<WRC>トヨタのオット・タナック、GBで今季6勝目!次戦スペインで初の王者獲得なるか

公開: 更新: テレ朝POST

現地時間の10月3日~6日、2019年WRC(世界ラリー選手権)第12戦「ラリー・グレートブリテン」が行われ、トヨタのオット・タナックが今季6勝目となる優勝。ドライバーズチャンピオンに向け、さらに一歩前進した。

©TOYOTA GAZOO Racing

まず、ラリー・グレートブリテンの上位陣の結果は以下の通り。

1位:オット・タナック(トヨタ)
2位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/1位から10秒9遅れ
3位:セバスチャン・オジェ(シトロエン)/同23秒8遅れ
4位:クリス・ミーク(トヨタ)/同35秒6遅れ
5位:エルフィン・エバンス(フォード)/同48秒6遅れ
6位:アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)/同58秒2遅れ
7位:ポンタス・ティデマンド(フォード)/同5分23秒8遅れ
8位:クレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)/同9分25秒0遅れ

今年のラリー・グレートブリテンのスタート前、当然ながら注目はチャンピオンを争うトップ3人に集まった。

チャンピオンシップをリードするトヨタのタナックは210ポイント。続いて17ポイント差でシトロエンのオジェが193ポイントで追いかける。さらにオジェから13ポイント差、タナックからは30ポイント差となる180ポイントでヒュンダイのヌービルが追う展開。

3人からすれば、誰も、一歩も譲れないラリーのスタートだった。

今回は合計4日間開催のため、初日は顔見世となるSS1のみ。通常ならば数秒以内にトップドライバーとチームの名前が並ぶステージだ。

しかし、トヨタのタナックはエンジンストールなどに見舞われてトップから8秒8遅れの13位となってしまう。さらに、チームメートのヤリ‐マティ・ラトバラもフロントガラスの曇りに苦しみ5秒7遅れで8位。

しかし、母国ラリーとなるトヨタのミークがSS1ステージトップを獲得。ヒュンダイのヌービルが2位、シトロエンのオジェが4位という初日となった。

本格的にラリーがスタートする金曜日。この日、トヨタ3台の最大のライバルであるオジェ、ヌービルが順調に走り進める。SS6を終えた時点で、ミークがトップ、ヌービル、オジェ、タナック、ラトバラと続いた。

©TOYOTA GAZOO Racing

しかし、好事魔多し、SS7で5位を走行していたラトバラがクレストと呼ばれるジャンプの着地に失敗し、次の右コーナーへ曲がる時にマシンが曲がりきれずコースの土手にぶつかる。マシンが横転する派手なクラッシュとなった。

ラトバラとコ・ドライバーのミーカ・アンティラは無事だったが、デイリタイアも叶わず、彼らのラリー・グレートブリテンはここで終了となってしまった。

また、前戦ラリー・トルコで2位表彰台を獲得したシトロエンのエサペッカ・ラッピもSS6でコーナーを曲がる時に右後輪をぶつけてしまいデイリタイアとなっている。

こうしてトヨタは2台がラリーを継続する体制となったが、2日目の結果はタナックがトップ浮上、ミークも3位と好調を維持した。

◆タナック、次戦スペインで初王者の可能性

ラリー・グレートブリテンは、3日目となる土曜日へ。

今年のラリー・グレートブリテンは雨の影響で例年以上に路面が濡れており、泥がフロントウインドウを汚しワイパーも完璧とはいかず、ドライバーたちの視界を遮る。

©WRC

そんななか、タナックのライバルであるシトロエンのオジェとヒュンダイのヌービルが堅調な走りを見せ、ヌービルはステージトップを2回、オジェもステージトップこそなかったが、ミークを逆転して3位に浮上した。

こうしてドライバーズチャンピオンを争う3人がトップ3となり最終日を迎える。

最終日はSS18からSS22までの5ステージ。この日、初王者への気合が感じられたのがタナックだった。SS18、SS20、そして最後のパワーステージでステージトップを獲得。見事ライバルたちを振り切って今季6勝目を上げた。

©TOYOTA GAZOO Racing

さらにパワーステージも5点を加算し、合計30ポイントを獲得。チャンピオンシップポイントでさらなるリードを築いた。これによって、タナックは次戦ラリー・スペインで初王者獲得の可能性が出てきている。

しかしながら、シトロエンのオジェがパワーステージ2位で4ポイントを加算、ヒュンダイのヌービルも5位で1ポイントを加算と、全員がパワーステージもポイント加算に成功し、三者三様にチャンピオンシップへの意地が感じられた。

優勝したタナックは、公式会見で以下のように話している。

――タナック、この勝利によって、次のラリー・スペインで初王者の可能性が出てきました。嬉しいですか?

「もちろん、嬉しいよ。僕は初日に小さなミスを犯してしまい9秒近くを失った。その時は大きな問題とは捉えていなかったけれど、その後も走ってみると各ステージ各車の差は本当に小さく、この9秒を取り戻すのが本当に大変だった。とにかくミスなく走ることに専念した。金曜日と土曜日、僕は森林コースを走るステージでは一度もステージトップを獲得していない。とにかく一貫した走りをしてきたんだ」

――パワーステージはかなり荒々しい走りに見えましたが。

「多分、完璧じゃなかった。序盤、かなり強い雨が降っていた。そして滑りやすかったので、それに合わせる必要があった。少しスウェーデンスペックに寄せたんだ。しかし、その対価を払うだけの結果が得られた。すごくハッピーだ」

――いよいよスペインへ向かう気持ちはいかがですか。

「まず感触はすごく良い。僕たちはスペインに行き、多分初日は少しトリッキーだ。毎回天候に左右されるからね。昨年も雨によってゲーム状況が常に変化した。マシンのパフォーマンスは戦える条件だと思う。もちろん前向きに捉えている」

©TOYOTA GAZOO Racing

いよいよトヨタのタナックによる初王者の可能性が出てきている次戦ラリー・スペイン。ラリー・グレートブリテンを終えて、チャンピオンシップ上位は以下のようになっている。

1位:オット・タナック(トヨタ)/240ポイント
2位:セバスチャン・オジェ(シトロエン)/212ポイント
3位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/199ポイント
4位:アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)/102ポイント
5位:クリス・ミーク(トヨタ)/98ポイント
6位:エルフィン・エバンス(フォード)/90ポイント
7位:ヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)/84ポイント
8位:エサペッカ・ラッピ(シトロエン)/83ポイント

この得点差を見ると、ヌービルは事実上の当落ラインにいる。残り2戦、タナックとオジェの戦いに移行したと言えるだろう。

一方で、マニュファクチュアラーズ争いは熾烈を極める。

1位:ヒュンダイ/340ポイント
2位:トヨタ/332ポイント
3位:シトロエン/278ポイント
4位:フォード/200ポイント

ヒュンダイとトヨタの差は8ポイント。事実上の横一線だ。こうなると、トヨタもヒュンダイもチームプレーが求められる。

2019年のWRCもいよいよ残り2戦。次戦ラリー・スペインは、10月25日~27日開催。これまでオジェが圧倒的に強かったターマック(舗装路)ラリーだ。しかし、今年は同じターマックのラリー・ドイツでトヨタの3台が表彰台を独占。トヨタ・ヤリスWRCはターマックでも強くなった。

果たして、タナックは初のタイトル獲得なるか。また、トヨタはマニュファクチュアラーズポイントで逆転するか。次戦も目が離せない戦いとなる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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