<WRC>トヨタ、ラリー・フィンランド4連覇! Wタイトル獲得へ大きく前進

公開: 更新: テレ朝POST

2021年シーズンのWRC(世界ラリー選手権)も終盤を迎え、チャンピオンシップ争いに注目が集まっている。第9戦ラリー・ギリシャを終えた時点でのドライバーズチャンピオンシップは以下の通り。

1位:セバスチャン・オジェ/180ポイント
2位:エルフィン・エバンス/136ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/130ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/129ポイント
5位:オット・タナック/106ポイント
6位:勝田貴元/66ポイント
7位:クレイグ・ブリーン/60ポイント
8位:ガス・グリーンスミス/44ポイント

ランキングを見てわかるのが、すでに過去7度世界王者となったトヨタのオジェが8度目のタイトルに最も近いということ。そして、トヨタにとっても今シーズンは非常に重要な結果を手にしそうであるということだ。

というのも、トヨタは2017年にWRCへ18年振りに復帰。その後、2年目の2018年にチームが競うマニュファクチュアラーズタイトルを獲得。2019年にオット・タナックがトヨタでドライバーズチャンピオンシップを獲得。2020年はセバスチャン・オジェがコロナ禍で変則的シーズンとなるなかドライバーズチャンピオンシップを獲得した。

そして今年、ドライバー争いではオジェがリード、マニュファクチュアラー争いでもトヨタがリードしている。つまり、ダブルタイトル獲得の可能性が非常に高くなってきたのだ。

残り3戦、タイトル争いをしていくなかでは、リタイアによる脱落だけは避けたい。オジェとトヨタがどのような戦略でラリーを戦うのか。その点にも注目したい第10戦「ラリー・フィンランド」が行われた。

◆エルフィン・エバンス(トヨタ)、シーズン2勝目

©TOYOTA GAZOO Racing

ラリー・フィンランド直前におけるニュースとしては、結果次第ではオジェ8度目の王者が確定すること、トヨタは今年のラリー・フィンランドに勝つと4連覇になること(2020年はコロナ禍のため中止)、2017・2018年にトヨタに在籍したエサペッカ・ラッピが今回トヨタからヤリスWRCをレンタルし5台目のトヨタマシンとして参加すること。

そして、唯一の日本人ドライバーとして参戦している勝田貴元(トヨタ)が3人目のコ・ドライバーと参加したことがあげられる。

勝田は、第7戦ラリー・エストニア走行中のジャンプで首を痛めたコ・ドライバーのダニエル・バリットが交代。第8戦ラリー・ベルギーから代わりを請け負ったキートン・ウイリアムズも第9戦ラリー・ギリシャ直前に家族の理由で緊急帰国。そして今回、3人目のコ・ドライバーとしてアーロン・ジョンストンを迎えて残りのシーズンを戦うこととなった。

©TOYOTA GAZOO Racing

そんなラリー・フィンランド、上位の結果は以下の通り。

1位:エルフィン・エバンス(トヨタ)
2位:オット・タナック(ヒュンダイ)/1位から14秒1遅れ
3位:クレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)/同42秒2遅れ
4位:エサペッカ・ラッピ(トヨタ)/同58秒8遅れ
5位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)/同2分54秒4遅れ
6位:ガス・グリーンスミス(Mスポーツ)/同5分2秒3遅れ
7位:アドリアン・フルモー(Mスポーツ)/同6分22秒9遅れ
(以下はWRC2、WRC3クラスのドライバーが入賞)

優勝はトヨタのエルフィン・エバンス。第4戦ラリー・ポルトガル以来の勝利で、シーズン2勝目だ。2位はヒュンダイのタナック、3位もヒュンダイのブリーンが入った。

©TOYOTA GAZOO Racing

シーズン中もっとも平均速度が高いハイスピードラリーであるラリー・フィンランド。全3日間19ステージ、287.11kmのSSと772.12kmのリエゾン区間で争われた。路面はグラベル(未舗装路)。

初日の金曜日、勝田がまず注目を集める。SS1でステージトップを獲得。北欧ドライバーが圧倒的に強いラリー・フィンランドで、ステージトップを日本人ドライバーが獲った。

続くSS2ではハイスピードラリー中にマシンを滑らせたが、どこにもぶつけることなく360度ターンを決め、ストールしたエンジンを再起動させてラリーを継続。こうした姿を公式TVや現地メディアは大きく扱った。

なお初日トップはヒュンダイのブリーンが獲得している。

◆豊田章男氏「育てられた道に恩返しができたような気持ち」

©TOYOTA GAZOO Racing

2日目の土曜日は、トヨタとヒュンダイにそれぞれ不運が発生した。

まずトヨタは、勝田がSS8でクラッシュ。続いてカッレ・ロバンペラがSS10でクラッシュし、トヨタの2台はデイリタイアを選択した。

一方ヒュンダイでは、SS14でチャンピオン争いをしていたティエリー・ヌービルのマシンにトラブル発生。突然の圧力抜けにより水温が急上昇してそのままオーバーヒートとなってしまい、ここでラリーを終えてしまった。ヌービルにとって今シーズンのチャンピオン争い終了のゴングがここで鳴ってしまったことになる。

結果、2日目を終えてトップはトヨタのエバンス。トップと9秒1差の2位にヒュンダイのタナックがつけた。

©TOYOTA GAZOO Racing

最終日の日曜日、この日速さをみせつけたのはトヨタのエバンスだ。

SS16でタナックが0秒6差ながらエバンスより速いタイムを出すと、お返しとばかりにSS17から最後のSS19までステージトップを獲得した。しかし、終わってみればSS19を終えても1位と2位の差は14秒1。最終日、タナックとエバンスの争いがいかにギリギリだったかを示した。

