六角精児、ギャンブル依存・借金・3度の離婚…自宅に帰ったら「彼女も家具も消えていたこともあった」

公開: 更新: テレ朝POST

©テレビ朝日

ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)シリーズの鑑識官・米沢守役でブレークした六角精児さん。落語好きで生真面目な愛すべきキャラとしておなじみだが、実は犯人役で1回だけの出演で終わる可能性もあったという。

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◆目立つ犯人役か、地味な監察医役か?

ドラマ『相棒』が初めて放送されたのは2000年6月3日。最初は単発のドラマだった。

「『相棒』のプロデューサーさんが小劇場の舞台が好きな方だったので、その人の記憶のなかに僕の印象が残っていたんでしょうね。劇団の芝居を見てくれていたというのが1番大きかったものですから、やっぱりちゃんとやっておくもんだなって思いますよね」

-はじめは犯人の役か、鑑識の役か決まっていなかったとか-

「そうです。僕が言われたわけではないんですけれども、うちの事務所のマネジャーが聞かれたそうです。

最初は監察医だったんですよ。犯人役だったら1回だけの出演だけど、シリーズになったり、続編が作られたときに監察医役なら続く可能性があるということで、マネジャーが監察医の役のほうを選んで、次作から鑑識になりました」

-その選択は正しかったということですよね-

「ラッキーなことですよね。米沢守は、今は警察学校の教員になっていますが、16年間ずっと鑑識をやっていたわけですからね。本物の鑑識の人よりも鑑識の役を長いことやっていたのかもしれない(笑)」

-ユニークなキャラで、早々に鑑識・米沢守が視聴者に浸透しましたが、ご自身ではいかがでした?-

「ドラマが続いてくれて良かったなって思いました。1回2回の放送だけでは主役の人たちの周りぐらいしか見てもらえないじゃないですか。

だけど、そのうち『この人面白いんじゃないか』って、サブのキャラクターまで目が行くようになるというのは、相当繰り返さないといけないんですけど、そこまで続いてくれたからこそ、自分のような脇役にも目を留めてくれて、そこからいろんなことが動き出したので。

やっぱり長く続くシリーズ作品に出会えたということが、今の自分がこうやっていけている要因だと思っています。それがなかったらどうなっていたかわからないですから」

-六角さんのキャラクターもあってスピンオフで主演映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』も作られました-

「そんなこともあるんだなと思いましたね。おもしろいじゃないですか。なかなかないですよね。

今は警察学校の教員になっていますけど、完全に出てこないということではなくて、警察の組織内にはいるということで、鑑識を離れてからも実際に出てきましたしね。

これから先どうなるのかわからないですけれども、相棒シリーズの系図のなかには入っています」

-2016年に鑑識から離れたのは、他に色々とやりたいことがあったということでしょうか-

「そうですね。それはもちろん『相棒』の鑑識として見てくださる方がいっぱいいらっしゃるから、そのなかで自分が役者として生きていくのもいいかなとは思ったんですけれども、ちょっと別なところのことをやれる時間もほしかったというか…。

どういう風になるかわからないけれども、ただいろんなことに挑戦する時間があればありがたいなぁと思ったものですから、そういう形で出させていただくことになったんです」

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◆“妻たち”が一緒になって借金返済をしてくれた

ギャンブル依存、借金、結婚、離婚…波瀾万丈の人生を送って来た六角さん。一時は借金が1000万円にもなったという。これまでに3度の離婚を経験し、借金を完済した後、2番目に結婚した奥様と再婚。4度目の結婚生活を送っている。

-モテますね-

「いえ、モテてはなかったですが、色々と面倒をみてもらったり、困ったときにお金を振り込んでくれる人はいました」

-バラエティー番組などで「僕は何も持っていないから、相手が望むことでしてあげられることは結婚だけだった」とおっしゃっていたのが印象的でした-

「でも、本当にそうでしたね。僕には借金しかないわけで、ほかには何も持っていませんでしたから」

―それでも女性に結婚したいと思わせるような母性本能をかきたてる魅力があるということでしょうね-

「自分にはそれはわからないですけど。向こうも結婚したら変わると思ったんじゃないですか。もしかしたらギャンブルをやめてくれるんじゃないかとかね。でも変わらなかったですね。

先が見えないじゃないですか。返しても返してもギャンブルで新たな借金ができるわけですからね。いくら返しても減らない借金はつらいじゃないですか。だから『やっぱり、これはだめだ』って(笑)。

長期の旅公演から久しぶりに自宅に帰ったら、彼女も家具も消えていたということもありましたね」

-奥様たちが一緒になって借金を返してくれたりしていたそうですね-

「そうでしたね。そういう人が世の中には数パーセントの確率でいてくれるような気がしますよ。運よくそんな寛容な人にめぐり会っている気がする。

『借金を返せ』と怒られたことはありませんけど、『ギャンブルをやめてくれ』と言われたことはあります。それが原因で結局別れることになったんですけど。

『サラ金の利息だけでも払ってきなさい』って渡されたお金をパチンコで全部すってしまったこともありました。周りのギャンブル好きの人間と付き合っている人は、大体そういう目にあっていますからね。

彼氏がギャンブル好きでしたという女性の方に『こんなことがあったろう?』って聞くと、大体ありますから。だから世の中にいかにギャンブル好きが多いかっていうことですよ(笑)」

-現在の奥様は2番目に結婚されて離婚された方だそうですね-

「そうです。たまたま会って一緒にご飯を食べて、また付き合い始めました。離婚の原因は経済的問題であって、嫌いになって別れたわけではなかったですからね。

別れ際も自分には財産も何もないからスパッと別れられたので、切断面がきれいだからくっつきやすかったんじゃないですかね(笑)」

糖尿病を抱えているという六角さんのために、奥様がキノコや緑黄色野菜を中心に種類が豊富でヘルシーなお料理を作ってくださるそう。糖質制限と1時間のウォーキングで体調管理も万全。大好きなお酒も料理上手な奥様の手料理をつまみに家で飲むことが多くなったという。

