小松政夫、『麻雀放浪記2020』でふんどし一丁に!出目徳役は「すごくうれしかった」

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植木等さんの付き人兼運転手を3年10カ月間つとめて卒業した小松政夫さん。卒業してもテレビや舞台、映画で共演する機会も多く、植木さんが忙しいときにはそばに付き添ってお世話をしたりと師弟関係は独立後もずっと続き、伊東四朗さんとのコント『小松の親分さん』、『デンセンマンの電線音頭』、『しらけ鳥音頭』などがテレビで評判になると本当に喜んでくれたそう。こうして植木さんの愛に支えられて小松さんが世に送り出してきたギャグは80本以上になるという。

しらけ鳥

◆身近な人からヒントを得てギャグを連発!

-小松さんのギャグはどのようにして生まれたのですか-

「昔から結構、身の周りにヒントがあったんですよ。学校の担任の先生とかキャバレーのホステスさんとか、サラリーマン時代の上司とかね。

一発目のギャグは、車の営業マン時代に私が課長に叱られていたら、私をスカウトしてくれた部長が『声が大きい』って課長に注意したんですよ。そしたら課長が急にオネエっぽい口調で『お前のせいで怒られちゃったじゃないか。知らない、知らない』って言ってね。

それでその課長をモデルにして『知らない、知らない』ってクネクネしてやってみたんですよ。それが『シャボン玉ホリデー』に出してもらうきっかけになりました」

-「どうして?どうしてなの?おせーて」というのは?-

「あれは焼き鳥屋のカウンターでカップルが別れ話をしていてね。女性が男性に言っていたわけですよ。『もうイヤ、もうイヤ、こんな生活!』というのはホステスの女の子の会話からですしね」

-リズミカルな「ニンドスハッカッカ」というのもありましたね-

「あれは小学校のときの先生が言ったんですよ。私は成績があまり良くなくて、算数が特に苦手でね。簡単な足し算もできなくて間違えたら先生が『あれれ、なぜかしら、なぜかしら?ニンドスハッカッカ、まあヒジリキホッキョッキョ』って歌うように言ったんですよ。

意味はわかりませんが、リズミカルでテンポが良い響きがずっと耳に残っていたので、それに『飛べ、飛べ飛べガッチャマン、ガーッチャマンに負けるな、負けるなガッチャマン』と続けてはやり言葉にしました。あれは『音楽的に優れたフレーズだ』と谷啓さんがほめてくれましたし、ジェリー藤尾さんも絶賛してくれましたね」

ほかにも女性専門に自動車を売り上げていた同僚のセールスマンからヒントを得た「どーかひとつ」や「ながーい目で見てください」、「悪りーね、悪りーね、ワリーネ・デイートリッヒ」、「よーやる、よーやる、よーやるゼリー」など数多い。

1976年に始まった『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』(テレビ朝日系)では「てんぷくトリオ」の一員だった伊東四朗さんとのコンビ芸が炸(さく)裂。『デンセンマンの電線音頭』『しらけ鳥音頭』などレコードも発売されてヒットする。

「わずか5分間のコントでも、伊東四朗さんと二人で3、4時間かけてひねり出し、ディレクターやプロデューサー、裏方さんたちに見てもらいながら改良してね。さらに本番前に二人でトイレにこもって改良してリハーサルとは違う笑いを付け加えたこともありました。

『小松の親分さん』はバーでその筋の人に絡まれて怖い思いをしたんですが、その人が奥さんの前では子どもみたいに弱々しくなっちゃうんですよ。その違いが面白いと思ってね。

『電線音頭』はもうダメもとでやったギャグが大当たり。『コタツが壊れる』とか『子どもの教育に悪い』ってテレビ局に抗議が殺到しましたけどね(笑)」

伊東四朗さんとのコンビ芸については植木さんもインタビューで「あのコンビは秀逸だね」とおっしゃっていたそうで、小松さんはうれしさがこみあげたという。

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◆倉本聰さん作ドラマ『やすらぎの郷』で白髪に

独立後、俳優としてテレビドラマにも出演するようになった小松さん。1971年に始まった吉永小百合さん主演ドラマ『花は花よめ』(日本テレビ系)シリーズで初のレギュラー出演を果たして以降、ドラマ、映画、舞台に数多く出演。一昨年のドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の板前役も記憶に新しい。

「倉本聰さん脚本のドラマは、1975年の『前略おふくろ様』(日本テレビ系)や1981年の『北の国から』(フジテレビ系)、映画『駅 STATION』(81年)にも出させてもらいました。

撮影の合間に宴会芸を披露していたら、倉本さんが『小松の芸を見る会』を神楽坂の料亭で開いてくれたりしてね、いろんな芸をやりました」

-『やすらぎの郷』も印象的でしたね-

「私はあのドラマに出るまでは髪の毛を黒く染めていたんですよ。40歳ぐらいから白髪混じりになったから、ずっと染めていたので、倉本さんに『白くしてほしい』って言われたときも『これでいきましょう』って言ったんだけど、『ダメダメ!自前で。自然のままで』って。

それで『染めないと真っ白ですけど、今まで染めていた色が抜けるまで半年ぐらい時間がかかりますよ』って言ったんですよ。そしたら『待ちます』って言われてね。それで染めるのをやめて、今はもう白髪のままにしています」

