震災から8年。被災地を“定点撮影”し続けるカメラマンたちが感じる「復興」

公開: 更新: テレ朝POST

東日本大震災から8年が経つ。

テレビ朝日・報道局のカメラマンたちは、震災直後から被災地100か所以上の「定点撮影」を行ってきた。

©テレビ朝日

2月21日に公開されたサイト「●REC from 311~復興の現在地」は、それらの映像をGoogle マップ上で可視化するサイトだ。大震災の記憶を風化させないために、地上波テレビ放送とは違うアプローチで何ができるかが模索され、インターネットならではの表現にこだわってつくられている。

8年経って新しくなった町、8年経っても時が止まったかのような“あの日”のままの町。被災地の風景の変化を同じ場所、同じアングルで記録してきたカメラマンたちの感じる“復興”とは。

◆福島の復興に感じること

このプロジェクトに携わるひとり、瀧澤晋也カメラマンは、定点撮影が始められたきっかけについて、次のように話す。

「東日本大震災という大災害を伝えていくうえで、短い期間だけではなく、長い目で復興を記録し続けなくてはならない。そういう発想をきっかけに始めました。後世に伝える方法のひとつとして、“定点撮影”というのは現場に行った我々カメラマンもすごく意味のあることだと信じてやってきています。

同じ場所・同じアングルで撮り続けるためには、三脚を同じ場所に置き、同じ高さで、同じレンズのミリ数で、とにかくずっと引き継いでいかなければなりません。ときおり撮影者が変わることもありますが、撮影場所含めすべてを引き継げるようにしてきました」

<定点撮影用のメモ>©テレビ朝日

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このように始められ、実施されてきたプロジェクト。カメラマンたちは現在、復興を感じているのだろうか。

「1年や2年では状況は全く変わらないだろうということは最初からわかっていました。実感としては、5年目くらいまでは本当になかなか変わらなかった。変わってこれなかった場所のほうが大半のように感じていました。

現在となっては、変わった場所もありますが、変わらない場所もある。本当にさまざまです。復興のスピードは、町によってそれぞれ違う。被災した場所それぞれによって抱える事情が違うということをすごく感じています」

ここで語られる“事情”には当然、福島第一原子力発電所の事故も含まれる。取材班は、岩手県や宮城県には2011年からカメラを入れることができたが、事故の被害に遭った福島県の一部地域にはなかなか入ることができず、記録を残している場所のひとつである福島県・浪江町の撮影が初めて許されたのは2013年4月からだったという。

その時点からの記録しかないため、福島県が岩手県や宮城県と比べて「復興のスピードが遅い」という言い方をしたくないとしたうえで、瀧澤カメラマンは福島県について次のように話す。

「福島県内の原発事故で被害に合った地域、双葉町・大熊町・浪江町・楢葉町といったあたりの復興の遅れというのは、他の県の復興を知っているだけに大きいと感じます。定点映像の中でも、明るい映像、福島が前向きに感じられるような映像を残していきたかったのですが、なかなか難しかった。

今でも前向きな画を探しているところですが、やはり汚染土や黒い袋に入ったものが多いと感じてしまいます。自信を持って“前向きな福島”を残せたと思える記録は、まだないんです」

◆「風化させない」震災から10年後を見据え

©テレビ朝日

また、本プロジェクトに携わるカメラマンたちは、地元の方々ともコミュニケーションをとってきた。福島では、このような声が多く聞かれたという。

「被災地で取材するなかでお会いした人たちが最も言っているのが、若い人が沿岸部からいなくなったということです。みな中核都市近隣の大きい街、内陸だったりいわきなどへ引っ越してしまい、地域や地区を盛り上げる若い人がいなくなったという声をよく聞きます。沿岸部でずっと記録を残してきても、やはり元のにぎやかな様子にもう戻れないところもあるのが実感です」

しかし、そうしたなかでも地元の人たちは「人を取り戻す」「人を絶やさない」ための努力をしており、カメラマンたちも現地へ行くたびにその努力を強く感じているという。瀧澤カメラマンは、「定点のフレームの中で人の生活が垣間見えると、やはりたくましさや町の再生というのを感じます」とも話す。

そんななか課題と感じられているのが、震災から8年が経ち、人々の関心が徐々に遠のいてしまっていること、つまり“風化”だ。瀧澤カメラマンは、次のように話す。

「風化は、ものすごく感じます。もう本当に悔しいくらい。東京オリンピック関連の工事に人がいっぱい行ってしまって、被災地の人が少なくなったという現地の声も頂戴しました。また我々も、『あなたたちも最近なかなか来る機会が減ったわね』と言われたこともあります。そう言われてしまうのは、現地の人々が風化を感じてしまっているからだと思うんです。

だから我々は、まだまだ復興が進んでいない現状というのを伝え続けなくてはならない。そして、どう変わってきたのかだけでなく、その場所の良さも伝えたい。そのために、記録し続けないといけません。

今の一番の目標は、震災から10年経ったとき、10年前にこの場所で何があったかということを、(震災後に生まれた)我々の子供たちの世代に絶対に引き継ぐということ。それは、現地に行かせてもらう我々の使命だと思っています」

思いを胸に、カメラマンたちは今年も被災地に入り、8年目、9年目の模様を記録し続けている。カメラマンたちの記録を追いながら、私たちも復興について考え、被災地に心を寄せる機会を持ちたいと思う。

※デジタルニュース企画サイト『●REC from 311~復興の現在地
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