(C) ヴァンブック

◆“小川さんの奥さん”が理想の人…

今月25日(金)には、『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』(2009年)以来、10年ぶりとなる主演映画『くらやみ祭の小川さん』が公開になる。

※映画『くらやみ祭の小川さん』
56歳の平凡な会社員・小川秀治(六角精児)は思いがけず早期退職をするハメになってしまう。妻(高島礼子)はしっかり者で大黒柱的存在だが、出戻り子連れの長女、認知症の母、役者志望で定職に就かない長男、本人も家族も問題だらけ。再就職もうまくいかない。そんななか、ひょんなことから地元・府中で開催される「くらやみ祭」のお手伝いをすることになり、人生を再生していく…。

-10年ぶりの主演映画となりますが、プレッシャーは?-

「ないです。そんなにプレッシャーを感じても何も変わらないですからね」

-今回はリストラされてしまう会社員という切ない役どころですが、演じられていていかがでした?-

「やっぱり今、小川さんのような人たちがいっぱいいそうな気がするから、大変だろうなと思いながらやっていましたけど、僕は社会人としてちゃんと成立したことが今までないものですから。

劇団を通じて社会と交流している感覚が強くて、いわゆる高校生の部活の延長みたいなもので、自分が社会人になったというイメージが僕にはないんです。

だから、やっぱり勤めている方の気持ちが本当にわかるかっていったら、難しいですよね。
だけど、自分が信じていた会社にリストラされたとき、それはそれからの生活の心配よりも、自分が信じていたものに裏切られたという気持ちの方が、やっぱり強いと思うんです。

でも、それをどこか隠しながら、その傷に自分なりの赤チンをぬりながら、生活していくのはどういうことなんだろうって考えますよね」

-奥さんや娘が働いてるところをのぞき見ているシーンが切なかったです-

「『働くってなんだろう?』って思ったんでしょうね、あの人は。自分が働いていた姿を自分じゃ見られないから、家族が働いている姿を見てみようと思って行ったんだと思うけど、あれは切ないですよね。自分にはその場所がないわけだから。

それでいろんなことは考えるけれども、それはそううまくはいかない。そりゃそうですよ。よく銀行や大会社が何千人リストラするって聞くじゃないですか。

リストラされた人はどこに行ったんだろうって思うんですよね。けっこうな人数じゃないですか。多分いろんなところの面接を受けたりして、そのなかで現実というものを知らされて、いろいろな思いを持つ人がいっぱいいるんだろうなって思いますよね」

-小川さんみたいな人はいっぱいいるでしょうね-

「小川さんはラッキーですよ。やっぱりあの奥さんは理想の人だと思いますよね。こういう奥さんが今、実際にいるかどうかは別としてね。ああいう奥さんだからこそ、あの家族が成立しているわけで、普通は『あんたバカじゃないの?早く再就職の面接に行って来なさいよ』って言うと思うんですよ(笑)。

だから理想というか、実際、昭和にはああいう肝っ玉母さんと言われている人がいたわけでね。きっとそうやって男性を立てながら自分は内助の功でというのは昭和の時代には結構あったと思うんですよね。

特に『俺は、俺は』なんて偉そうに言っている男性の陰には、必ずそういう女性がいたと思います」

-「くらやみ祭」のことはご存じでしたか?-

「知らなかったです。ビデオを見て『すごいなあ』って思って、実際にお祭りを見に行ってみたら、すごくスケールの大きいお祭りでびっくりしました。

これまでの自分の生活のなかでは、これほど大きなお祭りに接することはなかったものですから、今回『くらやみ祭』に行ったときにたくさんの方から声をかけられ、映画もお祭りも多くの人が関わり、熱い想いで支えられているんだと改めて強く感じましたね」

-お祭りのシーンの迫力もさることながら、『何をやってもうまくいかない』と訴える娘とのシーンも印象的でした-

「もし、自分に娘がいたら、人生に行き詰まっている娘に父親として小川さんのように寄り添えるのだろうかって考えますよね」

-家族について改めて考えさせられる作品ですね-

「家族というと、どうしても照れがありますからね。なかなか素直になれなかったりするものだけど、生きている間に家族が何かを話し合い、分かり合えたなら、それはとても幸せなことじゃないですか。それぞれの立場で色々なことを感じてもらえたらなあと思います」

-最後に今楽しみにしていることは何かありますか?-

「六角精児バンドのセカンドアルバムが出ることです。多分11月には出せると思うんですけれども。CDの発売日は自分で決められるので、いつ出そうかと考えてるところなんですよ。

もう原盤ができているので、あとはジャケット撮影とか細かいところの作業ですかね。表のジャケットは知り合いのイラストレーターに描いてもらって、裏ジャケットは撮影したものになるんですけど。なかなか良い出来になったので、それが楽しみです(笑)」

自身の冠番組『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』でも新曲を流す予定だとか。「CDを売るために、ねじこみますよ」と話す茶目っ気タップリの笑顔が印象的。主演映画の公開にCDアルバムのリリース、充実した忙しい日々が続く。(津島令子)

ヘアメイク:堀 ちほ

(C) ヴァンブック

※映画『くらやみ祭の小川さん』
10月25日(金)よりTOHOシネマズ府中ほか全国順次公開
監督:浅野晋康
出演:六角精児 佐津川愛美 柄本明 水野久美 高島礼子
配給:ピーズ・インターナショナル

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