブやグループ握手会や撮影会、ラストアイドルがゲストに出るイベントまで…。いろんな現場に通っていました。愛実さんの誕生日には、おめでとうのメッセージを入れた画像をSNSにアップして。高校まで普通にオタク生活を楽しんでいました(笑)」

◆高校卒業後の“進路”としてアイドルを選択

このように、ひとりのファンとして番組を楽しんでいた大場が、いつからアイドルになりたいと思うようになったのか。

転機が訪れたのは高校3年。

進路の選択を迫られたときだ。

「学校で進路を決める時期になって、仲のいい友だちはみんな決まっていたのに、自分だけなにも考えられなくて。家庭の事情で進学よりは就職かなって考えていたけど、やってみたい仕事が思い当たらないんですよ。放課後にセミナーがあって、マナー講義を受けたり、どんな仕事があるのかを調べたりしたけど、すっごくつまらなかったんです(笑)。親戚のなかに、美容系のお仕事をしている人がいたから、そっちの方向かなと思ったこともあったけど。自分が一生懸命になれると思える仕事がみつかりませんでした」

そんなときに、ふとした瞬間、いま自分が一生懸命になっていることはなにかと考えてみた。

アイドルは大好きだと大場は気づいたのだ。

「自分が本当に好きなものって、アイドルしかなかったんですよ。見る側のひとりだったけど、もしかしたら、アイドルになるっていう道もあるのかなって。当時は2期生のオーディションバトルがはじまっていた頃で、いち視聴者として見ていたけど、自分も受けてみようかなと思うようになったんです」

とはいえ、最初からひとりで一歩踏み出すほどの勇気も自信もない。背中を押してくれたのは、仲のいい友人たちだった。

「学校の近くに回転寿司屋があって、バイトが休みの日に、友だちとみんなでそこに行く習慣があったんです。そこで進路について相談してたら、『そんなに好きなら、やってみたらいいじゃん』って勧めてくれて。アイドルが好きってことは本当に仲いい子にしか言ってなかったんですよ。でも、信頼する友だちに背中を押してもらえたことで、その場でスマホから応募をしました」

◆「ひとりだけオタクが潜入してる感じでしたね(笑)」

挑戦の結果、大場は晴れて2期生としてラストアイドルに加入。

かつてオタクとして現場に通っていたグループにメンバーとして入ったことで、当初は戸惑いもあったという。

「最初のうちは、憧れの人たちが同じ空間にいるのが信じられなかったです。不自然なくらいついつい目で追っちゃう感じがしばらく続きました。同じ楽屋でお弁当を食べていても、『あ、あのメンバーが食べてる…』みたいな。ひとりだけオタクが潜入してる感じでしたね(笑)。嬉しかったのは、愛実さんが、私が昔つくったおめでとうの画像を覚えててくれたこと。『嬉しかったから保存してる』って見せてくれて、まさかの本人に届いていたっていう。びっくりでした」

アイドルとして仕事をする姿しか見たことがなかったオタク時代と比べ、同じグループのメンバーとして活動をすることで、表も裏も見ていくことになるのだが、幻滅することは一切なかった。

「もともとは、かわいい、大好きっていちファンとしての気持ちしかなかったけど、一緒に活動するうちに、いろんな面を見ることになりました。そしたら、想像以上にいい人だったんです(笑)。すごく謙虚で、すべてのことに一生懸命。いつも笑顔で前向き。誰にでも同じ対応をして、いいところがどんどん見えてくる。アイドルとしてだけじゃなく、人としても尊敬できる。あんなふうになりたいって思っています」

そんな尊敬する先輩たちも、アイドル業界のなかではライバルのひとり。

メンバーと戦う気持ちはつくれるのだろうか。

「もともと自分に自信がないし、尊敬する先輩たちだからこそ、ライバルとは見られないんです。2期生だからと一歩後ろに下がってしまうし、8thシングルの選抜入りをかけたオーディションバトルでも、最初から諦めの気持ちでいっぱいでした。というより、そもそもオーディションを受けるかどうかすら悩んでしまっていたくらいです」

4月発売の8thシングル『愛を知る』の選抜メンバーは18人。1期生も2期生も関係なく、平等にパフォーマンスで判断されるオーディションバトルが開催されたのだ。諦めの気持ちに支配されつつあった彼女の背中を押したのは、またしても、信頼する友人たちだった。

「友だちに電話したら、『オーディションを受ける前の結女は、すっごくメラメラ燃えていたよ』って、昔の自分を思い出させる話をしてくれました。もともと、やらないで後悔するのだけは絶対に嫌だと思って、生きてきたんです。いままでその言葉を信じてきたからこそ、ここで折れたらこれまでの気持ちや行動がすべてムダになってしまう。そんな気がして、初心にかえる気持ちで、オーディションを受けることに決めました」

◆「『なんで大場が選抜入りなんだ』って、絶対に批判されると思うと、怖くて」


総勢44名が次々とパフォーマンスを披露していくなか、No.11として彼女の番が回ってきた。大場は渾身の歌と踊りを見せるはずだったのだが、曲が終わる前から涙がこみ上げてきて、終わると同時に、号泣してしまった。

