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16歳のときにスカウトされて、デビュー作となった『時間ですよ』(TBS系)のお手伝いさんの“美代ちゃん役”に2万5000人のなかから抜てきされた浅田美代子さん。

昨年9月に亡くなった樹木希林さんとはデビュー以来、公私ともに親交を深めてきたことでも知られている。お母様が亡くなったとき、悲しみに打ちひしがれていた浅田さんを支え、自宅購入の際には物件探しから住宅ローンの手続きまで面倒を見てくれたのも希林さんだったという。

そんな“芸能界の母”とも言える樹木さんがその人生の最後に、浅田さんの代表作になるようにと初めて企画した映画『エリカ38』が公開されている。

6月8日(土)

◆最愛の母の死…そのとき樹木さんは…

映画、ドラマ、舞台、バラエティー番組と幅広い分野で活躍してきた浅田さんを2001年、最愛の母の死という悲しい出来事が襲う。

「希林さんにはプライベートでもすごいお世話になっていました。私は母が亡くなったとき、悲しくて何も整理ができなかったんですね。母の部屋に入ると泣いちゃって…。部屋に入るだけで涙が出てきて、もう一切整理できなかったんですよ。

そしたら希林さんが、『そんなんじゃあ、お母さんが浮かばれないよ。上にいけないよ』って言って。『ここは賃貸なんだから、とにかくまず引っ越そう。自分のものじゃないんだから』って、すごい言い方をするんですよ。それで住むところも一緒に探してくれて。

私は子供がいるわけじゃないから一生賃貸でもいいと思ってたんですけども、『今はいいかもしれないけども、60歳を過ぎたら誰も部屋なんて貸してくれないよ』って言われて」

-それで物件探しもご一緒に?-

「そうです。色々と見て回ってマンションを買うことにしたんですけど、ローンの相談にものってくれました。それでわりと金利が安いローンを組むことができたんですけど、私がCMとか、ちょっと大きい仕事をすると、年末に『美代ちゃん、あのCMのギャラはいくら?もう入った?入ったんだったら繰り上げ返済しなさい』って言ってね。

『金利が安いローンだから当初の計画通りの返済でいい』って言っても、『借りたものはなるべく早く返すように』って銀行にもついてくるんですよ。毎年年末になるとそういう感じでした。

そのおかげで早くに完済することができたんですけどね。すごかったですよ。『どうせろくでもないものを買ったりするんだから、ローンを返済したほうがいい』って(笑)」

-お母さまのお着物を整理されたのも樹木さんだったそうですね-

「はい。『これはこっち、それはあっち』という感じで仕分けをしていって、『これは私が着るから』ってCMで着てくれたりしてね。そういうときには必ず、写真を撮って家の郵便受けに入れてくれていました」

浅田さんが何かをするときは常にそばにいてくれた良き理解者である樹木さんが75歳で亡くなったのは、昨年9月15日。

浅田さんはまだ実感がなく、今にも「美代ちゃん」と言って電話がかかってくるような気がしているという。浅田さんにとって、“母であり、姉であり、親友でもある”存在だった樹木さん。

大腿骨を骨折して入院生活を送っていた樹木さんの病室に家族以外で唯一出入りが許され、そして自宅に戻ってからも樹木さんの傍らに付き添っていたのが浅田さんだったという。

「大腿骨を骨折して入院したんですけど、転んで骨折したとかではなくて、がんが骨に転移して骨が弱くなっていたために、ちょっと重心をずらしたときに折れたって言っていました」

-病室で樹木さんの女優魂を感じた出来事もあったそうですね-

「はい。先生に私が『処置をするので病室からちょっと出て下さい』と言われたときがあったんですね。そのときには希林さんは筆談だったんですけど、『この子も役者の端くれなんだから、全部見せるの』って書いてあって、先生も苦笑していましたね」

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◆樹木さんが浅田さんの毒をスクリーンに?

プライベートでもともに過ごすことが多かった樹木さんとは、ワイドショーもよく一緒に見ていて、女性がおこした事件が報道されるたびに「美代ちゃんはこういう役をやったほうがいい」と言われていたという。

いつもなら浅田さんが「やってみたいけど私には来ないでしょう」と言うと、「そうだよね」と樹木さんが言って終わっていたそうだが、今回は違っていた。樹木さんは浅田さんのために最高のギフトを用意していたのだ。

実年齢を20歳以上詐称し、何億円ものお金を搾取して若い男と金に溺れ、タイで逮捕された女の事件をモチーフに、犯罪に手を染めていく女性の半生を描く映画『エリカ38』を樹木さんが企画。そのことは浅田さんもマネジャーも全く知らされていなかったという。

「この事件を聞いた時『面白い人だなぁ、この犯人は』とは思っていたんですよね。希林さんと一緒にワイドショーを見ていて、『面白いよね。これ美代ちゃんやれるんじゃない?』って言うから、いつものように『私には来ないよ』って言っていたんですけど、希林さんが水面下で動いてくれていたみたいで」

-全く知らされてなかったそうですね-

「はい。全然知りませんでした。全部決まってから私に電話がかかってきたんです。希林さんは本当に他人のことを考えていて、

『プロデューサーは色々な目に遭ったけど、やっぱり映画が好きで地道に頑張っている奥山(和由)さんがいい。この映画はドキュメンタリータッチもあったほうがいいから、高倉健さんのドキュメンタリーも撮っている日比(遊一)監督。美代ちゃんはアイドルから何だか仕事をホワンホワンとやっているけど、何かもう一個必要だと思う。この3つの力が集まればすごくいいものができると思う。予算はそんなに多くない映画だけれども頑張りなさい』

