ヒーロー、王子、そしてブラック企業の社員に。飯島寛騎、俳優としての“生きがい”

公開: 更新: テレ朝POST

「いまは、とにかくいろいろやってみたい。殺される役でも、殺す役でも、手からビームが出る役なんかもいいな」――笑いながらそう話すのは、いま乗りに乗っている俳優・飯島寛騎(いいじま・ひろき、22歳)だ。

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2015年に開催された「第28回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」にてグランプリを受賞した飯島は、翌年『仮面ライダーエグゼイド』(2016~2017年)の主演で華々しくデビュー。その後ドラマや映画、CMと幅広く活躍を続けており、今もっとも注目を集める若手俳優のひとりだ。

そんな飯島は、所属するオスカープロモーション初の男性エンターテイメント集団、男劇団 青山表参道Xのメンバーであり、旗揚げ公演の『SHIRO TORA ~beyond the time~』では主演に抜擢。

以降、舞台にも活躍の幅を広げており、6月13日(木)~6月23日(日)には、渋谷の「CBGKシブゲキ!!」にて上演される舞台『ちょっと今から仕事やめてくる』で主演を務める。

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今回、舞台稽古の真っ最中である飯島に、俳優としての現在の心境について、そして舞台『ちょっと今から仕事やめてくる』について話を聞いた。

◆デビュー当時に“本当に分からなかった”こと

舞台『ちょっと今から仕事やめてくる』の稽古では、演出・深作健太氏の「良いも悪いもしっかり話してくださる」指導に日々好奇心を刺激されているという飯島だが、デビュー当時から監督や演出家からもらうアドバイスを大切にしてきたようだ。

飯島:「この仕事を始めた頃、監督に『全身をさらけ出せ』って言われたんです。でも、表現をするうえで“体も中身も全部をさらけ出してお芝居をする”というのが最初は分からなくて…。

お芝居って、普段の生活を表現するものではありますけど、普段そんなことしないよねっていう演出も少なくない。そこの自然な見せ方が最初、本当に分からなかったんです。たとえば驚きのお芝居でも、自分の中では『え、今のでじゅうぶん驚いてるんだけどな…』って。

時間をかけて指導していただいたおかげで、理解できている現在に至るんだなって思います。

でも、分かりかけてきただけであって、多分まだ全然さらけ出せてはいない。自分の感情って、まだ何かあると思うんですよ。他の方がやっていないことを表現できたら、自分の武器にもなる。そこを探せるのが、いまの仕事で楽しいことであり、生きがいかもしれないですね」

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“特撮ヒーロー”や“王子”、テレビ局の報道記者、そして2019年1月に公開された映画『愛唄‐約束のナクヒト‐』ではバンドマンなど、これまでさまざまな役を演じてきた飯島。ひとつひとつの役と向き合うなかで、常に学びや発見を得ている。

飯島:「バンドマンの役をやって、音楽の聴き方が変わりました。それまでは音楽はメロディーで聴くことが多くて、言葉、つまり歌詞はそこまで細かく見ていなかったんです。でも、『この人はなぜこの歌詞を書いたんだろう?』と言葉の意味の深い部分を考えるのは、台本を読むうえでも大切なこと。お芝居ではもちろん、音楽でもやっぱり“言葉が大事”なんだなって。その発見ができたのが嬉しくて、すごく印象に残ってます」

また次のエピソードからは、飯島がひとつひとつの役に深い愛情をもって臨んでいることが伝わってくる。

飯島:「バンドマン役については、髪型も印象に残ってますね。“金メッシュ”だったんですよ。撮影以外の私生活になったとき、衣装は着替えられるけど、髪だけはそのままじゃないですか。だから、しばらく派手な見た目になっちゃうな…って最初は少し抵抗があったんです。でも、次第にすごく愛着がわいて、撮影が終わる頃には『染め直したくない』と思っている自分がいました(笑)」

そうして真摯に役と向き合ってきた過程を経て、飯島はいま改めて率直に「いろいろやってみたい」という気持ちになっているそうだ。

飯島:「これからどんな役を演じてみたいかって、最近よく考えるようになったんです。ちょっと前までは(オファーが)来た役をやるということに徹していて、そういう質問にはあえて“ありません”って答えていたんですけど…。

でも、同じ印象には囚われていたくないなって。考えてみれば、“特殊な学生”の役はやったことあるけど、普通の学生役もヤンキー役もない。ちょっと年齢を重ねれば、先生の役もできる。新たな表現をすることで、新しい自分が生まれるかもしれない。その楽しみがあるんです。