「どうせ無理だって思いつつ、そう思ったらダメだって葛藤で、泣きそうになってしまって。本番までの期間も、カラオケでずっと練習してたんですけど、そのときからずっと同じ気持ちだったんです。自分なんかが頑張っても…って思うと曲を入れられなくなって、『DAMチャンネルをご覧のみなさま…』って音だけがずっと流れている、みたいな感じで数時間過ごしたこともありましたね」

本人は「出来が悪かった」と泣き出してしまったが、オーディションは自己評価で結果が決まるわけではない。パフォーマンスの出来は審査員たちが決める。

そのメンバーが人気かどうかも関係ない、容赦のないジャッジの結果、彼女は17人目のメンバーとして名前を呼ばれることとなる。

「呼ばれた瞬間は、頭が真っ白でした。アイドルとして目立つポジションに、選抜に入りたいって気持ちはあるけど、もっとスゴい人がいるんだから、自分が入る資格はない。そう思っていたから、選ばれた瞬間に、一気に重荷がのしかかってきた気がして…。嬉しいはずなのに、つらさを感じていました。結果発表からオンエアまで1か月くらいあって、放送されたら、『なんで大場が選抜入りなんだ』って、絶対に批判されると思うと、怖くて、テレビで放送を見る当日まで、ずっと時間が止まっていた気がします」

選抜メンバーとしての活動がはじまった後も、しばらくは同じ気持ちが心を支配していたという。

「誰にも言えなかったけど、シングルのMVを撮影する現場でも、まだ『自分なんかがここにいていいのか』って気持ちを引きずっていました。スタジオでダンスシーンを撮ったときに、『カメラに向かって自由にアピールしてください』って言われても、自分なんかがアピールしても…って、申し訳なく思っちゃって。結局、出来上がりを見ても、ぜんぜん写ってなかったです。当たり前ですけどね(笑)」

◆「アイドルって、衣装を着ると、違う自分に変われるんですよ」


しかし、いつまでも後ろ向きな気持ちでいるわけにはいかない。選ばれたメンバーのひとりである自覚を持つべきである。今はそんな気持ちが徐々に芽生えることに。

「アイドルって、衣装を着ると、違う自分に変われるんですよ。選抜に入った人しか、これを着れないんだと思うと、少しずつ選抜の衣装を何回も着るたびに、少しずつ、気持ちが変わっていって。本番前もなるべく早めに着替えるようにして、写真を撮ったり、踊ったりしているうちに、少しずつ前向きな気持ちになっていきました。私は選ばれた18人のひとりなんだから、入りたくても入れなかった人のぶんまで、しっかり頑張らないといけない。そう思うようになったんです」

もともとは就職活動のいち選択肢として、アイドルを選んだ彼女。

今後、目指す道とは。

「ラストアイドル選抜に入れたからこそ、このグループを代表するひとりなんだって胸を張れる人物になりたいと思います。たとえば歌番組に出たときにも、パフォーマンス中にソロでカメラに抜かれるメンバーになりたいです。自分のなかでずっと忘れられないのが、AKB48の前田敦子さん。テレビではじめて見たときに、カメラにひとりだけ映る姿が本当にキラキラしていたから。いつかは、自分ひとりでカメラに抜かれるようなポジションに立ってみたいと思います」

個人的に挑戦してみたい仕事を聞いてみると、「アイドルになりたいだけだったから、思い浮かばない」と言いつつも、バラエティやラジオなど、しゃべる仕事に興味があると答えを絞り出してくれた。

その思いの裏側には、よく共演するお笑いコンビの存在があった。

「もともとはラストアイドルが好きで、入りたいって思ってただけだから、そんなに考えたことはなかったんですけど。アイドルとしていろんなお仕事をさせていただくうちに、おしゃべりするのが楽しいなって思うようになりました。ライブでもMCを任せてもらうことが多いし、自分の言ったことで笑ってもらえると、すごく嬉しいし、気持ちいいんです。

私たちの定期公演でMCを担当されているお笑いコンビの三拍子さんが、すごくプロ意識が高いので、尊敬していて。お笑いの人たちって、仕事に対する熱量がスゴいんだと気づいてからは、バラエティのお仕事にも興味を持つようになりました」

<取材・文/森ユースケ、撮影/スギゾー>

◆大場結女(おおば・ゆめ)プロフィール
2000年12月、千葉県生まれ。幼少期はクラシックバレエとガールスカウトを経験。中学では管弦楽部でバイオリンを担当し、全国大会に出場。高校では週5日アルバイトをしながら、ラストアイドルのライブやイベントに足繁く通っていた。アイドルになって変わったことは、写真嫌いを克服したことだとか。「昔は自信がないから写真が大嫌いで、集合写真でもなるべく逃げてたんです。アイドルになってから少しずつ楽しくなってきたので、いろんな衣装を着てみたいです」

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