-倉本さんのドラマは語尾を一言変えるのもいけないと聞いていますがー

「そうですよ。まったくダメ。倉本さんは本読みのときに、ご自分で立ち会われるんです。普通は演出家がやるんですけど、倉本さんはご自分がされるんですね。それで『基本的に私の台本は完成されております』って言い切りますからね。だからセリフを変えるなんてあり得ない。

たとえば、『それはないっすよ。アチャ、アチャ、アチャー』って言ったとするじゃないですか。そうすると『今、何回アチャって言いました?本を見てくださいよ。本では2回しか言っていませんよ。本の通りにやってください』って言うんですよ。怖いですねぇ(笑)」

(C)2019「麻雀放浪記2020」製作委員会

※映画『麻雀放浪記2020』
戦後間もない1945年から2020年にタイムスリップしてきた“坊や哲”(斎藤工)。その目に映るのは、高齢化と少子化に伴う人口減少、マイナンバーによる過剰な管理社会、AI導入がもたらした労働環境破壊…彼の知る戦後とは別の意味で壊れたニッポンの姿だった…。

-4月5日から映画『麻雀放浪記2020』が公開になります。オリジナル作品とは設定も大幅に変わっているようですが-

「もうびっくり仰天ですよ。私は初めてのときに感動して見ていましたのでね。白黒でした。それもまた“出目徳”という、オリジナルで高品格さんがやられて色々な賞を総ナメにした役ですからね。その役をやらせてもらうというので、すごくうれしかったです。

もう感動しながら撮影に行っていたんですけど、そのままじゃない。『あっ』と驚く展開ですよ。時代もポンと飛んでいて」

-マスコミ試写も完成披露試写も行わないというベールに包まれた状態ですが-

「主人公の“坊や哲”を斎藤工さんがやっているんですけど、ニヒルでいいんですよね。1945年の戦後から2020年の新たな戦後に突然現れたときに戸惑う姿があったりとかね。

時代が変わって麻雀選手権というのがあるんですよ。私が演じる出目徳はオリジナルと同じように死んじゃうんですけど、今回も『死んだやつは負けたやつ』ということで身ぐるみはがされてふんどし一丁で転がされている。その脇でみんな麻雀をやっているわけですよ」

-未来にいっちゃうわけですか-

「そうです。ベッキーさんが人間とアンドロイドの両方を演じているんだけど、そのアンドロイドに麻雀がインプットされているわけですよ。それで人間と戦うことになって壮絶な展開になっていくんですよ」

-小松さんはもともと麻雀はやっていたのですか-

「全然やったことがなかったんです。だから練習しました。斎藤さんとか的場(浩司)さん、ベッキーさんも知っていたのかな。ちゃんと教えてくれました。

それで何とか多少はできるようになったんですけどね。時代は変わりましたね。私が知っている機械は自分たちで並べなくちゃいけなかったんだけど、今はもう全部機械が並べてくれますからね。時代の進歩はすごい。今回は人間と機械の勝負が見どころですね」

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◆亡き師匠・植木等さんへの思い

2016年には『タコフン音頭』以来36年ぶりとなる新曲『親父の名字で生きてます』をリリース。亡き師匠・植木さんへの思いをこめてしみじみと歌っている。

「オヤジさんは本格的に声楽を学んでいたので、本当に歌がうまかったんですよ。それはもう見事でした。だから本当は『スーダラ節』を歌うのは嫌だったんですよね。ジャズギターもボーカルも一流でね。

映画『無責任男』シリーズの豪快でいいかげんなイメージとは全然違っていて、酒も賭け事も夜の遊びも一切やりませんが、周囲を盛り上げようとする精神はすごかったですね。たくさんのことを学ばせてもらいました。私はオヤジさんの庇護(ひご)のもとで生かされているんだって思います」

-小松さんのことをずっと気にかけていらしたそうですね-

「今があるのはオヤジさんのおかげですよ。プロダクションから独立するときも関係者に『もし小松を邪魔したり嫌がらせをしたりするようなことがあったら、俺が黙っちゃいないぞ』と釘をさしてくれてね。私には『何かあったら、いつでも俺のところに相談に来いよ』と言って送り出してくれました。

付き人時代に一緒に食事にそば店に入ったときなんて、私は遠慮してもりそばを頼んだんですけど、オヤジさんは天丼とカツ丼を注文するんですよ。それで自分は天丼を半分くらい食べたところで『おなかがいっぱいになったから、これはお前が食べてくれ』と言って、私にカツ丼をくれるんですよ。そういう気遣いもしてくれる情のあつい人でしたね」

植木さんのお話をする時の小松さんの目は愛にあふれている。「77歳、喜寿になりましたが、喜んでもらえる限りテレビや舞台、映画、何でもやりますよ!」と熱く燃えている。映画『麻雀放浪記2020』の公開、博多座の舞台、地方公演…日本中に笑いをふりまく忙しい日々が続く。(津島令子)

(C)2019「麻雀放浪記2020」製作委員会

映画『麻雀放浪記2020』4月5日(金)より全国公開。
配給:東映 監督:白石和彌
出演:斎藤工、もも、ベッキー、岡崎体育、的場浩司、小松政夫、竹中直人ほか

※『ひょうげもん』(3月7日発売)
小松政夫・著(さくら舎・刊)
独自の芸で現在も笑わせ続けているコメディアン小松政夫の一代記。

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