こうしてトヨタは、ラリー・フィンランド4連覇を果たした。この結果を大いに喜んだのが、すっかりラリー後のコメントが定着したチームオーナーの豊田章男氏だ。

とくに今回は、ラリー・ジャパン中止やエサペッカ・ラッピの参加、チーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラへの思いなど、普段以上に熱い内容であった。

※豊田章男氏コメント

「今シーズンは4度のホームラリーがあるはずでした。ヤリスを開発・生産する日本でのラリー、チームが工場を構えるエストニア、そして本拠地であるフィンランドでの2度の戦いです。

2月のアークティックラリーは2位に留まり、7月のエストニアではカッレの頑張りで勝利できましたが、今回はチームが本拠を構えるユバスキュラが舞台。本当の意味でのホームコースです。そして日本は中止になってしまったので、なんとしても勝ちたい…。

ドライバー達も、チームのみんなも、そして代表のヤリ-マティも、いつも以上にプレッシャーがかかっていたと思います。その中でエルフィンとスコットが勝利し、ホームタウンのファンのみんなを笑顔にしてくれました。ヤリスWRCが生まれた街、育てられた道に恩返しができたような気持ちです。

エルフィン、スコット、そしてチームのみんな、ありがとう。二人は、今季、一度もリタイアせず必ず、最後のパワーステージまで走りきってくれています。それによりヤリスは確実に強くなりました。そのことにも心から感謝したいと思います。

セブとジュリアンは不利な出走順にも関わらず、着実な走りでポイントを獲得してくれました。あと2戦、最高のシーズンエンドを迎えるべくセブらしい強い走りを見せて欲しいと思います。

カッレと貴元には、慣れ親しんだフィンランドの道でしたが、悔しさの残るラリーになってしまいました。しかし、未来につながる学びがあったと思います。いつか二人が地元のファンを笑顔にする日が来ることを期待しています。

今シーズンも残り2戦、引き続き、ヤリ-マティを中心にチーム全員が心をひとつにして走り抜いてください! そして、チームのみんなが笑顔になれるシーズンエンド…ファンの皆さんに笑顔になってもらえるシーズンエンドをよろしくお願いします!

追伸 ヤリ-マティへ
自分でシャンパンを持たないポディウムはどうでしたか? 3年前にユバスキュラで君と一緒に上ったポディウムを思い出したよ。前にも言ったけど、あの時、僕はオィットに渡されたシャンパンを真っ先に君の方に向けていた。君と上れたポディウムが、それくらい嬉しかった。君もフロントに入ってしまったから二人で一緒にポディウムに上ることはできなくなってしまったけど、また現地で一緒に戦いたい。その日が1日も早く来ることを願っています。どっちがポディウムに上るかは、その時になったら相談しよう!

追伸 エサペッカとヤンネへ
カラーリングは違ったけど君たちが地元フィンランドで再びヤリスに乗ってくれて嬉しかった。ヤリスで参戦し始めた2017年、チームにとっての2勝目をあげてくれたのがユバスキュラで走った君たちだった。今回、惜しくもポディウムには立てなかったけど素晴らしい走りでの4位おめでとうございます! 3年ぶりのヤリスの乗り心地はどうだったか? また聞かせてください!」

◆次戦は第11戦「ラリー・スペイン」

©TOYOTA GAZOO Racing

また、優勝したエバンスも結果を大いに喜んだ。

※エルフィン・エバンス
「チームのホームラリーで優勝することができて、特別な気分です。似たような特徴を持つラリー・エストニアでは困難な戦いを強いられましたが、それもあって今回このような結果を残すことができて本当に良かったです。

事前のテストではクルマにいくつか変更を加え、金曜日の早い段階から大きな自信を得ることができました。チームのみんなの働きに感謝しています。この週末は、本当に楽しんで走ることができました。このクルマでフィンランドの道を走れて幸運だったと思いますし、その上で優勝できたのは特別なことです。

また、チャンピオンシップに関してもポジティブな結果になりました。ドライバーズタイトルは依然難しい状況ですが、これからの全てのイベントでベストを尽くして戦います」

こうしてラリー・フィンランドは終了。ドライバーズチャンピオンシップは以下の通り。

1位:セバスチャン・オジェ/190ポイント
2位:エルフィン・エバンス/166ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/130ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/129ポイント
5位:オット・タナック/128ポイント
6位:クレイグ・ブリーン/76ポイント
7位:勝田貴元/68ポイント
8位:ガス・グリーンスミス/52ポイント

シーズンは残り2戦。ひとつのラリーイベントでドライバーが最大に獲得できるポイントは優勝の25ポイントと最終パワーステージ1位で得られる5ポイント、合計30ポイントだ。つまり、次戦2位に30ポイント差以上つければオジェ8度目の王者が決まる。現時点で60ポイント以上差がついている3位以下のドライバーはすでにチャンピオン争いから脱落。オジェとエバンス、トヨタチーム同士の王者争いとなるわけだ。

そしてマニュファクチュアラーズ争いは、トヨタが441ポイント、ヒュンダイ380ポイント、Mスポーツ172ポイントとなった。こちらもトヨタが61ポイントリードしている。次戦を終えて52ポイント(上位2台、1位、2位の合計43ポイントとパワーステージ1位、2位の合計9ポイントの合算)差以上を保てば、こちらもタイトルが決まる。

次戦は第11戦ラリー・スペイン(10月14日〜17日開催)。ターマック(舗装路)ラリーとなる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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