だからいまは、とにかくいろいろやってみたい。殺される役でも、殺す役でも、手からビームが出る役なんかもいいな(笑)」

◆“ブラック企業で働く若手社員”を演じてみて

そう語る飯島が6月13日(木)から始まる舞台『ちょっと今から仕事やめてくる』で挑むのは、“ブラック企業で働く若手社員”という役。本作は、北川恵海による70万部を超える大ベストセラー小説が初舞台化されたものだ。

「ブラック企業」「長時間労働」「パワハラ」…そんな社会で必死に生きている若者たちの姿が、ユーモアや切なさを交えて描かれる。飯島が演じるブラック企業で働く主人公・青山隆は、ある日駅のホームで意識を失い、電車にはねられそうになってしまうのだが…。

飯島は“青山隆”を演じることについて、次のように話す。

飯島:「年齢がほぼ一緒なこともあって、僕は青山ほどネガティブではないですけど、気持ちや考え方は共感できます。入社してブラック企業だったらそれはショックだし、新人だと上の人になかなかものを言えない。そういう不満や悩みは、同世代の皆さんはきっとみんなあると思うんです。社会に出たばかりだと辛いことや壁がいっぱいあって、そこに立ち向かっていくのか、違う道を歩むのか。人によって選択が違うのも現実味があって、演じやすいです」

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前述の通り、本作で主人公・青山は、駅のホームで意識を失い電車にはねられそうになってしまう。そこを助けるのが、「幼馴染みのヤマモト」と名乗る男だ。しかし、青山には彼の記憶がまったくない…。そして、ヤマモトの謎を追ううちに、青山の人生の歯車が動き出していく。

今回の舞台では鈴木勝吾が演じているこの“ヤマモト”は、陽気なキャラクターであり、青山はヤマモトと出会うことで本来の明るさを取り戻していく。

飯島はそんな“ヤマモト”を見ていて、地元の友人を想起するそうだ。

飯島:「ヤマモトみたいに明るく振舞ってくれる友人が1人でもいたら、重たい荷物が軽くなって、ラクになるんじゃないかなって思います。自分の周りにもいますよ、地元(北海道)の友人とか。それこそ気持ちを隠さない連中ばっかりなので、分かりやすいんです。分かりやすいから、気をつかわなくてもいい。

それに、別に明るくなくてもいいんです。真剣に自分の悩みを受け入れて考えたうえで発言してくれる人がいてくれたら、それだけで嬉しくなりますよね」

そして飯島自身も、重く考えすぎずプラスに考える性格なのだという。

飯島:「私生活でもお仕事でも、『今はつらいけど、こうしたら良い方向に行くかも…』となんとなくのプランニングをするようにしてます。これを心掛けることによって、変に重たい荷物を背負いすぎなくて済むのかなって思ってるんです」

◆今回の役は「すごく引きずる」

そして本作では、役に真摯に向き合う飯島だからこその影響も。「今回、精神的につらいシーンが多いと思いますが、私生活に影響はありますか?」と聞いてみると…。

飯島:「今の役は、ありますね。ずっと低いテンションのお芝居をやっていると、休憩時間でもなかなかアゲられない。どうしてもぼーっとしちゃうんです。明るいシーンで稽古が終われば比較的気持ちはラクなんですけど、この役はすごい引きずりますね。つらいです(苦笑)」

そう言いながらも、稽古後の時間でも疲れを感じさせない爽やかな笑顔で終始インタビューに答えてくれた飯島。

最後に、“哲学”という言葉も登場させながら、舞台の見どころについて語った。

飯島:「小説・映画・舞台で終わり方が全部すこし違うので、お話を知っている方には、“舞台はどう終わるのか”と違いを楽しみにしていただきたいです。年代によって視点やメッセージの伝わり方も変わると思うので、その違いも楽しんでいただけたら。

僕は、人と物との関係を哲学的に考えることが多くて、たとえば舞台が始まったときにまず『このテーブルなんだろう?』とか気になるんですよ。セットのひとつひとつにも必ず意味があるので、皆さんにもそういう部分を注目していただきたいです。

また、悩みは人それぞれバラバラだけど、何かひとつでも頑張る若者へのヒントになればいいなと思います。悩んでいなくてもぜひ、現代を象徴する作品を濃厚なキャストとスタッフで皆さまにお届けできるよう日々稽古に精進しておりますので、楽しみにしていてください!」<撮影:長谷英史>

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※公演情報:『ちょっと今から仕事やめてくる
2019年6月13日(木)~23日(日)、CBGKシブゲキ!!
原作:北川恵海、演出:深作健太、脚本:田村孝裕
出演:飯島寛騎・鈴木勝吾・中島早貴・葉山昴・田中健

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