って電話がかかってきてびっくりしました。そこまで考えてくれていたんだって…」

浅田さんのこれまでの“愛らしくて優しい女性”というイメージを変えてあげたいと、犯罪者役での主演作を企画した樹木さん。その期待に応えるべく、浅田さんはベッドシーンにも体当たりで挑み、これまでとはまた違う新たな魅力を開花させている。

-完成した作品を見ると、浅田さんにピッタリだと思いますけど、普通はその発想はなかなか浮かばないですよね-

「そうですよね。私には来ないですよね。でも、希林さんとは長い付き合いですから、お互いの良いところも悪いところも全部わかっていて、私の毒もわかっているから、こういうのをやらせたいと思ってくれたんだろうなあと思って、本当に感謝しています」

-樹木さんは母親役で出演もされています-

「希林さんは、最初は渋っていたんですけど、監督も私も何度も交渉したら、『私が演ると、作品の格が上がるからねえ』って引き受けてくれました(笑)」

-撮影はいかがでした?-

「私が途中で『もう一回やらせてください』って撮影を止めちゃったことがあったんですよね。そのときは『途中で止めるのはダメだ』ってすごい言われました。

でも、希林さんは、こういう芝居をしろとか、ああいう芝居をしろとかいうことは、絶対言わない人でしたね。本当に私は幸せ者だと思います。これからですよね。もう一歩、もう一歩って、ちゃんと希林さんに返して行かなきゃいけないなあと思っています」

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◆保護犬とともに暮らす日々…“いのちを守る”ために

小さい頃から犬がいつも身近にいる環境で育ったという浅田さんは、現在4匹の保護犬と暮らしていて、保護犬活動をされていることでも知られている。4年前には愛犬たちと過ごすために別荘も購入。そのときにも背中を押してくれたのは樹木さんだったという。

「なかなか一人では決められなくて、希林さんに相談したら、わざわざ一緒に見に来てくれたんですよ。それで希林さんのほうがものすごく気に入ってくれちゃって(笑)。『ものすごくいいところじゃない。悩む必要なんかないわよ』って言ってくれたので購入を決めました」

-樹木さんは浅田さんの保護活動について何かおっしゃっていました?-

「すごい応援してくれました。『弱いものを助けるということはすごくいいことだから、頑張りなさい美代ちゃん』って、動物愛護のこともすごく応援してくれていました」

-動物が虐待されていると思われても、飼い主が所有権を主張すると保護することは難しいようですねー

「物扱いですからね。だから、どんな人でも『自分の犬だ』って言ったら、犬猫がどんなにひどい虐待をされていても、その飼い主から取り上げることができない。一時保護しても戻せと言われたら返さなければならないんですよね」

-浅田さんが飼っているチワワも大変だったそうですが-

「あの子は外飼いされていたチワワで、目ヤニがひどいのに病院にも連れて行ってもらえていなくてね。『お願いだから病院に連れて行かせてくれ』ってお願いして連れて行ったんですけど、右目は失明していました。もう少し早く病院に連れて行っていたら、失明は避けられたのに…。

それで所有権放棄の説得には4カ月ぐらいかかったんですよ。今回もつい先日、動物愛護法改正の色々な法案が出たんですけど、なかなかうまくいかないんですよ。

今、ペット産業はすごいでしょう?何兆円のビジネスですからね。今、私が声を大にしているのは繁殖業。劣悪な環境の地獄で産ませている悪質な業者もいるという、それを何とかしたいと思っているんです」

-「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正を求める署名が20万人以上集まったと聞きました-

「はい。法律の改正もそうですけど、小学校で『いのちの教室』というのをやっていて、子どもたちに命の大切さを教えることをしたりとか、私が行けるところには講演しに行ったりしています。保護犬とか保護猫を普通に飼う世の中になって欲しいんですよね。
私が生きているうちに大きく変わるということはないかもしれないけれど、少しずつでも道はつけたいなと思っています」

樹木さんは動物愛護の活動の話をしているときの浅田さんを見て、それを『エリカ38』の詐欺のシーンでやるといいと言っていたという。樹木さんが人生の最後に浅田さんのために用意した最高のギフトで新境地を開拓。女優としての新たな章が始まった。(津島令子)

ヘアメイク :e.a.t…新井克英
スタイリスト:藤井享子

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※映画『エリカ38』
TOHOシネマズシャンテ他全国公開中
実際にあった事件をモチーフに、自らを「エリカ」と名乗り、実年齢を20歳以上詐称し、何億円ものお金を詐取した女の本性を暴く犯罪エンタテインメント。
配給:KATSU-do
製作総指揮:奥山和由 監督・脚本:日比遊一
出演:浅田美代子 平岳大 窪塚俊介 山崎一 山崎静代 小籔千豊 小松政夫 古谷一行(特別出演)木内みどり 樹木希林

テレ朝POST

マイナビニュースでテレビ部門を担当する中島優氏。後編では令和を迎えたテレビのあり方、方向性について聞いた。多い時は1日十数本のテレビ関連の記事を書く中島氏ならではの、テレビに毎日接するライターの感覚で語ってくれた。気負いもてらいもない、ただテレビを愛するひとりの男としての言葉が、奥行きがあり興味深い。途中に出てくるネットとの関係の話は、テレビ制作者にも大いに参考にしてもらえると思う。

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